スーパーのアルバイトとして働いているという女性がXで、勤務先から年始の有給休暇の取得を断られたと12月下旬に投稿したところ、1400万件近くのインプレッションを集めるなど、大きな注目を集めた。
投稿によると、女性は1月1日から4日まで有給休暇を取得しようとしたが、勤務先から「正月は有給認められない」として断られたという。
投稿者は「労基法(※労働基準法)的に大丈夫なん?アウトなら徹底的に抗議する」と投稿し、勤務先の対応について賛否を含む多くの意見が寄せられている。
こうした勤務先の対応に法的な問題はあるのだろうか。今井俊裕弁護士に聞いた。
──「年始の元日から数日間、有給を申請したところ、認められなかった」という事例です。勤務先の対応に問題はあるのでしょうか。
有給休暇は、所定の要件を満たせば法律上発生します。
就業規則や雇用契約書に明記されていなくても、労働基準法に基づく労働者の権利として認められています。労働者は、原則として理由を示す必要もなく、事前に取得日を指定して有給を請求できます。
一方、指定された日に休まれることで、その職場の「事業の正常な運営が妨げられる」場合には、会社は時季変更権を行使し、取得時期を変更することができます。
──どのような場合に「事業の正常な運営が妨げられる」と判断されるのでしょうか。
この点は、どうしてもケース・バイ・ケースの判断になります。ただし、会社側が代替要員をどこまで確保しようと努力したか、業務を時期的に分散できなかったか、といった点が重要な判断要素になります。
今回のように、正月三が日を含む年始は、家族や友人と過ごしたり、旅行するなど、私生活上の理由から「どうしても休みたい」と考える従業員が多いでしょう。
一方で、スーパーマーケットのように生鮮食品などを扱う小売店では、年始は年間でも有数の繁忙期にあたります。まさに猫の手も借りたい状況です。
そのため、有給休暇の請求があった場合に「代替要員を確保できるかどうか」が、実務上のポイントになります。
投稿者はアルバイトだということですが、担当業務の内容や、同じ業務を担当する従業員(アルバイトを含む)の人数なども、判断にあたって重要な要素になります。
──他にポイントはありませんか。
さらに重要なのが、有給休暇を申請した時期です。かなり早い段階で申請されていれば、会社側も他のアルバイトを手配するなど、柔軟な対応が可能な場合があります。
逆に、直前の申請では対応が難しくなります。
極端な例ですが、鮮魚をさばけるスタッフが5人しかいないスーパーで、その5人全員が正月三が日に有給を取得したいと請求してきた場合、会社として全員を認めるのは現実的ではありません。
数カ月前の申請であればまだしも、数週間前、数日前となると、会社としては対応したくてもできないことが多いでしょう。
──そのような場合どのような対応になるのでしょうか。
たとえば抽選を実施して、代替要員が確保できる人数に限って有給休暇を認め、それを超える場合は同じ時期の取得を認めない、という対応をとらざるを得ないケースもあるでしょう。
あるいは「早い者勝ち」との批判を受けるかも知れませんが、申請の早い順に、一定人数まで取得を認め、それ以降は認めないとする対応も、場合によってはやむを得ないでしょう。
職場の規模や人員構成、申請の時期、取得希望日、繁忙期かどうかなど、さまざまな要素を総合的に考慮して決まるわけです。有給休暇は権利ではありますが、希望どおりに取得できない場合もあるということです。
【取材協力弁護士】今井 俊裕(いまい・としひろ)弁護士1999年弁護士登録。労働(使用者側)、会社法、不動産関連事件の取扱い多数。具体的かつ戦略的な方針提示がモットー。行政における、開発審査会の委員、感染症診査協議会の委員を歴任。事務所名:今井法律事務所事務所URL:http://www.imai-lawoffice.jp/index.html