バカ息子の更迭を決めたのも束の間、今度は巨大宗教団体が岸田政権の前に立ちはだかる。自公が候補者調整を進める中、学会の大物幹部が討伐せんとする“仏敵”は、自民党の萩生田光一政調会長(59)。積年のひずみが新たな亀裂を生み、もはや修復不可能な段階に……。
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【ちょっと見てられない画像、12枚】ご自慢の「4代目」とインスタライブでハシャぐ岸田夫妻。「初デートはどこ?」との質問に答えて、フリップで回答(岸田総理のInstagramより) サミットの“成果”を見事に打ち消した「バカ息子」をさすがに放置できなかったのか。 5月29日、岸田文雄総理(65)の長男で首相秘書官の翔太郎氏が辞職すると発表された。本誌(「週刊新潮」)が報じた総理外遊先での公用車による観光三昧問題に続き、「週刊文春」が首相公邸の階段に寝そべったり、会見ごっこをするなど大はしゃぎする翔太郎氏と親族の写真を掲載し、レッドカードとなった。
萩生田光一氏 官邸関係者が言う。「あの写真にはさすがに官邸の人間もあきれていて、松野博一官房長官は“ああいう行動は控えるべきだ”と苦言を呈していました。さらに28日に発表された日経新聞とテレビ東京による世論調査で内閣支持率が5ポイントも下がってしまった。サミットで上がった支持率が戻った格好です」 さる官邸幹部も周囲に、「翔太郎の件が支持率下落の一因だ」 と語っているというが、加えてこの幹部は自民党と公明党の候補者調整の問題についても危機意識を強めていた。「自公の信頼関係は地に落ちた」 自公問題の渦中の人物となったのが、創価大学など創価学会の関連施設が多く集まり、「聖地」とされる八王子を地盤にする萩生田光一政調会長だ。現在は党三役に納まる萩生田氏は遡ること四十余年、“都の西北”を肩で風を切り闊歩するバンカラ高校生として名をはせていた。早稲田実業高等部に在籍していた際、別の高校の生徒と乱闘に及ぶなどして2度の停学処分を食らう“番長”として君臨していたのだ。その萩生田氏が時を経てけんかを売ったのは、公称で800万世帯以上の信者数を誇る創価学会とその学会が支持する公明党だ。 しかし、今度ばかりは相手が悪かった――。「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」 公明党の石井啓一幹事長が会見でそう語ったのは5月25日のこと。 自民党と公明党は、衆院小選挙区の「10増10減」に伴う候補者調整を行っていた。石井幹事長の言葉は、両者の交渉がまさに「決裂」したことを意味していた。 政治部デスクによれば、「創価学会は近年、信者の高齢化による集票力の低下が深刻です。昨年の参院選では比例で800万票を目標としていたにもかかわらず、実際の得票は200万票近く少ない約618万票でした。さらに、日本維新の会が勢力を伸ばし、“常勝関西”と呼ばれた大阪の小選挙区も落とす可能性が出てきた。そこで、選挙区が増える東京や埼玉などで新たな公明党候補を擁立させようとしていたのです」驚くほど強硬だった萩生田氏 都内で公明党が狙ったのは、練馬区の一部から成る東京28区だった。「しかし自民党サイドは、すでに内定している候補者がいるとして、公明党候補の擁立を認めませんでした。これに公明党が猛反発したのです」(同) 結果、公明党は自民党への苛烈な“措置”を通達した。・都内小選挙区の自民党候補を推薦しない・都議選や首長選も協力しない・都議会での協力関係も解消する などである。1選挙区あたりの学会・公明党票は1万~2万票とされる。仮に都内の自民党候補が学会の支援を受けることができなければ、小倉將信少子化大臣など、接戦を辛くも制してきた複数の自民党議員が野党候補に逆転を許すことになる。「実はこの28区問題について、萩生田さんが驚くほど強硬でした」 と語るのは都連所属の自民党議員である。「28区には、八王子の医師で萩生田さんの支援者だった安藤高夫・前衆院議員を自民党候補として立てています。支援者だけに、公明党が独自候補を擁立したいと要求しても萩生田さんが安藤さんを外さないのでは、といわれています」背後に森元総理 さらに、創価学会と公明党を激昂させたのは、足立区の一部と荒川区で構成される東京29区の問題だ。 今年1月、東京29区に公明党から岡本三成衆院議員が立候補する方針が固まっった。ところが、そのことを公明党が発表すると、地元の自民党都議らが茂木敏充幹事長へ抗議の意を表明するため、党本部を訪れたのである。 