友人の男性が「(会社の)先輩との話題作りに風俗店に行かなければならない」と話してきた――。そんなツイートが議論を呼んでいる。
J-CASTニュースは、上司が部下を性的サービスを伴う店に誘うことが法的に問題ないのか、弁護士に見解を尋ねた。
話題になったのは、2023年7月初旬の女性の投稿。友人の男性が「出張に行くのに、先輩との話題作りで風俗に行かなければならない。嫌すぎる」と話してきたという。この男性は「行かなければならない」というプレッシャーを自ずと感じてしまったとする。
投稿者は、職場で風俗店に行かなければならず傷ついたという人の話も聞いたとする。
このツイートは拡散され、
などと議論を呼んだ。
上司に風俗店に誘われることは法的に問題があるのか。12日、弁護士法人ユア・エースの正木絢生代表弁護士に尋ねると、セクハラまたは上司が優越的な地位を利用した場合は、パワハラにもあたる可能性があると回答。
ハラスメントに該当する場合、民法709条により、ハラスメントを行った上司には損害賠償責任が生じ、会社側も同法715条1項により、損賠賠償責任を負うことがあるという。
また男女雇用機会均等法11条1項により、職場における性的言動で職場環境が害されることがないよう雇用管理上必要な措置を講じなければならないため、会社は従業員が安全に働ける環境を保つ注意義務を負っている。
正木弁護士によると、セクハラについては均等法11条1項に規定されており、「対価型」と「環境型」の2つに分けられる。
対価型は、職場において意に反する性的言動に対して労働者が拒否・抵抗するなどしたことにより「解雇、降格、減給、労働契約の更新拒否、昇進・昇格の対象からの除外、客観的にみて不利益な配置転換」など労働条件に不利益を被ることをいう。
環境型は、意に反する性的言動により労働者の就業環境が害され、就業上看過できないほど支障が出ることをいう。
正木弁護士によると、職場とは労働者が業務を遂行する場所を指すが、通常就業している場所以外にも、労働者が業務を遂行する場所であれば「職場」に含まれる。勤務時間外の「宴会」「懇親の場」などであっても、参加がほぼ義務であるなど、実質上職務の延長と考えられるものは「職場」に該当する可能性があるという。
労働者とは事業主が雇用する全ての労働者を指すため、上司に随行した部下が正規雇用労働者でなく、パートタイマーや契約社員などのいわゆる非正規雇用労働者であっても、セクハラの対象になりえるとする。
「性的な言動」とは、性的な内容の発言および性的な行動を指す。正木弁護士によると、一般的には「意に反する強い精神的苦痛を被る場合」には、一回でも性的な言動となりえる。
風俗に誘われた部下本人が乗り気の場合はセクハラに該当するのか尋ねると、次のように説明する。
対価型セクハラに値するような、上司に風俗に誘われて断ったために仕事で不利益を被った場合、または不利益を被ると事前にわかる場合の対策を尋ねると「信頼のできる上司や会社のセクハラ対策室などに相談することをおすすめします」という。
事態が深刻な場合は上司を訴えることも考えられるというが、上司の発言をICレコーダーや携帯のレコーダー機能で音声データとして残すなど、セクハラの証拠を集めておくことが重要だとする。
事前に不利益を被ることがわかっている場合には、事前にこれらの措置をとることでセクハラを防ぐことができるという。
上司に風俗に誘われ、断りたいけど断れないとき、部下はどのような対応をとるべきか聞くと「上司に誘われた部下が行きたくないと思った場合、自身の本意に反するとして、きっぱり拒否することが重要です」とした。
部下が拒否しているにもかかわらず、上司が執拗に風俗に誘う場合、セクハラにあたるとする。
男性間のセクハラはどのように防いでいくべきか。
正木弁護士は、意に反する性的な言動は異性間だけでなく、同性間でも生じるとする。