自民党の小野田紀美議員が、週刊新潮の取材に抗議した。10月28日、杉尾英哉議員がこの件に対し、取材を「迷惑行為」とする小野田氏の主張に異議を唱えた。小野田氏は重要な大臣職にあり、国民の知る権利に応えるべきとの意見が強調されている。議員としての自覚と度胸が求められる中、彼女の対応に疑問が呈されている。
記事前編は【小野田紀美議員が「週刊新潮」に抗議…政治家の「マスコミ批判」に「マスゴミ」側が思うこと】から。
また、一部で小野田議員の出身大学が偏差値35であることを根拠に、彼女が特殊法人化して初めての日本学術会議総会で挨拶したことに触れ、偏差値35が学術担当なのか、と疑問の声をあげた評論家もいました。
私は、この偏差値論に組みするつもりはありません。世の中には家庭の事情で予備校や塾に行けなくて偏差値の高い大学に行けない学生もいます。女子に学歴はいらないという封建的な家庭もまだまだあります。私自身、地方の偏差値の高くない大学で教授をしていたことがありますから、偏差値は低くとも、優秀な子、頭のいい子がたくさんいることは知っています。日本のような単線社会では、ちょっとした躓きが原因で受験戦争に負けてしまい、いわゆる有名大学に受からない学生もいるのです。
しかし、私は、今回もっと重要な「注意」を彼女にしたいと思います。
彼女はSNSで、こんなことを明かしました。「古い友人から『英語喋れるようになったん!?』とメールきたんですが」「残念ながらそんなわけもなく。なんか動画とかあるみたいですが私は全然英語喋れません」「英語でスピーチしなきゃいけなくなった時は全部原稿にカタカナふってそれを読んでるだけです…。私が話せるのは岡山弁と標準語だけです…」、それがまた「素直」とか、褒められています。
私はカタカナ云々はジョークであると信じたいですが、もし事実であれば、これは、国会議員として恥じるべきです。英訳された英文にカタカナをふらないと読めないというのは、中学生以下の英語力もあやしいということを自分で言っているようなものです。日本の中学生なら、英語で翻訳さえしてもらえば、カタカナでルビをふらなくても英文が読めるのは日本人の常識です。パソコンを使ったことがない老人政治家がデジタル担当となって、大騒動になりましたが、これは、それと変わらない恥ずかしい行為なのです。
もちろん、中学以下の英語力だった有名人は日本にもたくさんいました。特に体育会系。かつて六大学出身の有名投手はoneをオネと読んで失笑を買いましたが、その後、名監督とまで褒めそやされる存在になりました。しかし、時代は変わっています。高校球児として毎日野球ばかりやってきて、ようやくメジャーリーガーになったはずのワールドシリーズ・MVP山本由伸さえ、パーティーでは英語でスピーチを、ちゃんと暗記して大喝采を受けていました。ちょっとした努力で、その程度の英語力はつくはずだし、できないなら、できるようになるまで隠しておくべき立場が、「外国人との秩序ある共生社会推進」担当大臣であることを忘れないでほしいのです。
彼らと共生しようと思えば、来日した外国人たちもカタコトから始めて日本語をしゃべらなければならなくなります。共生に大事なその要素を今から、素質や努力の意志がないことを明かしているようなものなのです。自民党の教育はどうなっているのかと思います。
ついでにいうと、小野田氏の新潮取材へのコメントに賛意を示していた維新の藤田共同代表は、赤旗に政治資金疑惑をかかれて取材した記者の名刺を公開するという暴挙にでました。こんな人が政権にはいっていいものでしょうか。不祥事を起こす率がきわめて高い維新の会の政治家のトップが権力監視の報道関係者に対して威圧することは、法治国家で民主主義を標榜する国の政治家にあるまじき行為であることを、連立する高市総理は注意する必要があるのではないでしょうか。
かつて、自民党に野中広務元幹事長という思想はハト派ですが、マスコミに対しては、とてつもなくこわい政治家がいました。しかし、彼のメディア観は小野田氏の尊敬する安倍晋三氏よりはるかにまさっていたと思います。
文藝春秋には「諸君!」という雑誌がありました。中心雑誌である月刊文春よりは、少し保守的ではありますが、ヘイトではない教養人の雑誌でした。しかし、時代の流れとともにヘイト雑誌が町にあふれ、廃刊となりました。廃刊までの数年間、この雑誌は野中氏と北朝鮮の関係を中心に攻撃し続けていました。
廃刊になった日、たまたまおめにかかる機会があり「先生、諸君が廃刊になりました。清々したでしょう」と報告すると、野中氏は色をなして怒りました。「私は京都府の町議会議員時代、知事は蜷川虎三という伝説的な革新系知事でした。反対する私に全マスコミは攻撃をしかけてきましたが、唯一蜷川政権の問題を攻撃していたのが『諸君!』でしたから、私は、こんな根性のある雑誌もあるか、と今でずっと定期購読していました。私が力をもち、自民党の中枢に入るとますます攻撃されて、読むのが苦しいときもありましたが、これが権力というものである。直言する言論に耳をすまして、ひとつでも正しいことがあると思えば、どんなに腹がたつ雑誌でも、読む。これが権力をもつということの要諦だと思います。だから廃刊はしてほしくなかった。批判が政治家の成長を促す、そう思わないと、議席を託された義務は果たせません」
小野田さん。あなたは、まだ若い政治家です。そして、今度の立場はいくつも大事なテーマをもち、人々の調整をしていかないと成立しないテーマがそろっています。まずは、メディアの取材を敵視することをやめ、自分の思想、人生観を理解してくれるジャーナリスト仲間を作ることをお勧めします。全身全霊をかけて国民の声を聞くのが、あなたの仕事です。その最初として、まず、マスコミときちんと向き合ってください。
【もっと読む】小野田紀美議員が「週刊新潮」に抗議…政治家の「マスコミ批判」に「マスゴミ」側が思うこと