2024年12月31日正午。渋谷は雲ひとつない快晴、どこまでも続くような高い冬の空に覆われていた。
【写真】「日本人はダメ! 日本人はダメ!」年越しの渋谷の騒乱を写真でまとめてみる
帰省しようとしている家族、観光を楽しんでいる外国人観光客。平時の渋谷とは行き交う人の印象が異なり、そうした光景が年の瀬の雰囲気を醸成している。
幸福感に満ちた景色だ。が……時が経ち、陽が落ちてくると、次第に気配が変わっていく。
「日本人はダメ!」と大声で繰り返していた20代の女性二人組。どういう意味なのか気になり取材を申し込むと、「ナンパ待ちでーす! 写真はダメ!」と明るく返された。
街にはゴミが散乱
繰り返していた言葉について聞いてみると、カウントダウンに訪れる外国人と出会いたいから気合いを入れてきており、日本人からのナンパには応じない共通認識を強めていたのだという。
なぜ外国人からの声かけを待っているのか。尋ねたところ、「英語を勉強したいからでーす」という。
本心までは計り知れなかったが、彼女らの希望にそうように、近年、カウントダウン時の渋谷周辺には外国人が多く訪れている。
続いて話を聞いたのは寒風吹き荒ぶなか、タンクトップ姿でセンター街にたむろしていた男性だ。
「筋肉を見てほしいから、今日はこの格好で来ました。
日本に来たのは2022年。ウクライナ侵攻があったタイミングです。
カウントダウンの瞬間はもっと人が増えるんですか?! ヤバいヤバい!」
友人数名と上気していた。
また、こうした渋谷の空気について、普段から“街”で遊んでいると語るスケーターの青年たちは「いつもの渋谷とは全然違うっすね。とにかく外国人が多いです、今日は」と語る。
「いつもこの辺で遊んでるんで今日も来てるって感じです。ナンパ目的……ってわけではないですけど、日本人の女の子がいたらいいなとは軽く思っていて。でも、ほとんどいないですよね。本当にいつもと全然違うっすよね」
彼らはさておき、ナンパ目的の男性は多いようだった。街を歩いていると「ワンチャン、一発ヤレたらいいけどね」「俺、全然外人でもいいよ」といった声が耳に飛び込んでくる。
さて、迎えた年明けの瞬間。
スクランブル交差点が大騒動になるかと思いきや、警察の規制によってか平穏な状況が保たれていた。
ただし、警察による規制を逃れてでも狂騒したい人々は警備の緩い範囲へ溢れる。今年のカウントダウンでは、マークシティ前がその対象になった。
芋の子を洗うような人混みが形成され、四方八方から指笛、「Happy new year」の声が聞こえる。
渋谷区は、日本語、英語、中国語、韓国語で「渋谷カウントダウン」中止の報を出し、12月31日午後6時から1月1日の午前5時までの間、ハチ公像を閉鎖。駅周辺では、12月31日18時から1月1日5時までの間、道路・公園などの公共の場所における飲酒が禁止されており、周辺のコンビニは酒類の販売を停止。
大きなトラブルが起きないための措置をとっていた。
しかし、年の瀬の浮つきに乗じて、非日常を楽しもうとする人々は規制を易々と乗り越え、各人が自由に振る舞う。
結果、行政の規制があったからこそか、重大な事故は起こらなかった。ただ、警備が不十分なエリアには、人ごみが形成されており、一歩間違えば大事故に繋がった可能性もあったろう。2025年を迎える渋谷カウントダウンで事件、事故が起こらなかったことはポジティブな結果だったが、同様の対処を続けると、その先に何があるかはわからない。
年明け後、千鳥足のまま座り込んでしまった写真の男性。彼が酩酊した世界から現実に戻ってくるまでのカウントダウンはいつはじまるのだろうか。
(「文春オンライン」編集部)