北海道旭川市のコンビニ店で15日未明、パート従業員の女性が刃物で刺された事件で、殺人未遂容疑で現行犯逮捕された男が、犯行の一部始終をインターネットの配信アプリでライブ配信していたとみられることがわかった。
男は配信中に「注目を集めたかった」と訴えており、過激な映像を流して視聴者の興味を引こうとした可能性がある。(野田快、鈴木日和)
■◆視聴者から「刺したの?」
北海道警の発表では、男は、旭川市忠和、無職相原強志容疑者(31)。相原容疑者は15日午前2時半頃、コンビニ店「セイコーマートまるひで店」(旭川市忠和5の6)で女性(52)の背中を包丁で刺し、殺害しようとした疑いが持たれている。女性は病院に搬送されたが、命に別条はない。
ライブ配信を視聴していた男性によると、相原容疑者とみられる男は、同日午前2時頃に配信を開始。男は「金はいらないから名誉がほしい」「いまから現場に向かう」などと語った上で、自転車で近くのコンビニ店に行き、2時20分頃に入店した。
まもなく「ドン」という衝撃音が聞こえ、オレンジと赤色の制服を着た女性店員の背中に血が見えたという。ほかの視聴者から「刺したの?」などのコメントが寄せられると、男は「強盗だぞ」と連呼し、「バズる(話題になる)から」と動画を拡散するよう呼びかけていた。
当時の視聴者数は8人だった。その後、警察官が来て取り押さえられるまでの様子が映っていたという。セイコーマートを運営するセコマ(札幌市中央区)は「動画に映っていた女性は、当社の従業員」と説明。相原容疑者は黙秘しており、道警は、動画配信の経緯を含めて動機を捜査している。
■◆ランキング制で収益
相原容疑者が配信していたとされるスマートフォンアプリは手軽に動画をライブで配信でき、近年20代~40代を中心に利用者が増えているという。特徴は、動画が人気を集めると収益をあげられる点だ。
配信者は、視聴者数やコメント数、視聴者が贈るアイテムに応じてランキングが決まり、上位者は換金できるポイントが得られる。1か月で数十万円から100万円以上を稼ぐ人もいるという。
複数の視聴者によると、相原容疑者は昨年春頃にこのアプリで配信を始めた。相原容疑者と今年2月下旬頃にアプリで知り合った別の男性は、お互いの配信を見る間柄。相原容疑者は毎日、数回配信していたといい、内容はギャンブルの予想などだった。ランキングにこだわりがあり、「頑張りたい」と話していたという。
だが、相原容疑者は視聴者数が伸びず、次第にほかの配信者や視聴者に、「頭かち割ってやるぞ」などと暴言を繰り返すようになった。犯行のライブ配信を視聴していた男性は「過激な発言をする人だったが、本当に刺すとは驚いた。人を刺しても視聴数が伸びるわけないのに」と困惑した様子で話した。
■AI活用し配信の停止措置必要
成蹊大の高橋暁子客員教授(情報リテラシー)は、「一般的な動画の投稿で注目を集められず、存在を認めてもらえないように感じて、承認欲求を肥大化させることで投稿が行われたのではないか」と分析した。その上で、「運営側がAIなどを活用して、暴力性をはらんだ問題のある配信を迅速に配信停止にするなどの措置を講じる必要がある」と指摘している。