ようやく環境に慣れてきたはずなのに、なぜか朝起きるのがつらい、仕事に身が入らない、やる気が出ない。そんな不調を感じていませんか? それは五月病かもしれません。五月病は正式な医学用語ではありませんが、誰にでも起こりうる心と体のサインとして知られています。今回は、なぜ五月病が起こるのか、どんな人がなりやすいのか別府先生に解説していただきました。

監修医師:別府 拓紀(精神科医)
2012年産業医科大学医学部卒業。大学病院や市中病院で精神科の経験を積み、現在精神科医として市中病院勤務。大手企業の専属産業医経験あり。病院や企業の嘱託産業医経験多数。公認心理師、精神保健指定医、認知症サポート医、日本精神神経学会精神科専門医・指導医、日本老年精神医学会専門医、日本臨床精神神経薬理学会専門医、メンタルヘルス運動指導士、日本医師会健康スポーツ医、産業医、日本DPAT先遣隊隊員。
編集部
実際のところ五月病とはなんですか?
別府先生
五月病は新しい環境で頑張りすぎたり、慣れようと無理しすぎたりしたために起こる心と体の疲れの反動で、精神科的には「適応障害」という状態が考えられます。日本では4月が新年度と言われ、就職や進学といった新しい環境での新生活がスタートすることが多くなります。その中で、慣れないことや自分自身に負荷をかけないといけないことが多く、そのストレスが積み重なり、ちょうど1ヶ月が経つ5月頃に倦怠感、やる気がでないといった状態となることがあります。その状態のことを世間では「五月病」と呼んでいます。
編集部
新しい環境下で適応障害になってしまう原因はなんですか?
別府先生
「頑張りすぎる」「周りに合わせすぎる」ことが原因のひとつであると考えられます。新生活で「上手くやらないといけない」「早く順応しないといけない」、そういった想いから自分の限界を超えて必要以上に頑張ったり周りに合わせたりしてしまい、そのストレスがじわじわと積み重なって、適応障害といった状態になってしまうことが考えられます。
編集部
季節性ということはあるのでしょうか?
別府先生
適応障害という病気はストレスを感じる以上、季節を問わずいつでも起きる可能性があり、予防としては日々ストレスをためすぎない生活を送ることが大切になります。しかし五月病に限れば、名前から分かるように、新年度が始まって1ヶ月というタイミングでその状態に陥りやすいといったことから、季節性があると言ってもいいのかもしれません。
編集部
新生活から1ヶ月のタイミングでゴールデンウィーク(GW)の連休があることは、五月病に関係しているのでしょうか?
別府先生
GWで仕事から離れることで、新年度の張り詰めていた気持ちが切れてしまい、気分の落ち込みや意欲の低下が浮き彫りとなる可能性があります。また、長い休みが明けることで、「またきつい生活に戻らないといけない」というネガティブな気持ちから調子を崩しやすくなる場合があります。これは、新年度でエネルギーをフルパワーで使った後に、いきなりGWでクールダウンを行うというメリハリに欠いた状態が原因の可能性があります。そうならないために、頑張り過ぎない、適度に休息を取ることを意識することが大切です。
※この記事はメディカルドックにて【≪仕事がダルい人必見≫五月病の抜け出し方や予防方法を医師が解説 どんな症状があると五月病?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。