大型スピーカーで迷惑爆音「音響族」、外観は普通車で警察「摘発難しい」…派手な装飾車消え

神奈川県警は、車に取りつけた大型スピーカーで爆音を響かせる「音響族」の対応に苦慮している。
これまでは派手な装飾車が多く、違法改造などを取り締まってきたが、外観は普通の車に音響装置を搭載し、集合場所でドアを開けて大音を発するように姿を変えている。周辺から苦情や不安の声も上がるなか、摘発逃れともみられる行為に、担当者は「音だけで取り締まるのは難しい現実がある」と気をもみながら警戒する。(石塚柚奈)
■検問抜ける
「姿を変えた音響族を見抜くのは難しい――」
大型連休や花火大会中に活動の活発化も想定され、横浜水上署交通地域課の担当者は苦悩する。
同署によると、昨年の大みそかから今年の元日にかけて、横浜市西区のみなとみらい地区の国際橋では、音響族の車6台が5分ほどにわたって大音量の音楽を流した。見物に訪れた通行人ら約100人が踊り出すなど一帯は騒然となった。周辺では計16台の音響族が確認されていた。
ただ、派手な電飾を施したり、車高を低くしたりした違法とみられる改造車は極めて少なく、大半が外観は普通のワンボックスカーなどで、トランクや後部座席に大型スピーカーが積み込まれていた。
県警は国際橋、万国橋、新港橋の3か所を約40人態勢で警戒していたが、音響族の6台はいずれも検問を通過していた。
■場所変えて
音響族は1989年頃、横浜市鶴見区の大黒パーキングエリアに集まるようになったのが初めとされる。毎週末、全国の音響族が集まるようになったが、対策に乗り出した県警は2015年から週末の夜間を閉鎖した。その後はみなとみらい地区に場所を移し、クリスマスなど人出が多い日に出現するようになった。
みなとみらい地区は観光客も多く、高級ホテルの担当者は「4年ほど前から宿泊客のクレームが増えている。だが、施設外の騒音には何もできず、警察に通報するしかない」と嘆く。県警によると、音響族に関する通報は21年に122件、22年に65件あった。
■迷惑条例違反でも罰則なく
横浜水上署によると、県迷惑行為防止条例(深夜に不安を覚えさせる行為の禁止)に違反するとみられるが罰則はない。県拡声機暴騒音規制条例の規定(6か月以下の懲役または20万円以下の罰金)に抵触する可能性もあるが、音響族は複数の車が一斉にスピーカーで音を流すため、どの車がどれほどの音量を出しているかの特定は困難という。
県警は音響族に違法改造車が多いことに着目し、国土交通省と協力して「整備命令」を出して取り締まってきた。だが、改造車が減少し、これまでの摘発方法が通用しなくなっている。
同署の担当者は、「騒音だけでなく、音響族は渋滞や事故の原因、緊急車の通行の妨げになる。取り締まるために条例の整備が必要だ」と指摘する。