後悔してます…38歳で乳がんと診断されたバリキャリ女性、〈がん診断給付金500万円〉を一瞬で溶かす。数年後に訪れた〈想定外の事態〉に絶望したワケ【CFPの助言】

亜由美さん(46歳)は38歳のときに乳がんと診断され、診断給付金を受け取りました。がん診断給付金の使い道は自由ですが、亜由美さんは後悔することに。今回は、CFPなどの資格を持つトータルマネーコンサルタントの新井智美さんが、がん診断給付金を受け取った際の注意点について解説します。
亜由美さんは独身で大手企業に勤務しています。仕事が大好きないわゆるバリキャリです。35歳から人間ドックも欠かさず受けていたものの、38歳のときに乳がんが見つかってしまったのです。
亜由美さんは複数のがん保険に加入しており、受け取れる給付金も合計で500万円と高額に設定していたため、がんの手術および入院の給付金以外に、まとまった額のがん診断給付金も受け取りました。
退院してしばらく自宅療養をしたものの、術後の経過も順調だったため、1ヵ月もたたないうちに職場に復帰。かかった治療費も高額医療費制度を使うことで超えた部分も還付され、退院後は定期的な通院のみだったため、あっという間に元通りの生活に戻ることができました。
確かに以前よりは体力が落ちたなと感じたものの、仕事に支障はなく、具合が悪いときは休みを取るという生活を続けています。
亜由美さんは500万円ものがん診断給付金を受け取りました。診断給付金は何に使っても自由だったため、入院中のパジャマやタクシー代、個室代のほか、もともと好きだった海外旅行などに使いました。そうしているうちに受け取った給付金もほぼ使ってしまったのです。
亜由美さんは昨年、マンションを購入しようとし、さまざまな物件を調べていました。しかし、近年のマンション価格高騰で、新築マンションはさすがに無理だと判断し、中古マンションを購入することに。とはいえ、都内の中古マンションも値段が高く、その中でこれくらいの価格なら購入できるだろうと思える物件を選び、不動産会社と話を進めるほか、住宅ローンを利用するために金融機関に相談に行ったところ、無理なく返済していくなら、頭金が400万円はあったほうが良いといわれて愕然としました。
今の亜由美さんにはそこまでの余剰資金はありません。無理して捻出したとしても、不動産会社に支払う仲介料や住宅ローンを利用する際の諸費用を考えると、さらに100万円程度のお金が必要です。
そのときに初めてがん診断給付金を使わずに取っておけば良かったと後悔したのです。
結局、購入するマンションのランクを下げ、最終的には住宅ローンを組むことができたものの、自分の愚かさを嘆かずにはいられませんでした。
そしてさらに亜由美さんを襲ったのががんの転移でした。亜由美さんは乳がんで右胸を全摘出したのですが、リンパにがんが転移。幸い、発見が早かったのですぐに手術をしたのですが、そこでも入院費などの出費が重なり亜由美さんは、さらに「お金をとっておけばよかった」と後悔したのでした。
がん診断給付金の使い道は自由ですが、主な目的は生活費を補するためです。また、まとまった金額を非課税で受け取れるため、精神的に安定する点もがん診断給付金の利点です。
亜由美さんによると、最初の乳がんのとき、がん診断給付金を受け取れるため、個室に入院できたことはすごくよかったと話します。実は、もともと仕事が大好きな亜由美さんは手術後の翌々日からパソコンを開いて仕事のメールをチェックしていたそう。相部屋だったら周りに気を使ってしまってそうはいきません。そのほかにも個室に入院できたお陰で、術後も周りに過剰な気を使うことなく、自分のペースで過ごせたのはよかったと振り返りました。
がん診断給付金の支払いは1回だけのものもあれば、複数回支払われるものもあります。また、複数回支払われる場合でも保障の対象が限られているものもありますので注意が必要です。
一度がんに罹患した人は他のがんにかかる可能性が高くなるといわれており、定期的な検診も欠かせません。亜由美さんが加入していた保険のがん診断給付は一度きりのものだったため、2回目の手術では受け取れませんでした。
がん診断給付金に限らず、入院給付金などは長期になればまとまったお金が受け取れます。しかし、受け取った給付金はその後、どんなライフイベントがあるかを考えながら使うことが大切です。もし、亜由美さんがすでにマンションを購入した後だったら、繰り上げ返済に利用することもできたでしょう。
もちろん、自分の趣味に使っても構いませんが、その後のライフイベントに支障のない範囲に収めることが大切です。
新井智美
トータルマネーコンサルタント
CFP