香川県三豊市沖でナマコを密漁したとして、坂出海上保安署が、多度津町の漁師ら2人を漁業法違反(特定水産動植物の採捕)と県漁業調整規則違反(禁止区域操業)の両容疑で再逮捕していたことが、捜査関係者への取材でわかった。
ナマコは高級食材で「黒いダイヤ」とも呼ばれ、密漁が問題化。対策が進められてきたが、識者は更なる取り締まり強化の必要性を指摘する。(徳永翔太、足立壮、中山真緒、黒川絵理)
再逮捕されたのは、同町の漁師の男(23)と、丸亀市の塗装工の男(24)。2人は操業が禁止された多度津町沖の海上で2月5日の夜、小型漁船で底びき網を使ってナマコを密漁したとして、両容疑で3月13日に逮捕されていた。
捜査関係者によると、2人は1月下旬と2月上旬、操業が禁止された三豊市沖合で密漁をした疑い。3月30日に再逮捕された。塗装工の男はその後、釈放されたという。
漁師の男が船でナマコを取っている間、塗装工の男が陸地から海上保安署の巡視艇を見張り、無線機で連絡を取っていたという。
同署は今月7日、免許を受けずに無線局を開設したとして、漁師の男を電波法違反容疑で追送検した。
2人は、密漁したナマコ数百キロ(数十万円相当)を三豊市詫間町の市場に卸していたとみられる。
ナマコの密漁が後を絶たない。昨年12月には、違法な漁獲を防止する「水産流通適正化法」が施行。市場に出回るナマコに番号を付け、取引記録を追跡し、不正な流通を監視できるようになった。しかし、今回のような「漁師の密漁は想定外」(水産庁)という。
ナマコは近年、高級食材として価格が高騰。高松市によると、3月の1キロ当たりの取引価格は、4年前の倍近い1730円。国内では酢の物などとして食される。中国では、健康や美容にいいとして、乾燥ナマコが煮込み料理などに使われる。日本産が人気という。
ナマコは海岸近くの海底に密集しており、一度に大量に取ることができる。そのため、無秩序な捕獲は枯渇につながるとして、水産庁が規制を強化してきた。
しかし同庁などによると、全国でナマコの密漁の摘発は相次いでおり、2021年に35件。横ばい傾向が続く。一方、漁獲量は21年に5564トンで、前年比532トン減と減少傾向。密漁を防ぎきれていないことが一因とみられる。
同庁によると、密漁は暴力団の資金源になっているケースもあるという。そうした中、反社会的勢力の流通網からの排除の必要性が指摘されていた。
そこで昨年末に施行された水産流通適正化法は、ナマコを取引する漁業者や流通業者らに、農林水産省への届け出を義務づけ。取引時に16桁の漁獲番号を付けて取引記録を保存させ、「出所不明」のナマコの不正流通を防ぐ対策を講じた。
ただ、容疑者は漁師のため、密漁したナマコに漁獲番号を付け、市場に卸せていたという。水産法政策に詳しい学習院大の阪口功教授は「何度も密漁を繰り返すような漁業者は、漁業権を取り消せるようにするなど罰則の強化も必要では」と指摘している。