先月5日、東京・板橋区の路上で横断歩道を渡っていた88歳の女性を乗用車ではねて死亡させ、そのまま逃走したとして51歳の男が逮捕されました。 ひき逃げなどの疑いで逮捕された板橋区の会社員・牧野利充容疑者(51)は、先月5日の午後1時半すぎ、板橋区の路上で、徒歩で横断歩道を渡っていた近くに住む塩井久美子さん(88)を乗用車ではねて死亡させ、そのまま逃走した疑いがもたれています。 警視庁によりますと、塩井さんは1人で歩いていたところ、牧野容疑者の乗用車にひかれて頭を強く打ち、事故から10日後に死亡しました。 防犯カメラなどの捜査で逮捕に至ったということで、牧野容疑者の乗用車の左前方部分には人とぶつかったような傷があったということです。 取り調べに対し、牧野容疑者は「歩行者にぶつかってはいません」と容疑を否認しています。
「手取り月41万円が22万円に…」介護休業をとった52歳課長の誤算。復帰後「よもやの収入減」に絶望
親の介護という突然の事態に直面したとき、多くの現役世代が頼りにするのが「介護休業」という制度。しかし、制度上の給付金があるからと安心していると、思わぬ事態にさらされるかもしれません。仕事と介護を両立させるためには、単に休むだけでなく、自分たちの生活をどう守るか、という視点が必要です。ある男性のケースを通して、働き盛りの世代が直面する介護問題と経済的なリスクについてみていきます。
都内の中堅メーカーで課長職を務める田中悟さん(52歳・仮名)。月収(額面)は約55万円で、手取りは約41万円。年収は約900万円に達します。妻と高校生の子ども2人を抱え、月12万円の住宅ローンと教育費の支出が続く――ごく一般的な、しかし余裕があるとは言い切れない家計でした。転機は、一人暮らしの母・和子さん(81歳)が自宅で転倒し、大腿骨を骨折したことでした。
「最初は1~2カ月世話をしたら、その後は介護サービスで何とかなると考えていたのですが……」
田中さんは介護休業を申請。まずは60日間の取得を決めます。給付金は休業前賃金の約67%。額面ベースでは月約37万円になる計算でした。田中さんは「7割近く出るなら、何とかなる」と考えていました。しかし、実際の入金額は想定よりもさらに少ないものでした。
「社会保険料と住民税の負担を考えていなかったんです。給与が出ていなくても、前年の所得に基づく支払いは続く。結果として、手元に残るお金は月22万円ほどまで落ち込みました」
休業前の手取り41万円と比べると、実質19万円もの減少です。一方で支出は減るどころか、むしろ増えていきました。
● 実家への往復交通費:月約3万円● 入院時の立替費用:一時的に20万円超● 退院後の住宅改修(手すり設置など):約35万円(自己負担分)
● 実家への往復交通費:月約3万円
● 入院時の立替費用:一時的に20万円超
● 退院後の住宅改修(手すり設置など):約35万円(自己負担分)
「働いていないから支出は減ると思っていたのに、現実は真逆でした」
家計はすぐに赤字に転落します。もともと毎月の貯蓄余力は5万円ほどありましたが、それが一気に消え、月10万円近い赤字が出始めました。
「1カ月が過ぎたころ、妻から『このままでは教育費が払えない』と言われて……」
さらに追い打ちをかけたのが、給付金の入金タイミングです。初回の振込は休業開始から約1カ月半後。無収入の期間が先行し、資金繰りは一気に逼迫しました。結局、60日間の予定だった休業は45日で切り上げ、職場復帰を余儀なくされます。しかし、戻った職場にも変化がありました。
「残業ができなくなり、月収は50万円ほど、手取りで37万円ほどになってしまって」
介護前と比べて、月4万円の減収が固定化してしまったのです。
田中さんのケースを整理すると、以下のようになります。
● 休業前手取り:約41万円(額面:約55万円)● 介護休業給付金(額面):約37万円● 社会保険料・住民税等を差し引き → 実質的な手元資金:約22万円
● 休業前手取り:約41万円(額面:約55万円)
● 介護休業給付金(額面):約37万円
● 社会保険料・住民税等を差し引き → 実質的な手元資金:約22万円
結果として、可処分所得はおよそ半分近くまで低下します。一方で、住宅ローンや教育費などの固定支出は維持されるため、家計は短期間で破綻しやすい仕組みにあるのです。
この問題は、個人の見通しの甘さだけではなく、日本社会全体が抱える「介護と就労の両立の難しさ」に起因しています。総務省『就業構造基本調査(2022年)』によると、家族の介護・看護をしながら働いている人は約365万人。一方で、介護や看護を理由に離職する人は年間約10万人規模で推移しており、特に40代後半から50代にかけての現役世代に集中しています。
さらに、内閣府『2025年版(令和7年版)高齢社会白書』では、要介護認定者数は増加傾向が続いており、2020年代半ばには約700万人規模に達するとされています。高齢化の進展により、今後も介護を担う現役世代は確実に増える見通しです。
問題は、こうした状況に対して家計側の備えが追いついていない点にあります。厚生労働省『仕事と介護の両立支援に関する実態把握調査』でも、両立における最大の不安として「経済的負担」を挙げる人が多く、制度が存在しても実際の生活防衛には十分でない実態が浮かび上がっています。
また、介護に伴う支出は一時的なものにとどまりません。住宅改修費や福祉用具の導入費用、サービス利用料など、継続的な支出が発生します。これに対し、収入は休業によって一時的に減少するだけでなく、田中さんのように復帰後も残業代の減少などで回復しきらないケースも散見されます。
こうした状況が積み重なった結果、介護離職という苦渋の選択に至るケースも少なくありません。経済産業省の試算では、介護離職による経済損失は年間約6,000億円規模に達するとされています。これは個人の問題にとどまらず、労働力の喪失という形で社会全体に深刻な影響を及ぼしています。
介護休業は確かに重要な制度ですが、それは「生活を維持するための所得補償」ではなく、あくまで「体制を整えるための時間を確保する仕組み」です。この前提を見誤ると、制度利用そのものが家計悪化の引き金になりかねません。
だからこそ、介護休業の「使い方」が問われます。限られた期間を介護に専念する時間と捉えるのではなく、地域包括支援センターやケアマネジャーと連携し、外部サービスを組み込んだ「持続可能な体制」を整える期間として活用できるか。その判断が、その後の生活の安定を左右するのです。