部屋にゴキブリが1000匹以上…3000件の現場を見てきた女性遺品整理人が“今もビビる”もの

遺品整理人として3000件以上の遺品整理・特殊清掃の現場に携わってきた小島美羽さん。“孤独死”の問題を伝えるために作ったミニチュア作品が話題となり、多くのメディアに出演している。
【マンガ】『あなたの生きた証を探して 遺品整理人がミニチュアで表現する孤独死の現場』本編を読む そんな彼女が企画・原案を務めた『あなたの生きた証を探して 遺品整理人がミニチュアで表現する孤独死の現場』(竹書房)が、2022年8月25日に出版された。 小島さんはなぜ遺品整理人になったのか。日本における“孤独死”の現状とは一体どのようなものなのか。漫画の中でも描かれる彼女の体験について、改めて詳しく話を伺った。(全2回の1回目/後編に続く)

作業服に身を包んだ小島美羽さん 西邑泰和◆◆◆「私がやったほうがいいんじゃないか」と思うように――遺品整理・特殊清掃というお仕事に興味を持ったきっかけは?小島 「特殊清掃っていう仕事があるんだよ」と知人に教えてもらって、興味をもってネットで調べてみたんです。当時は悪徳業者がたくさんいて、「家族が亡くなったので業者に頼んだら、暴言を吐かれた」とか「お金を倍近く取られた」とか悔しい思いをした人の書き込みが見つかりました。 私も高校生のときに突然父を亡くしている遺族側の人間なので、悲しい気持ちに付け込んで暴言を吐いたり高額請求したりするなんて「許せないな」と正義感のような気持ちが強くなったんです。 目の前で思い出の物を壊したり、雑に捨てたりする業者もいるらしいんですよ。それを知って「私だったら遺族も亡くなった故人様も思いやるし、酷いことは絶対しないのに」「私がやったほうがいいんじゃないか」と思うようになったんです。 それに、父を亡くしてから「本当は大切な存在だったんだな」とか「実は尊敬してたんだな」と後悔していた気持ちも重なって、遺品整理・特殊清掃のことばかり考えるようになりました。死臭を想像してイメトレを…――その後、元々勤めていた郵便局を退職されてから、遺品整理人になるまで2年間の準備期間があったんですよね。その間はどういったことをされてたんでしょうか?小島 その頃から遺品整理や特殊清掃の仕事を一生続けたいって気持ちがありました。でも当時20歳くらいで好奇心旺盛だったので、途中で目移りしたらイヤだなと思って、2年間で他のやりたいことを全部やってみることにしたんです。くまさんカステラのバイトやテレビ局のAD、別に興味はなかったけどお給料がすごく良い仕事もやってみました。 それと併行して、遺品整理や特殊清掃がどんな仕事なのかをネットや本で調べたり動画を見たりもしています。海外のモザイクなしの事故の画像を見て“グロ”耐性をつけたり……。当時は「もしかしたら遺体を見ることになるかもしれない」と思っていたんですよね。実際、一部は落ちていても遺体自体はないんですけど。 ネットでは「死臭に耐えられない」と言っている人も多かったんですが、耐性をつけようにも想像するしかないじゃないですか。だからイメトレというか、凄まじい臭いを想像して日々悶々としていましたね。 そういう期間を経ても、やっぱり「遺品整理・特殊清掃の仕事がしたい」という気持ちは変わらなかったので、求人を探すことにしました。――今の会社を選んだ理由は?小島 遺品整理・特殊清掃をやってる会社はたくさんあったんですが、求人サイトの募集文に「誰にでもできる簡単なお仕事です」と書いてあったり、遺品整理・特殊清掃を“ただの仕事”と捉えているように見える会社ばかりで、「なんか違うな」と思っていたんです。 でも今勤めている会社の募集文には、ちゃんと「きつい仕事」だと書かれていて、なおかつ遺族や故人様を思いやる内容だったので「ここしかないな」と思って申し込みました。それで面接受けて、合格して、今があります。「そんな仕事すると呪われるよ?」――小島さんが遺品整理・特殊清掃の仕事に就くことに対して、ご家族はどんな反応でしたか。