カラオケバイトで「200円分」のつまみ食い→「10万円」請求された 高すぎる罰金は違法じゃないの?

アルバイトしているカラオケ店で、店の飲食物をこっそり食べていたことが店側にバレてしまった、という相談が弁護士ドットコムに寄せられました。
相談者は、アルバイト先のカラオケ店で、客に提供するはずの唐揚げなどの飲食物をこっそり食べていたそうです。
店側は、相談者に窃盗を認めさせ、10万円を超える示談金の支払いも示唆する誓約書に署名を求めてきたそうです。「署名しなければ警察に通報する」と脅しに近い口調で言われた相談者は、渋々署名をしたとのことです。
相談者は、自分がしたことが悪いとは思っていますが、自分が飲食したのは金額にして200円くらいであり、それに対して警察に突き出すといって高額な示談金を要求するやり方に問題がないのか、疑問もあるそうです。
まず、相談者の行為は、当然ながら犯罪です。相談者が、店の商品を勝手に食べた行為は、その立場や状況によって、業務上横領罪(刑法253条、10年以下の拘禁刑)または窃盗罪(刑法235条、10年以下の拘禁刑など)にあたる可能性があります。
このような犯罪行為に対し、「犯罪を警察に申告されたくなければ、○○円払え」ということが、場合によっては恐喝罪(刑法249条1項、10年以下の拘禁刑)になってしまう可能性があることに注意が必要です。
「被害者が警察に被害を申告するのは当然ではないか?」「慰謝料を請求するのも当然の権利ではないか?」と思う方もいらっしゃると思いますし、それはそのとおりです。
しかし、金銭の支払いの要求方法が、常識的にみて不当と考えられ、金額的にも過大な要求をしていると認められるような場合、権利行使として許される限度を超えており、犯罪となると考えられています。
本件では、相談者が飲食したのが200円程度にとどまり、それに対して10万円を超える示談金を要求しています。これは、被害弁償(飲食分だけでなく、店にかけた迷惑も含む)や慰謝料を考慮しても、被害額に対する要求が大きすぎるといえそうです。
そこで、店側が相談者に対し、どういう風に誓約書をとって、金銭を支払わせようとしたか、という事情によっては、恐喝罪が成立する可能性があります。
相談者としては、誓約書の効力を争いたければ、民法上の「強迫」(民法96条。※民法上は「強迫」と書きます)にあたるとして、取り消しを主張することが考えられます。
また、店側があまりに強く脅してくるようであれば、弁護士に相談するとか、場合によっては相談者自身が警察に相談することも考えられます。
店側としては、たしかに相談者に迷惑をかけられたのは事実でしょう。腹も立つでしょうし、今後のためにも多少痛い目を見せたいという気持ちがあるのは理解できます。
しかし、警察に突き出さないことを直接の交渉材料に金銭を要求するのは危険です。
正当な権利行使として制裁を加え、店の秩序を守りたいのであれば、たとえば実際にこれくらいの迷惑がかかっている、ということを明確にして損害額をきちんと算定して交渉する、または正当な被害申告として(金銭の支払いの交渉材料にするのではなく)警察に通報するなどの対応が必要でしょう。