「甘いもの好きはむし歯になりやすい」はウソ? 大事なのは食べ方にあり「コーラを飲むなら一気飲み、ケーキなら…」

「甘いもの好きは、むし歯になりやすい」という定説。しかしそれは勘違いだと歯科医師の前田一義先生は指摘する。むし歯の原因となるのは、「食べ物」ではなく「食べ方」にあった!
【画像】甘いものを食べたあとは、しっかり歯を磨かなければいけないのか?

歯が溶ける「口の中のpHの値」を軸に、コーラやケーキを飲み食いしてもむし歯にならない「食べ方」について解説した『歯を磨いても むし歯は防げない』より一部抜粋、再編集してお届けする。
歯の健康を保つうえで、日本人が最も勘違いしていることの一つが、「甘いもの」に対する考え方です。一般に「甘いものを食べる人ほど、むし歯になりやすい」といわれます。そこから「甘いものを食べたあとは、しっかり歯を磨きましょう」という話にもなります。
しかし、むし歯予防で大事なのは、食べる内容よりも「食べ方」です。じつは食事の回数が1日4回までなら、むし歯になりにくいことがわかっています。つまり、朝、昼、夜に加え、1回の間食です。そこで食べるものが甘いかどうかは無関係です。むし歯の原因は、口の中にいるむし歯菌が、糖と炭水化物を餌にして酸をつくり、この酸が歯を溶かしていくからです。歯が溶けるのは、口の中のpH(水素イオン指数)が5・5以下になったときです。口の中はふだんはpH7で中性ですが、食事をすると酸性に傾きます。そしてpH5・5以下になると、酸が歯の表面を覆うエナメル質を溶かしていきます。これを「脱灰」といいます。pH5・5以下の状態が続くと、歯は酸によって溶けつづけます。ただし、唾液の働きにより、口の中はやがて中性へと戻りだします。pHが5・5より高くなれば脱灰が止まり、それ以上は溶けなくなります。脱灰が止まると歯の修復が始まり、これを「再石灰化」といいます。この脱灰と再石灰化は、食事をするたびに繰り返されます。つまり食事をすると歯の表面が溶けだし、食事を終えてしばらくすると修復されていくのです。脱灰と再石灰化がバランスよく行われていたら、歯はつねに元の状態に戻るので、むし歯になりません。ところが、口の中がpH5・5以下の状態が長く続くと、溶ける速度に修復が追いつかず、むし歯になっていくのです。
下記のグラフは、脱灰と再石灰化が繰り返される様子を表した「ステファンカーブ」と呼ばれるものです。1日の食事が朝食、昼食、間食、夕食だけなら、脱灰と再石灰化はバランスよく行われ、むし歯になりません。
ところが朝食、昼食、間食、夕食の合間にも、ダラダラとものを食べたり飲んだりしていると、口の中がpH5・5以下の状態が長く続きます。結果として、むし歯になりやすいのです。つまり、大事なのは食事の回数で、極端な話、食事の回数が1日4回(ダラダラ食べをしない場合)なら、1回につき、どれだけ甘いものを食べても問題はないことになります。そこから以前、患者さんにこんなアドバイスをしたことがあります。むし歯治療に来られた方で、コーラが大好きという話でした。仕事中も時間があれば、コーラをちょくちょく飲んでいるそうです。炭酸が入っているので気づきにくいですが、コーラには大量の砂糖が入っています。500ミリリットルのコーラで56・5グラム、角砂糖にして約17個分になります。この方は大型のペットボトルに入ったコーラを買い、仕事の合間に少しずつ飲んでいたそうです。これは1日4回の食事(朝食、昼食、間食、夕食)以外に、ちょこちょこ甘いものを食べているのと同じです。口の中は、つねにpH5・5以下となり、溶けだした歯を修復できません。そこでコーラを飲むなら、一気に飲むようお伝えしました。大型のペットボトルからちょくちょく飲むのではなく、ミニサイズのペットボトルを買って、一度で飲みきる。それも食事のときに飲むようにすれば、糖を摂る回数は変わらないので、むし歯リスクはグンと減ります。甘いケーキも同じです。食事と一緒に食べるなら、回数自体は増えないので、どれだけ食べても、むし歯リスクは小さくなります。
逆に気をつけたいのは、スポーツドリンクや栄養ドリンク、乳酸菌飲料です。「体にいいから」と毎日飲む方も多いですが、かなりの糖分が含まれています。飲むなら、食事と一緒にしてください。これなら糖を摂る回数が増えず、むし歯リスクは減らせます。飴も要注意です。口寂しいとき、つい口の中に入れがちですが、飴にも糖が含まれます。量は少なくても、糖が口の中にある限り、口の中はpH5・5以下になり、脱灰が起こります。のど飴を「のどにいいから」と一日中なめていたら、ある意味、一日中食事をしているのと同じです。注意していただきたいと思います。文/前田一義

前田一義

2024/11/6
1,100円(税込)
176ページ
ISBN: 978-4413047081

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