小島 すごく反対されました。母も姉も大反対でしたね。特に母には「なんであんたは大変だってわかってる仕事をわざわざやりに行くんだ」と言われたので、遺品整理・特殊清掃という仕事に対する熱い思いを語ったんです。 私の父が亡くなった日も、別居中の母がたまたま訪問して倒れた父を発見できたけど、あの時行っていなかったら孤独死になっていたかもしれない。何日発見されなかったかわからないわけです。そういった記憶から来る使命感について強く語って、最終的に母は認めたんじゃなくて諦めたんだと思います。 最近は「もう好きにやりなさい、関係ないわ」みたいな感じですね。ただ『ザ・ノンフィクション』に出て父の話をしたりするとクレームが来ます。でも「本出したよ」っていうと喜ぶんですよ(笑)。――当時の恋人からも反対されたという話は本当でしょうか。小島 「そんな仕事すると呪われるよ?」って言われたんですよ。それにカチンときて「じゃあ君は自分が死んだとして、清掃しに来てくれる人を呪うのか?」ってキレたら納得してました(笑)。その後はあんまり触れてこなかったですね。ゴキブリだけはやっぱりビビる――漫画では、お仕事に就いて1件目の現場はあらかじめ片付いていて綺麗だったと描かれていましたが、2件目の現場ではゴキブリに遭遇して大変だったとか……。小島 クロゴキブリが1000匹以上はいましたね。「うわあーっ」って叫びたかったけど、団地なので叫べないんですよ。心と声を殺しながら作業しました。 その現場はゴキブリだけじゃなくて片付ける量や汚れも多かったので、3日くらいかけて清掃したんですけど、引き出し開けたらゴキブリがいっぱいいるんです。1回閉めて、ノズル式のゴキジェットを隙間から入れてシューッて噴射したら、中で「ガサガサガサガサ!」って音がするんですよ。もう鳥肌立ちまくりですよね……。――うわー……。今もゴキブリは苦手なんですか。小島 ゴキブリだけはやっぱりビビりますね。殺さないと増えちゃったりするんで「絶対殺す」って気を引き締めるんですけど、内心は大騒ぎですね。 私、チャバネゴキブリは全然平気なんですよ。飛ばなくて薄茶色のちっちゃいゴキブリ。あれなら手袋をしてそのまま潰したりできるくらいなんですけど、クロゴキブリはダメですね。黒光りしていて、めちゃくちゃ早いじゃないですか。透明だったらたぶん平気だと思うんです。あんな黒になっちゃあ、ダメですね。イメトレの効果は?――“死臭”イメトレの成果もあったんでしょうか。小島 実際に行って死臭を嗅いだら、想像していた臭いの方がすごかったんです。現場に入るのもためらうくらいの臭いではあるんですけど、想像の方が勝ってました。だから「死臭ってこんな感じなんだな」って感想でしたね。――「怖い」と目を背けたくなるような気持ちにはならなかったんでしょうか。小島 そうですね。遺品整理・特殊清掃のお仕事を知るまでは「怖いなあ」って気持ちもありました。でも準備期間の間に、遺体の跡や体液がすごい現場でも住んでいたのは自分と同じ喜怒哀楽のある人間なんだって思えるようになって、怖くなくなりました。 現場を見た時にいち早くその故人様の気持ちを考えちゃうんです。突然亡くなって部屋もそのままじゃないですか。不安だろうし、安心して天国にいけないんじゃないかなって思って、早く片付けてあげたいなって気持ちの方が先に立ちますね。トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由 へ続く(「文春オンライン」編集部)
そんな彼女が企画・原案を務めた『あなたの生きた証を探して 遺品整理人がミニチュアで表現する孤独死の現場』(竹書房)が、2022年8月25日に出版された。
小島さんはなぜ遺品整理人になったのか。日本における“孤独死”の現状とは一体どのようなものなのか。漫画の中でも描かれる彼女の体験について、改めて詳しく話を伺った。(全2回の1回目/後編に続く)
作業服に身を包んだ小島美羽さん 西邑泰和
◆◆◆
――遺品整理・特殊清掃というお仕事に興味を持ったきっかけは?
