教委いじめ担当部署「全員が教員出身」53%、「身内意識で対応甘くなる」指摘も…読売調査

全国主要都市の教育委員会の5割超で、いじめ問題を担当する職員全員が教員出身者で構成されていることが、読売新聞の調査でわかった。
教委が適切に対応せず、深刻な事態に発展する事例が絶えない背景に、調査担当に教員出身者が多く、「身内意識」や第三者の目が入らないことから、初期段階でいじめを認めないことがあると指摘されてきた。
読売新聞の調査は5~7月、道府県庁所在市、東京23区、政令市、中核市の計109自治体に実施。いじめ担当部署の職員構成(4月1日現在)などを尋ね、全自治体から回答を得た。
その結果、各教委でいじめ問題を担当する班や係の職員は10人前後が多く、職員が「全員教員出身者」だったのは58自治体で53・2%を占めた。
教委は行政職員が大半を占める。学校現場から異動してきた教員出身者をいじめ担当に配置する理由(複数回答)は「学校現場を知っており、適切な指導を期待できる」(99・1%)が最も多く、「問題発生時、すぐに学校現場に入れる」(78・9%)と続いた。
一方、15自治体(13・8%)が教員出身者の配置に「デメリットがある」とし、うち6自治体が教員以外に法令に詳しい行政職員やカウンセラーを配置していた。
いじめ防止対策推進法では、深刻ないじめを「重大事態」と定め、学校や教委に調査組織の設置を義務づけているが、教委が適切に対応せず、事態が悪化する事例は少なくない。
北海道旭川市の中学2年女子生徒が昨年3月に凍死体で見つかった問題では、女子生徒がいじめに苦しみ、学校に「死にたい」と電話したが、学校はいじめではないと判断。市教委も調査しなかった。担当した職員は12人全員が教員出身者だった。
女子生徒の死後、市教委は対応の不備を認め、遺族に謝罪した。市教委の第三者委員会は今月、最終報告で「市教委が積極的に関与すべきだった」と批判した。
千葉大の藤川大祐教授(教育方法学)は「現場に詳しい教員出身者は一定数必要だが、身内意識から対応が甘くなり、調査の中立性や専門性に欠ける」と指摘。「法令に詳しく、客観的に対応できる行政職員を置き、教員出身者に目を光らせるべきだ」と強調した。
◆重大事態=2013年施行の「いじめ防止対策推進法」で定義された。いじめで子どもの生命や心身、財産に大きな被害が生じた疑いがある事案や、長期間の不登校になった疑いのある事案を指し、教育委員会や学校に調査組織の設置を義務づけている。文部科学省のガイドラインでは、被害児童生徒や保護者から申し立てがあった場合、重大事態が発生したものとして調査に当たることを求めている。