犯罪は常に進化してしまうのか。「ルフィ」などと名乗り、広域強盗事件を指示した疑いがある4人の存在が日本中に衝撃を与えた。“カモリスト”をもとにフィリピンの入管施設ビクタン収容所から遠隔指示で、複雑な特殊詐欺ではなく、実行役に強盗をやらせるという過激な手口。「水と安全はタダ」という日本人の常識をひっくり返した犯罪だが、他の犯罪グループでは、すでにその“ルフィによる恐怖心”を利用した犯行手口が編み出されてしまった。
フィリピンの入管施設から、「闇バイト」で実行役を集め、特殊詐欺、さらには強盗、強盗殺人まで行っていたとみられる渡辺優樹(38)、今村磨人(38)、藤田聖也(38)、小島智信(45)の容疑者4人の存在は裏社会にも衝撃的だった。
特殊詐欺事情に詳しい元暴力団関係者は「強盗殺人が起きなければ、警察は本腰を上げなかったかもしれません。SNSで闇バイトを募集し、確実に現金や宝飾品がある家に押し入って“たたき(強盗)”をやる手口は、不謹慎ですが、闇社会で“大当たり”と言われていました。実行役が逮捕されても、指示役までたどりつきにくいし、SNSで募集をかければ、またすぐに実行役を集められます。しかも、劇場型の『オレオレ詐欺』『振り込め詐欺』と違って、人手が少なくて済むからです」と指摘する。
かつて特殊詐欺のグループを作るには、多重債務者リストをもとに、「掛け子」「受け子」「出し子」をスカウトしていた。「オレオレ詐欺は、カモリストにある1000件ぐらいに電話をかけて1件が引っ掛かるかどうか。さらにその1件をだましきるには、マニュアルを読み込んで練習を積んだ銀行員役、弁護士役、警察官役、親族役の掛け子、そして受け子か出し子が必要です。一方、ルフィらはすぐに集まる使い捨ての実行役にたたきをやらせるので手っ取り早く、確実にカネが入る」(同)
東京・狛江市で強盗殺人事件が起き、ルフィが関係しているとして、警察は全容解明のため徹底的な捜査を行い、渡辺容疑者ら4人を逮捕した。しかし、ルフィは6つの特殊詐欺・窃盗・強盗グループしか統括していなかったとされる。まだまだ悪のグループはごろごろ存在する。
その悪のグループがさっそくルフィが世間に与えた恐怖を利用した犯行手口を編み出した。
札幌市で2月以降、親族を装って在宅状況などを聞き出す「アポ電」とみられる不審な電話が相次ぎ、北海道警は強盗や窃盗、特殊詐欺事件につながる恐れがあるとして注意を呼びかけていた。これがもう変化した。
「警察官を装って、『窃盗犯を逮捕したら、次はあなたの家に強盗に入ろうとしていたらしいんですよ』『窃盗犯を逮捕したらターゲットリストを押収して、あなたの家が入っていた』として、住所、名前、現金の有無を聞き出すというものです。考えられるのは、一つは在宅確認のアポ電。強盗に押し入るのか、留守なら窃盗に入るのか、それはグループの指示役次第です。もう一つは後日、警察官の格好をして、『大丈夫でしたか』などと言い、キャッシュカードを提示させて、手品のようにすり替えるなどして、だまし取る手口です。どちらも古典的な犯罪手口ですが、犯罪グループは、ルフィ事件があったからこそ効果的と思ったんでしょうね」(同)
警察と犯罪グループのいたちごっこは終わることがないのかもしれない。