小島 「特殊清掃っていう仕事があるんだよ」と知人に教えてもらって、興味をもってネットで調べてみたんです。当時は悪徳業者がたくさんいて、「家族が亡くなったので業者に頼んだら、暴言を吐かれた」とか「お金を倍近く取られた」とか悔しい思いをした人の書き込みが見つかりました。
私も高校生のときに突然父を亡くしている遺族側の人間なので、悲しい気持ちに付け込んで暴言を吐いたり高額請求したりするなんて「許せないな」と正義感のような気持ちが強くなったんです。
目の前で思い出の物を壊したり、雑に捨てたりする業者もいるらしいんですよ。それを知って「私だったら遺族も亡くなった故人様も思いやるし、酷いことは絶対しないのに」「私がやったほうがいいんじゃないか」と思うようになったんです。
それに、父を亡くしてから「本当は大切な存在だったんだな」とか「実は尊敬してたんだな」と後悔していた気持ちも重なって、遺品整理・特殊清掃のことばかり考えるようになりました。死臭を想像してイメトレを…――その後、元々勤めていた郵便局を退職されてから、遺品整理人になるまで2年間の準備期間があったんですよね。その間はどういったことをされてたんでしょうか?小島 その頃から遺品整理や特殊清掃の仕事を一生続けたいって気持ちがありました。でも当時20歳くらいで好奇心旺盛だったので、途中で目移りしたらイヤだなと思って、2年間で他のやりたいことを全部やってみることにしたんです。くまさんカステラのバイトやテレビ局のAD、別に興味はなかったけどお給料がすごく良い仕事もやってみました。 それと併行して、遺品整理や特殊清掃がどんな仕事なのかをネットや本で調べたり動画を見たりもしています。海外のモザイクなしの事故の画像を見て“グロ”耐性をつけたり……。当時は「もしかしたら遺体を見ることになるかもしれない」と思っていたんですよね。実際、一部は落ちていても遺体自体はないんですけど。 ネットでは「死臭に耐えられない」と言っている人も多かったんですが、耐性をつけようにも想像するしかないじゃないですか。だからイメトレというか、凄まじい臭いを想像して日々悶々としていましたね。 そういう期間を経ても、やっぱり「遺品整理・特殊清掃の仕事がしたい」という気持ちは変わらなかったので、求人を探すことにしました。――今の会社を選んだ理由は?小島 遺品整理・特殊清掃をやってる会社はたくさんあったんですが、求人サイトの募集文に「誰にでもできる簡単なお仕事です」と書いてあったり、遺品整理・特殊清掃を“ただの仕事”と捉えているように見える会社ばかりで、「なんか違うな」と思っていたんです。 でも今勤めている会社の募集文には、ちゃんと「きつい仕事」だと書かれていて、なおかつ遺族や故人様を思いやる内容だったので「ここしかないな」と思って申し込みました。それで面接受けて、合格して、今があります。「そんな仕事すると呪われるよ?」――小島さんが遺品整理・特殊清掃の仕事に就くことに対して、ご家族はどんな反応でしたか。小島 すごく反対されました。母も姉も大反対でしたね。特に母には「なんであんたは大変だってわかってる仕事をわざわざやりに行くんだ」と言われたので、遺品整理・特殊清掃という仕事に対する熱い思いを語ったんです。 私の父が亡くなった日も、別居中の母がたまたま訪問して倒れた父を発見できたけど、あの時行っていなかったら孤独死になっていたかもしれない。何日発見されなかったかわからないわけです。