「うつ病かも…」と思ったら? 自分や家族を守るために知っておきたい正しい対処法

「気分が落ち込む」「やる気がなくなる」といったような症状が起こる「うつ病」。うつ病は患者自身が気づくことは少なく、受診や治療が遅れる原因になることも。つまり、うつ病の早期発見には周囲の人が気づくことも重要なのだそうです。そこで今回は、うつ病かもと思ったらどうすればいいか、家族や周囲は何をすればいいのかについて、公認心理師の鍋田さんに解説していただきました。

監修公認心理師:鍋田 悠郎(公認心理師)
精神科医療法人の就労支援施設及び精神科デイケアにて相談支援業務に従事。精神疾患の方や障害者の方、その家族や企業など様々な方の相談にのっている。カウンセリング/ソーシャルワーク室なべちゃん代表でもあり、カウセリングやライターなどの活動もおこなっている。
編集部
もし「うつ病かも……」と思ったらどうすればよいですか?
鍋田さん
うつ病は「心の病気」であると同時に「脳の病気」です。個人の努力だけで何とかなるものではなく、治療が遅れると影響も長引く可能性が高くなるので、うつ病か心配になった場合は早めに病院を受診した方がいいですね。会社や学校に相談室がある場合は、まずそちらに相談するのもいいでしょう。
編集部
身近にうつ病の方がいた場合、家族や周囲の方は何をしてあげたらいいですか? うつ病の方にしてはいけないことも併せて教えてください。
鍋田さん
まず、うつ病の方は意欲や思考力が低下しているため頑張れない状態、既に頑張っている状態と理解してください。そのため、相手がしんどい気持ちやつらい気持ちを出した時は否定せずに相手の話を共感して聞いてあげてください。ただ、信頼関係ができている場合、治る段階にあるのに症状が慢性化している人に対しては、一緒に頑張ろうというニュアンスの言葉や少し背中を押してあげる言葉が有効に働く場合もあります。しかし、基本的には頑張ってという言葉は安易に使わない方がいいと思います。
編集部
うつ病の治療について簡単に教えてください。
鍋田さん
「休養」「薬物療法」「精神療法」「環境調整」が基本となります。うつ病は心理的な要因、生物学的な要因、社会的な要因など様々なことが重なり発症すると言われているため、治療においても3方面から考えていく必要があります。また、認知行動療法やマインドフルネス、rTMSなども効果があると言われています。診断、治療は医師を中心に進めていきますので、詳細は病院を受診して医師に確認してもらえたらと思います。どんな病気でもそうですが、治療が遅れると症状が長引く可能性が高くなるので、早期発見・早期治療がうつ病においても大切になります。
編集部
認知行動療法について簡単に教えてください。
鍋田さん
認知行動療法はうつ病や不安症、強迫症などの治療効果、再発予防効果があると言われています。認知行動療法では、あるできごとがあった際の、「考え(認知)」「気持ち(感情)」「身体反応」「行動」という4つの側面に着目します。これらは互いに影響し合っています。この中で身体反応と気持ちは自分でコントロールすることは難しいですが、考えと行動は自分でコントロールしやすい部分になっています。そのため、考え(認知)と行動にアプローチし、考えや行動の幅を広げ、結果的に気持ちや身体を楽にしていこうというのが認知行動療法になります。自分の考えや行動の癖を知り、考えや行動の幅を広げていくイメージですね。
編集部
生活習慣など日常生活に取り入れられそうなことでうつ病の予防、治療の助けになることについて教えてください。
鍋田さん
一般的に健康にいいとされている生活習慣はうつ病に対してもいいと思います。例えば、運動、栄養バランスの取れた食事、睡眠時間の確保などですね。また、日光を浴びることはうつ病に対して効果を発揮します。朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びることはお勧めです。一点気を付けて欲しいのは、うつ病の方は「~すべき」「~しなければならない」と考えがちです。義務感とならないように取り組んでもらえたらと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
鍋田さん
うつ病は心の風邪と言われることがありますが、風邪と比べると症状は比較にならないほど辛く、影響も極めて大きいです。また、うつ病は生涯で15人に1人が経験するというデータもあり、誰でも発症する可能性があります。しかし、早期発見・早期治療をすると短期間で治る可能性も上がります。また、日々の生活習慣やストレス対処を見直すことで発症リスクを下げることもできます。自分自身のうつ病を予防するためにも、うつ病かもしれない人と接した時に適切な対応をするためにも、正しい知識を身に付けておけるといいですね。
※この記事はメディカルドックにて<「うつ病の人がとる行動」の特徴をご存知ですか? 家族・周囲が気を付けるべきポイントを解説>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。