会いたくても会えない…父を看取れなかった女性 最後の会話はビデオ通話での「バイバイ」新型コロナ緊急事態宣言から5年…今も続く病院での面会制限

コロナ禍に日本で初めて出された緊急事態宣言から7日で5年。今なお多くの病院で面会制限が続いていることがわかりました。

5年前の4月7日、日本で初めての緊急事態宣言が出されました。その理由は新型コロナウイルス。当時の感染者数は4168人でした。大阪と兵庫を含む7都府県が対象となり外出自粛が呼びかけられると、大阪の繁華街ミナミからは人が消え、インバウンド客で賑わっていた京都さえも閑散としました。
生活を一変させたパンデミック。その中でも大きな影響を受けたのが病院や高齢者施設です。感染リスクを減らすため入院患者と家族の面会を禁止する措置がとられました。面会ができた施設でも防護服が必要で15分以内などの時間制限が設けられていました。

あれから5年。コロナ以前の生活が戻る中「病院だけが取り残されている」と訴える人がいます。アメリカで暮らす鈴木智草さん。去年1月、日本に住む80代の父・道雄さんが体調を崩して救急搬送され、都内の病院に入院。面会しようと病院に連絡をとると、コロナ禍にとられた面会禁止の対応が続いていたのです。
(鈴木智草さん)「病院にはね返されるとは思っていなかった。非常にショックでした。面会が一切禁止の病院だったんですね。週一回でもなくて、全ての患者さんに対して面会謝絶している病院で」

諦めきれず帰国して病院に向かいましたが「例外は認められない」と父に会うことは許されませんでした。約1か月後、道雄さんの病状が悪化、家族に看取られることなく亡くなりました。
(鈴木智草さん)「ビデオ通話で手を振って、バイバイって言って。それが最後になりましたね、父と話をしたのは。なぜ面会がそこまで制限されなければならないのか。患者と家族をこれほど距離を置かせる医療の体制はおかしい」
面会制限を続けているのはこの病院だけなのでしょうか。MBSが取材すると近畿圏内にある300床以上の病院の約7割で面会の時間を15分や30分以内としたり、面会を家族に限定するなどの制限が今も続いていることがわかりました(今年1月末時点)。
コロナ前にもインフルエンザの流行などで面会制限を設けていた病院はあるものの、ここまで長期間にわたってその措置を継続しているのは初めてのこと。

理由について面会制限を続ける病院で働く医師に取材すると…
(面会制限を続ける病院で働く医師)「(コロナ当時は)ちょっとでも感染、クラスターが起きようものなら病院名も報道されてということがあったので、そのトラウマが残っているというのはあると思います」
さらに「病院側のメリット」もあると話します。
(面会制限を続ける病院で働く医師)「患者さんのご家族がいらっしゃるとそこで毎回対応をしないといけない。面会制限をしたことによって楽になったという医療従事者は、かなりいるのも事実」
その一方で、面会制限は患者や家族に様々な影響を及ぼすと精神科医は指摘します。
(精神科・高木俊介医師)「大きな環境の変化も、家族と繋がっていれば周りの社会の人と繋がっていればこそ耐えられるわけですよ。大きな手術から回復してすぐのときとか、そういう時に一番大事な人の様子をみられないというのは家族にとってものすごく不安なこと」

父親に最後まで会うことが出来なかった鈴木さんはこう訴えます。
(鈴木智草さん)「私のような目にあうひとがひとりでも減ってほしいんですね。家族であれ、子供であれ。友達であれ、全員が面会できるべきだと思います」