そういった記憶から来る使命感について強く語って、最終的に母は認めたんじゃなくて諦めたんだと思います。 最近は「もう好きにやりなさい、関係ないわ」みたいな感じですね。ただ『ザ・ノンフィクション』に出て父の話をしたりするとクレームが来ます。でも「本出したよ」っていうと喜ぶんですよ(笑)。――当時の恋人からも反対されたという話は本当でしょうか。小島 「そんな仕事すると呪われるよ?」って言われたんですよ。それにカチンときて「じゃあ君は自分が死んだとして、清掃しに来てくれる人を呪うのか?」ってキレたら納得してました(笑)。その後はあんまり触れてこなかったですね。ゴキブリだけはやっぱりビビる――漫画では、お仕事に就いて1件目の現場はあらかじめ片付いていて綺麗だったと描かれていましたが、2件目の現場ではゴキブリに遭遇して大変だったとか……。小島 クロゴキブリが1000匹以上はいましたね。「うわあーっ」って叫びたかったけど、団地なので叫べないんですよ。心と声を殺しながら作業しました。 その現場はゴキブリだけじゃなくて片付ける量や汚れも多かったので、3日くらいかけて清掃したんですけど、引き出し開けたらゴキブリがいっぱいいるんです。1回閉めて、ノズル式のゴキジェットを隙間から入れてシューッて噴射したら、中で「ガサガサガサガサ!」って音がするんですよ。もう鳥肌立ちまくりですよね……。――うわー……。今もゴキブリは苦手なんですか。小島 ゴキブリだけはやっぱりビビりますね。殺さないと増えちゃったりするんで「絶対殺す」って気を引き締めるんですけど、内心は大騒ぎですね。 私、チャバネゴキブリは全然平気なんですよ。飛ばなくて薄茶色のちっちゃいゴキブリ。あれなら手袋をしてそのまま潰したりできるくらいなんですけど、クロゴキブリはダメですね。黒光りしていて、めちゃくちゃ早いじゃないですか。透明だったらたぶん平気だと思うんです。あんな黒になっちゃあ、ダメですね。イメトレの効果は?――“死臭”イメトレの成果もあったんでしょうか。小島 実際に行って死臭を嗅いだら、想像していた臭いの方がすごかったんです。現場に入るのもためらうくらいの臭いではあるんですけど、想像の方が勝ってました。だから「死臭ってこんな感じなんだな」って感想でしたね。――「怖い」と目を背けたくなるような気持ちにはならなかったんでしょうか。小島 そうですね。遺品整理・特殊清掃のお仕事を知るまでは「怖いなあ」って気持ちもありました。でも準備期間の間に、遺体の跡や体液がすごい現場でも住んでいたのは自分と同じ喜怒哀楽のある人間なんだって思えるようになって、怖くなくなりました。 現場を見た時にいち早くその故人様の気持ちを考えちゃうんです。突然亡くなって部屋もそのままじゃないですか。不安だろうし、安心して天国にいけないんじゃないかなって思って、早く片付けてあげたいなって気持ちの方が先に立ちますね。トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由 へ続く(「文春オンライン」編集部)
それに、父を亡くしてから「本当は大切な存在だったんだな」とか「実は尊敬してたんだな」と後悔していた気持ちも重なって、遺品整理・特殊清掃のことばかり考えるようになりました。
――その後、元々勤めていた郵便局を退職されてから、遺品整理人になるまで2年間の準備期間があったんですよね。その間はどういったことをされてたんでしょうか?
