相次ぐ外交官ナンバー車の違反…日本政府が各国の大使館に警告も23%「支払い応じず」 プライベートの“外交特権”悪用疑いも浮上

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外交官ナンバーの車による駐車違反が常習化し、日本政府の対抗措置が一部の国に無視されている実態が、FNNの取材で明らかになった。外務省が各国の大使館に送った240枚の内部文書を独自を分析すると、制度の課題が浮き彫りとなった。
240枚に上る文書。日本政府が、国内にある外国の大使館に宛てて送った、いわば“警告書”だ。
青色のプレートの外交官ナンバーによる駐車違反は、最近も、都心で目撃されている。頻繁に繰り返す悪質な車について、外務省は「ガソリン免税を取り消すことになる」と支払いを催促したが、一部の国が取った対応は…「無視」だった。
記者:外交官ナンバーの車。東京の大通り、飲食店の前で駐車違反をしています。パーキングチケットを使ってますが、過去の日付ですね。今日のものではないです。
束のように置かれたパーキングチケット。示されているのは「9月16日」のもの。
しかし、取材したのは19日で、3日前のものだ。
記者:運転手は乗っていますが、外交官ナンバー4台が並んで駐車違反をしています。左側が通れなくなっていて邪魔になっています。
運転手がいれば、5分以内の積み卸しなどの場合は、駐車違反とはなりませんが、4台とも長時間の駐車だった。
外交官ナンバーの車をめぐっては、高速道路の路肩や、バス専用レーンの走行など、国を問わず法令違反をする様子が映像に捉えられてきた。
なかでも目につくのが駐車違反だ。
記者:駐車違反ですよね?
南アジアの国の運転手:はいはい、だから何?そこで食事していたんだ。名刺をよこせ、訴えてやる!
外交官ナンバーの車も駐車違反のステッカーは貼られるが、外交官は、違反金を支払わず無視してもウィーン条約に基づく外交特権で、刑事・民事ともに裁かれず裁判や差し押さえを免除される。
違法行為は、駐車違反に留まらない。
東京・六本木で、放置駐車をして、飲食店に入ったロシアの外交官。ジョッキに注がれた金色の液体、生ビールだ。
グイッと飲み干した外交官。車をとめて40分後、運転しようと車に戻ってきた。
記者:飲んだのは?
ロシア外交官:あれは…“ウーロン茶”
ウーロン茶だったとウソをついたものの、記者に酒を飲んでいる姿を見られたことを知り、言い逃れができないと悟ったのか…
記者:ビールを飲んだのですね?
ロシア外交官:えーと。はい、少し…
かつて、日本で飲酒死亡事故をおこしたこともある外国の外交官の車。あわや飲酒運転となるところだった。
駐車違反で、特に目立つのが…頭に“79”の数字が付いた、ロシアの車。外交特権による違反金の踏み倒しの件数が最も多かったのも、ロシアだった。
警察庁から独自に入手したリストによると、過去の違反に対する踏み倒しは、国別ではロシアのワースト1位が続いていて、2023年度は2418件。過去6年で最悪となっていた。全体に占める割合も、前の年度から4ポイント増え、63%と最悪に。
2022年にロシア大使は「状況を大幅に改善した。我々はとても厳しくしている」と繰り返した一方、言い逃れとも取れる言葉を述べていた。
ガルージン駐日大使:間違いをするのはロシア大使館だけではないはずだ
FNNの報道を受け、外交特権による踏み倒しを防ぐため、外務省は2021年に対策を打ち出した。常習的な違反で、違反金の支払いに応じない場合、外交官のみに許されるガソリン免税を認めないという内容だ。
以降、外交官ナンバーの駐車違反の件数は減少傾向にあるが、いまも東京都心などで、違反を目撃することがある。
記者:外交官ナンバーの車が駐車違反をしています。大通りでカーブになっているので、ちょっと危ないですね。車よけるように右を走っています。
スーパーでの買い出しから戻ってきた運転手は…。
記者:日本政府の対抗措置を知っていますか?ガソリン(免税)証明書が得られなくなる
運転手:あー!ごめんなさい。
運転手は、この後「次は気をつける」と言って、車で去って行った。
FNNが情報公開請求で外務省から新たに入手した文書によると、外交官ナンバーの車による常習的な放置駐車違反64件について、国内の大使館に対し、対抗措置を示したうえで速やかに違反金を支払うよう求めている。
しかし、外務省によると、およそ4分の1(23%)の15件について、支払いに応じなかったという。
日本の対抗策が無視された形だ。
文書では、国名について「相手国との信頼関係を損なう恐れがある」として、黒く隠されている。
記載された日付から、違反の頻度についても明らかになった。
ある国の外交官ナンバーは、東京で2ヶ月間に4回、放置駐車違反を繰り返していた。また、ある領事館の車は、大阪と兵庫で、半年で4件の違反を繰り返し、うち3件は、土曜日だった。
それぞれの違反(310件)を分析したところ、土曜日が最も多く、3分の1(108件)が、「土曜・日曜・祝日」だったことも分かり、プライベートでの特権悪用の疑いも浮上した。
ウィーン条約は、外交特権の目的を「個人に利益を与えることにあるのではない」としているが、悪用してもお咎めがある訳ではないため、条約自体にも問題があるともいえる。
踏み倒しについて外務省は、「ほとんどの国が支払うようになっている」としつつ、「今後の措置についてはいかなる方策が効果的なのかとの観点から、不断に検討して行きたい」とコメントした。
海外では踏み倒しに対し、プレートの返還を求めるという強力な対抗策で、ほぼ解消したケースもある。外務省には、より実効性の高い対応が求められている。
(「イット!」11月3日放送より)

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