「かえって医療崩壊招く」…“全数把握”見直し検討で医療現場が抱くジレンマ【新潟発】

新型コロナウイルス感染の拡大に歯止めがかからない中、全ての感染者を特定する「全数把握」の見直しが検討されている。しかしその一方で、医療現場にはジレンマもあるようだ。
感染の拡大が続く中、患者の情報を把握するための業務が、現場の負担になっている。新潟市中央区の内科小児科医院では、これまでにない感染の広がりを実感しているという。
鈴木内科小児科医院・鈴木紀夫 医師:最近は「発熱外来に行っても、診てもらえない」という人の来院が多い。この6~8月は異常に増えている
こうした中で負担となっているのが、患者の情報を保健所などに報告するための、システムへの入力作業だ。
鈴木内科小児科医院・鈴木紀夫 医師:患者さんのフリガナと名前を入れて、性別・住所…
新型コロナでは全ての感染者を特定する「全数把握」の仕組みが取られていて、患者一人ひとりの名前や住所・電話番号などを、医療機関が打ち込まなければいけない。
鈴木内科小児科医院・鈴木紀夫 医師:1例につき何分かはかかる。発熱外来で40~50例見ているとすると、それだけでもかなり時間を食う。ドクターはみんな限界までやっている
この全数把握に対し、現場の負担軽減につながるとされているのが「定点把握」だ。指定された一部の医療機関のみ報告を上げる仕組みで、季節性インフルエンザなどで適用されている。
しかし、正確な流行状況をつかみにくく、リスクの高い患者の情報を共有しにくいなどのデメリットもある。
新潟大学大学院の高橋昌特任教授は、全数把握の見直しは必要としつつも、そこに向けた課題を整理していく必要があると強調する。
新潟大学大学院・高橋昌 特任教授:全数把握をしないことによって保健所などの負担は当然減るが、新型コロナ患者の数は絶対増えるし、患者が医療機関に何のトリアージ(優先順位の振り分け)もなく押しかけると、かえって医療崩壊を招く
いかに現場の負担を減らしながら感染を抑え込むか。8月19日、国会の閉会中審査では…
立憲民主党・長妻昭 衆院議員:全数把握の簡略化は至急やっていただきたい
加藤勝信 厚労相:現状こういう状況ですから、できるだけ速やかな対応をできるようにしていきたい
全数把握見直しの方針が示されたが、医療現場の負担にならない対応が求められる。
(NST新潟総合テレビ)