小島 その頃から遺品整理や特殊清掃の仕事を一生続けたいって気持ちがありました。でも当時20歳くらいで好奇心旺盛だったので、途中で目移りしたらイヤだなと思って、2年間で他のやりたいことを全部やってみることにしたんです。くまさんカステラのバイトやテレビ局のAD、別に興味はなかったけどお給料がすごく良い仕事もやってみました。
それと併行して、遺品整理や特殊清掃がどんな仕事なのかをネットや本で調べたり動画を見たりもしています。海外のモザイクなしの事故の画像を見て“グロ”耐性をつけたり……。当時は「もしかしたら遺体を見ることになるかもしれない」と思っていたんですよね。実際、一部は落ちていても遺体自体はないんですけど。
ネットでは「死臭に耐えられない」と言っている人も多かったんですが、耐性をつけようにも想像するしかないじゃないですか。だからイメトレというか、凄まじい臭いを想像して日々悶々としていましたね。 そういう期間を経ても、やっぱり「遺品整理・特殊清掃の仕事がしたい」という気持ちは変わらなかったので、求人を探すことにしました。――今の会社を選んだ理由は?小島 遺品整理・特殊清掃をやってる会社はたくさんあったんですが、求人サイトの募集文に「誰にでもできる簡単なお仕事です」と書いてあったり、遺品整理・特殊清掃を“ただの仕事”と捉えているように見える会社ばかりで、「なんか違うな」と思っていたんです。 でも今勤めている会社の募集文には、ちゃんと「きつい仕事」だと書かれていて、なおかつ遺族や故人様を思いやる内容だったので「ここしかないな」と思って申し込みました。それで面接受けて、合格して、今があります。「そんな仕事すると呪われるよ?」――小島さんが遺品整理・特殊清掃の仕事に就くことに対して、ご家族はどんな反応でしたか。小島 すごく反対されました。母も姉も大反対でしたね。特に母には「なんであんたは大変だってわかってる仕事をわざわざやりに行くんだ」と言われたので、遺品整理・特殊清掃という仕事に対する熱い思いを語ったんです。 私の父が亡くなった日も、別居中の母がたまたま訪問して倒れた父を発見できたけど、あの時行っていなかったら孤独死になっていたかもしれない。何日発見されなかったかわからないわけです。そういった記憶から来る使命感について強く語って、最終的に母は認めたんじゃなくて諦めたんだと思います。 最近は「もう好きにやりなさい、関係ないわ」みたいな感じですね。ただ『ザ・ノンフィクション』に出て父の話をしたりするとクレームが来ます。でも「本出したよ」っていうと喜ぶんですよ(笑)。――当時の恋人からも反対されたという話は本当でしょうか。小島 「そんな仕事すると呪われるよ?」って言われたんですよ。それにカチンときて「じゃあ君は自分が死んだとして、清掃しに来てくれる人を呪うのか?」ってキレたら納得してました(笑)。その後はあんまり触れてこなかったですね。ゴキブリだけはやっぱりビビる――漫画では、お仕事に就いて1件目の現場はあらかじめ片付いていて綺麗だったと描かれていましたが、2件目の現場ではゴキブリに遭遇して大変だったとか……。小島 クロゴキブリが1000匹以上はいましたね。「うわあーっ」って叫びたかったけど、団地なので叫べないんですよ。心と声を殺しながら作業しました。 その現場はゴキブリだけじゃなくて片付ける量や汚れも多かったので、3日くらいかけて清掃したんですけど、引き出し開けたらゴキブリがいっぱいいるんです。1回閉めて、ノズル式のゴキジェットを隙間から入れてシューッて噴射したら、中で「ガサガサガサガサ!」って音がするんですよ。もう鳥肌立ちまくりですよね……。――うわー……。今もゴキブリは苦手なんですか。小島 ゴキブリだけはやっぱりビビりますね。殺さないと増えちゃったりするんで「絶対殺す」って気を引き締めるんですけど、内心は大騒ぎですね。 私、チャバネゴキブリは全然平気なんですよ。