宮城・仙台市内の弁当工場を映した動画がSNSで拡散され、物議を醸している。中国からの技能実習生が撮影し投稿したものに、第三者が勝手にテロップやナレーションをつけ加え、日本人をさげすむ内容のものに改変されていた。
問題の動画の中身に、市民は怒り心頭だ。
仙台市の街の人:衛生的にも良くないでしょ。ありえないですよ。だって日本人だったら、そんなことしないでしょ。
仙台市の街の人:改めてもらいたいね、そういうことはね、衛生上ね。
弁当工場の作業風景を映した動画では、何十個ものギョーザを焼いていた。さらに別の場面では、大きな鍋を使ってのマーボー豆腐作り。
カメラを向けられると、男性従業員が笑顔でピースサインをする。
動画には中国語のナレーションがつけられ、一見すると工場紹介のような内容となっている。
しかしこの動画には、衛生上あってはならない場面が映っていたのだ。
動画には、「日本の弁当工場で毎日おいしそうなものを見ていると、よだれが出そうだ」、「日本の会社では何があっても許されないことだけど、ここでは工場長の目の前で堂々と食べなければ大丈夫」、「誰が誘惑に勝てるというの?そもそも盗み食いじゃなくて、味見をしているだけ」などとテロップやナレーションがつけられていた。
「盗み食い」ではなく、あくまで「味見」だとして、目の前のカツをパクリ。食べたその手で食品を触る様子も見られた。
街で話を聞いた食品衛生責任者の資格を持つという男性は、動画内での様子に「味見しなきゃならない人がその立場としてやるべきだし、衛生的なものを考えると、1つの工場からたくさんのところに、多くの胃袋に入っていくんで、やっぱそういった面でもちゃんとしてほしい」と苦言を呈した。
さらに動画のナレーションには、日本人をさげすむ言葉に加え、“毒”という言葉も使われていた。
「日本人のやつら(小日本)に毒を盛る必要はないのか?」
この動画に関する情報提供が、仙台市役所にあったのは15日。市が調査したところ、動画を撮影したのは中国からの技能実習生だったという。
市の担当者は、「17日の午前中、それらしき工場をあたりをつけまして、確証はなかったんですけど、現地に直接連絡なしに出向いて聞き取り調査を行っている」と説明した。
聞き取りの結果、動画はすべて同じ工場内で、2024年の春から夏にかけて撮影、投稿されたという。しかしその動画には、当初ナレーションなどは入っていなかったという。
市の担当者は、「その元となった動画っていうのは、『薬を入れないのか』とか不穏なコメントとか、中国の音声とかは入れていなかった状態でアップされていたと」と話した。
従業員は元の動画を削除したが、すでにSNSで拡散していて、工場側はそれらの削除を依頼中だという。
中国のSNSでも一部が同じ動画が投稿されていた。見比べてみると、日本で拡散されている動画では、午後の作業として仕込みをする様子に、次のような ナレーションがつけられていた。
(拡散された動画)巧みな包丁さばき。私に色目を使ってきた。
一方、中国のSNSで見られた動画にテロップなどは入っていなかった。
また別の動画を見てみると、日本で拡散された方には「日本人が一番好きなのはマーボー豆腐」といったテロップが入っていたのに対し、中国の方には「中国の従業員同士はけんかもなく仲良し」といった内容のテロップが入っていた。
こうしたことからも、ナレーションやテロップは元の動画を撮影した技能実習生ではなく、第三者によってつけられたとみられる。
仙台市によると、製造された弁当は宮城県や東北の一部の県で販売されたということだが、現時点で健康被害や毒物に関する報告はなく、市は工場に対し報告書の提出を求めている。(「イット!」12月20日放送より)