海外のオンライン旅行予約サイト「Agoda(アゴダ)」が原因となり、各地の旅先で「宿がない!」「部屋が違う!」といった報告が散見されている。予約したはずのホテルが確保できていない、指定した部屋や日程で予約されていないなど、多くのトラブルが続出し、ホテルチェーン「東横INN」がAgodaを名指しして、注意喚起する事態となった。
【映像】Agoda側の言い分(コメント全文)
『ABEMA Prime』では、「Agodaの元社員」とともに、一体なぜトラブルが起こるのかなど、“Agodaトラブル”の内情について議論した。
以前、Agoda日本法人に務めていた木田氏(仮名)によると、Agodaのモデルはホテルとの直接契約8割と、仲介業者からの転売2割だ。しかし、適当な情報管理や連絡でのタイムラグがあり、日本法人が仲介業者に連絡しても問題が解決しないそうだ。また、トラブル対応の姿勢として、「1%程度しか発生しない問題にいちいち対応しない」「業界最安値を掲げるAgodaブランドは、この程度で傷つかない」とも指摘する。
トラブルの原因には、「仲介会社とうまくシステム連携できていない」ことがあるという。「私の認識では、全体のうち1%未満の問題で、もっとパイは小さくなっている。そのため、あまり重要視していないのだろう」。
元ホテルマンで、現在は独立してコンサル事業をしている火照(ほてる)トマル氏は、「ツインとダブルなど、部屋が違うのはよくある話だ。写真のミスもあって、宿泊客が思った部屋ではない部屋に通されて、『写真と違う』となることもよくある」と、現場のリアルを語る。
トラブルが判明した場合は、どう対処するのか。「もめ具合によるが、禁煙・喫煙の違いであれば、部屋が空いていれば、そちらへ通す。どうしても同じシングルタイプで空きがなければ、ツインやダブルなどにグレードアップすることもある。Agodaに限らず、ホテルではよくあるクレーム対応で、現場は手慣れている」。
木田氏は「Agodaはホテルにも不誠実」だとし、その理由として“ダークパターン”の存在を挙げる。ダークパターンで割引キャンペーンに誘導し、ホテルの管理画面にポップアップが出現すると、ホテル側は作業中で忙しいため適当にクリックし、意図せず安く部屋が売り出されるのだそうだ。ホテルマン向けメルマガにも、同種のキャンペーン誘導があるという。これにより、ホテルが逆らえない構造となり、インバウンドに頼っている地域は、Agodaなしでは部屋が埋まらない状況となる。
具体的な事例として、「ホテルの管理画面で、Agoda上の料金設定を操作できるが、そこに『割引キャンペーンに参加しませんか』というメッセージが出る。そこからワンクリックで参加できてしまい、知らずに割引対象になっていたホテルの声は聞いていた」と明かす。
この件についてAgoda側の担当者は番組の取材に対して、「宿泊施設が当社の管理システムをスムーズに利用できるよう、ポップアップを使用する場合があります。わかりやすく透明性の高い内容で、割引キャンペーンを実施するかどうか十分な情報を基に判断いただけます。ポップアップのデザインもシンプル、直感的で、簡単に正しい選択ができるよう工夫されています。管理システム上でいつでも簡単にキャンセルすることが可能です」とコメントしている。
文筆家で情報キュレーターの佐々木俊尚氏は、「星野リゾートの星野佳路代表が、Agodaに怒りの投稿をした。それを受けてウェブメディア『Business Insider Japan』が星野リゾートに取材すると、1日に5~10件のトラブルが起きていた。多くホテルを抱える星野リゾートだが、いくらなんでも多すぎないか」と話す。
予約トラブルにより、Agodaには業務改善要請も出されている。共同通信によると、2025年3月、「予約した部屋が確保されていない」など、旅行客とのトラブルが頻発しているとして、観光庁が業務改善を要請した。4月にAgodaが観光庁に対策を提示したが、6月以降もトラブルはなくなっていない。抜本的改善が見られなければ、行政処分に発展する可能性もある。
木田氏が、Agoda側の受け止めを推察する。「2~3年前から多額の宣伝費を投入しているため、日本市場を大事にしているのだろう。メディアへの対応も、問い合わせに返事するようになり、昔と比べればマシになった。マシになったのが現状だと理解してほしい」。
ホテル側にも、Agodaを利用するメリットがある。火照氏は「日本で急成長していて、Agodaに新規掲載したホテルでは、予約に占めるAgodaのシェアが一気に高まる」として、コンサルの立場から「売り上げを増やしたいホテルには、Agodaを勧めることもある」と説明する。「Agoda否定派ではない。使いにくいところもあるが、うまく使えばいい」。
もしAgodaへの予約に不安を感じたら、どのように対処すればいいのだろう。「メールやメッセージで、ホテルに問い合わせるのが、一番負荷が少ないだろう。Agodaの予約ページから、ホテルにチャットを送ることもできる。そこから聞くのが一番いいのではないのか」(火照氏)。
(『ABEMA Prime』より)