飛ばなくて薄茶色のちっちゃいゴキブリ。あれなら手袋をしてそのまま潰したりできるくらいなんですけど、クロゴキブリはダメですね。黒光りしていて、めちゃくちゃ早いじゃないですか。透明だったらたぶん平気だと思うんです。あんな黒になっちゃあ、ダメですね。イメトレの効果は?――“死臭”イメトレの成果もあったんでしょうか。小島 実際に行って死臭を嗅いだら、想像していた臭いの方がすごかったんです。現場に入るのもためらうくらいの臭いではあるんですけど、想像の方が勝ってました。だから「死臭ってこんな感じなんだな」って感想でしたね。――「怖い」と目を背けたくなるような気持ちにはならなかったんでしょうか。小島 そうですね。遺品整理・特殊清掃のお仕事を知るまでは「怖いなあ」って気持ちもありました。でも準備期間の間に、遺体の跡や体液がすごい現場でも住んでいたのは自分と同じ喜怒哀楽のある人間なんだって思えるようになって、怖くなくなりました。 現場を見た時にいち早くその故人様の気持ちを考えちゃうんです。突然亡くなって部屋もそのままじゃないですか。不安だろうし、安心して天国にいけないんじゃないかなって思って、早く片付けてあげたいなって気持ちの方が先に立ちますね。トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由 へ続く(「文春オンライン」編集部)
ネットでは「死臭に耐えられない」と言っている人も多かったんですが、耐性をつけようにも想像するしかないじゃないですか。だからイメトレというか、凄まじい臭いを想像して日々悶々としていましたね。
そういう期間を経ても、やっぱり「遺品整理・特殊清掃の仕事がしたい」という気持ちは変わらなかったので、求人を探すことにしました。
――今の会社を選んだ理由は?
小島 遺品整理・特殊清掃をやってる会社はたくさんあったんですが、求人サイトの募集文に「誰にでもできる簡単なお仕事です」と書いてあったり、遺品整理・特殊清掃を“ただの仕事”と捉えているように見える会社ばかりで、「なんか違うな」と思っていたんです。
でも今勤めている会社の募集文には、ちゃんと「きつい仕事」だと書かれていて、なおかつ遺族や故人様を思いやる内容だったので「ここしかないな」と思って申し込みました。それで面接受けて、合格して、今があります。
「そんな仕事すると呪われるよ?」――小島さんが遺品整理・特殊清掃の仕事に就くことに対して、ご家族はどんな反応でしたか。小島 すごく反対されました。母も姉も大反対でしたね。特に母には「なんであんたは大変だってわかってる仕事をわざわざやりに行くんだ」と言われたので、遺品整理・特殊清掃という仕事に対する熱い思いを語ったんです。 私の父が亡くなった日も、別居中の母がたまたま訪問して倒れた父を発見できたけど、あの時行っていなかったら孤独死になっていたかもしれない。何日発見されなかったかわからないわけです。そういった記憶から来る使命感について強く語って、最終的に母は認めたんじゃなくて諦めたんだと思います。 最近は「もう好きにやりなさい、関係ないわ」みたいな感じですね。ただ『ザ・ノンフィクション』に出て父の話をしたりするとクレームが来ます。でも「本出したよ」っていうと喜ぶんですよ(笑)。――当時の恋人からも反対されたという話は本当でしょうか。小島 「そんな仕事すると呪われるよ?」って言われたんですよ。それにカチンときて「じゃあ君は自分が死んだとして、清掃しに来てくれる人を呪うのか?」ってキレたら納得してました(笑)。その後はあんまり触れてこなかったですね。ゴキブリだけはやっぱりビビる――漫画では、お仕事に就いて1件目の現場はあらかじめ片付いていて綺麗だったと描かれていましたが、2件目の現場ではゴキブリに遭遇して大変だったとか……。小島 クロゴキブリが1000匹以上はいましたね。「うわあーっ」って叫びたかったけど、団地なので叫べないんですよ。心と声を殺しながら作業しました。 その現場はゴキブリだけじゃなくて片付ける量や汚れも多かったので、3日くらいかけて清掃したんですけど、引き出し開けたらゴキブリがいっぱいいるんです。1回閉めて、ノズル式のゴキジェットを隙間から入れてシューッて噴射したら、中で「ガサガサガサガサ!」って音がするんですよ。もう鳥肌立ちまくりですよね……。――うわー……。今もゴキブリは苦手なんですか。小島 ゴキブリだけはやっぱりビビりますね。殺さないと増えちゃったりするんで「絶対殺す」って気を引き締めるんですけど、内心は大騒ぎですね。 私、チャバネゴキブリは全然平気なんですよ。飛ばなくて薄茶色のちっちゃいゴキブリ。あれなら手袋をしてそのまま潰したりできるくらいなんですけど、クロゴキブリはダメですね。黒光りしていて、めちゃくちゃ早いじゃないですか。透明だったらたぶん平気だと思うんです。あんな黒になっちゃあ、ダメですね。イメトレの効果は?――“死臭”イメトレの成果もあったんでしょうか。小島 実際に行って死臭を嗅いだら、想像していた臭いの方がすごかったんです。現場に入るのもためらうくらいの臭いではあるんですけど、想像の方が勝ってました。だから「死臭ってこんな感じなんだな」って感想でしたね。――「怖い」と目を背けたくなるような気持ちにはならなかったんでしょうか。小島 そうですね。遺品整理・特殊清掃のお仕事を知るまでは「怖いなあ」って気持ちもありました。でも準備期間の間に、遺体の跡や体液がすごい現場でも住んでいたのは自分と同じ喜怒哀楽のある人間なんだって思えるようになって、怖くなくなりました。 現場を見た時にいち早くその故人様の気持ちを考えちゃうんです。突然亡くなって部屋もそのままじゃないですか。不安だろうし、安心して天国にいけないんじゃないかなって思って、早く片付けてあげたいなって気持ちの方が先に立ちますね。トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由 へ続く(「文春オンライン」編集部)
――小島さんが遺品整理・特殊清掃の仕事に就くことに対して、ご家族はどんな反応でしたか。
小島 すごく反対されました。母も姉も大反対でしたね。特に母には「なんであんたは大変だってわかってる仕事をわざわざやりに行くんだ」と言われたので、遺品整理・特殊清掃という仕事に対する熱い思いを語ったんです。
私の父が亡くなった日も、別居中の母がたまたま訪問して倒れた父を発見できたけど、あの時行っていなかったら孤独死になっていたかもしれない。何日発見されなかったかわからないわけです。そういった記憶から来る使命感について強く語って、最終的に母は認めたんじゃなくて諦めたんだと思います。
最近は「もう好きにやりなさい、関係ないわ」みたいな感じですね。ただ『ザ・ノンフィクション』に出て父の話をしたりするとクレームが来ます。でも「本出したよ」っていうと喜ぶんですよ(笑)。
――当時の恋人からも反対されたという話は本当でしょうか。
小島 「そんな仕事すると呪われるよ?」って言われたんですよ。それにカチンときて「じゃあ君は自分が死んだとして、清掃しに来てくれる人を呪うのか?」ってキレたら納得してました(笑)。その後はあんまり触れてこなかったですね。
――漫画では、お仕事に就いて1件目の現場はあらかじめ片付いていて綺麗だったと描かれていましたが、2件目の現場ではゴキブリに遭遇して大変だったとか……。
小島 クロゴキブリが1000匹以上はいましたね。「うわあーっ」って叫びたかったけど、団地なので叫べないんですよ。心と声を殺しながら作業しました。
その現場はゴキブリだけじゃなくて片付ける量や汚れも多かったので、3日くらいかけて清掃したんですけど、引き出し開けたらゴキブリがいっぱいいるんです。1回閉めて、ノズル式のゴキジェットを隙間から入れてシューッて噴射したら、中で「ガサガサガサガサ!」って音がするんですよ。もう鳥肌立ちまくりですよね……。
――うわー……。今もゴキブリは苦手なんですか。小島 ゴキブリだけはやっぱりビビりますね。殺さないと増えちゃったりするんで「絶対殺す」って気を引き締めるんですけど、内心は大騒ぎですね。 私、チャバネゴキブリは全然平気なんですよ。飛ばなくて薄茶色のちっちゃいゴキブリ。あれなら手袋をしてそのまま潰したりできるくらいなんですけど、クロゴキブリはダメですね。黒光りしていて、めちゃくちゃ早いじゃないですか。透明だったらたぶん平気だと思うんです。あんな黒になっちゃあ、ダメですね。イメトレの効果は?――“死臭”イメトレの成果もあったんでしょうか。小島 実際に行って死臭を嗅いだら、想像していた臭いの方がすごかったんです。現場に入るのもためらうくらいの臭いではあるんですけど、想像の方が勝ってました。だから「死臭ってこんな感じなんだな」って感想でしたね。――「怖い」と目を背けたくなるような気持ちにはならなかったんでしょうか。小島 そうですね。遺品整理・特殊清掃のお仕事を知るまでは「怖いなあ」って気持ちもありました。でも準備期間の間に、遺体の跡や体液がすごい現場でも住んでいたのは自分と同じ喜怒哀楽のある人間なんだって思えるようになって、怖くなくなりました。 現場を見た時にいち早くその故人様の気持ちを考えちゃうんです。突然亡くなって部屋もそのままじゃないですか。不安だろうし、安心して天国にいけないんじゃないかなって思って、早く片付けてあげたいなって気持ちの方が先に立ちますね。トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由 へ続く(「文春オンライン」編集部)
――うわー……。今もゴキブリは苦手なんですか。
小島 ゴキブリだけはやっぱりビビりますね。殺さないと増えちゃったりするんで「絶対殺す」って気を引き締めるんですけど、内心は大騒ぎですね。
私、チャバネゴキブリは全然平気なんですよ。飛ばなくて薄茶色のちっちゃいゴキブリ。あれなら手袋をしてそのまま潰したりできるくらいなんですけど、クロゴキブリはダメですね。黒光りしていて、めちゃくちゃ早いじゃないですか。透明だったらたぶん平気だと思うんです。あんな黒になっちゃあ、ダメですね。
――“死臭”イメトレの成果もあったんでしょうか。
小島 実際に行って死臭を嗅いだら、想像していた臭いの方がすごかったんです。現場に入るのもためらうくらいの臭いではあるんですけど、想像の方が勝ってました。だから「死臭ってこんな感じなんだな」って感想でしたね。
――「怖い」と目を背けたくなるような気持ちにはならなかったんでしょうか。
小島 そうですね。遺品整理・特殊清掃のお仕事を知るまでは「怖いなあ」って気持ちもありました。でも準備期間の間に、遺体の跡や体液がすごい現場でも住んでいたのは自分と同じ喜怒哀楽のある人間なんだって思えるようになって、怖くなくなりました。
現場を見た時にいち早くその故人様の気持ちを考えちゃうんです。突然亡くなって部屋もそのままじゃないですか。不安だろうし、安心して天国にいけないんじゃないかなって思って、早く片付けてあげたいなって気持ちの方が先に立ちますね。トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由 へ続く(「文春オンライン」編集部)
現場を見た時にいち早くその故人様の気持ちを考えちゃうんです。突然亡くなって部屋もそのままじゃないですか。不安だろうし、安心して天国にいけないんじゃないかなって思って、早く片付けてあげたいなって気持ちの方が先に立ちますね。
トイレからあふれる黒い水、体液が沁みた布団…女性“遺品整理人”が孤独死は「誰にでも起こりうる」と訴える理由 へ続く
(「文春オンライン」編集部)