地元政界関係者が言う。「先頭に立ったのは足立区を地盤とする高島直樹都連幹事長でした。足立区は太田昭宏前公明党代表や岡本氏など、公明党の候補者が擁立されてきた土地です。そのため、地元では“次は自民党候補を”という声が以前から上がっていた。岡本氏の立候補は高島さんからすると、寝耳に水で承服できなかったのです」 公明党に対抗しようとしたのか、こんな動きが。「高島さんは自民党候補擁立へ向け動いていました。2人ほど名前が挙がっていて、一人は東京都医師会幹部の親類という都内の医師。もう一人は高島さんに近い墨田区選出の自民党都議、川松真一朗さんです。実際、高島さんは川松さんに対し、“いつでも公認してやる”と伝えていました」(同) 川松氏の地盤の墨田区は、うちわを選挙区の有権者に配った問題で14年、法相を辞任した松島みどり氏が衆院選で当選を重ねている。関係者が続ける。「しかし、松島さんは議員としての展望が見えないのに国政にしがみつき、頑として議席を譲ろうとしない。川松さんは“地元は墨田”という思いがあるものの、29区から出馬する可能性が取り沙汰されてきたんです」 実はこの動きの後ろ盾となっている人物がいた。森喜朗元総理(85)である。「川松さんは元テレビ朝日アナウンサーで、学生時代からラグビーに打ち込んだラガーマン。森さんはラグビーつながりもあり、川松さんが政界進出してから、ずっとかわいがってきました。当然、川松さんを国会議員にしたいという考えが強くあり、党幹部や萩生田さんに“面倒を見てやってくれ”と伝えていると聞きます」(同)“本当にその対応でいいのか”と念押し 森元総理は萩生田氏が所属する清和会(安倍派)に絶大な影響力を及ぼしている「ドン」である。萩生田氏も頼まれれば、ご意向に背くわけにいくまい。 こうした28区と29区の一連の問題が火種となり、学会と公明党を激怒させることになってしまった。 怒りの矛先は都連会長でもある萩生田氏に向いている。急先鋒となっているのは創価学会の大物幹部、佐藤浩副会長である。 1961年生まれの佐藤氏は早稲田大学商学部卒業後、85年に学会本部入りした。 創価学会に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏が解説する。「学会本部に就職すると、政治を担当するようになり、菅義偉前総理と親交を深めてきました。学会内部でエリートコースを歩んだ佐藤氏は近年、菅前総理とのパイプを生かし、副会長として自民党との交渉を含めた政界との実務を掌握していったのです」 実は、自公間の候補者調整でも、茂木幹事長らとやり取りしていたのは他ならぬ佐藤氏だった。 学会関係者がささやく。「佐藤さんは党幹部の中でも28区と29区で譲らない萩生田さんに対する怒りをあらわにしていました。周囲に“あいつだけは勘弁ならねぇ”とぶちまけていたそうです。佐藤さんは萩生田さんに“本当にその対応でいいのか”と念押ししていたのに、何も変わらなかった。佐藤さんは“こちらが折れると思ってなめているんだろう”と怒り心頭です」 もはや相手を“仏敵”と言わんばかりだが、学会と萩生田氏とのあつれきには発火点があった。 統一教会との問題だ。“茂木と佐藤が…” 本誌は昨年、参院選の期間中に、当時自民党の候補者だった生稲晃子氏を統一教会の関連施設に萩生田氏が連れて行き、過去にも教会の関連施設で演説などを行っていたと、氏と教会の蜜月ぶりを報じた。「八王子を地盤とする萩生田さんの前回衆院選の得票数は15万票ほどで、選挙区の学会票は4万4千票あるといわれています。09年には落選経験もある萩生田さんは、学会に頼り切りの“一本足打法”の現状を変えようと、統一教会にも触手を伸ばしてきたのです。しかし、それが週刊新潮の報道で露見し、学会側から不信感を持たれることになりました。そうした中での今回の騒動だったのです」(自民党関係者) 佐藤氏は他の自民党幹部への不満も漏らしている。前出と別の学会関係者は、「選対委員長の森山裕さんのことです」 と名指しし、理由を語る。「森山さんは選挙区で学会の支援を受けておらず、交渉の中で佐藤さんの要求を突っぱねる場面もあった。茂木さんが佐藤さんの要求をのもうとすると、森山さんが“茂木と佐藤が手を組みやがった”などと陰で吹聴することもありました。それが佐藤さんの耳に入り、森山さんに怒っていたんです」 パートナーだったはずの両者が憎悪すらぶつけ合う。自公関係のかかる状況に、佐藤氏とじっこんの菅前総理も頭を抱えているという。解散総選挙の可能性は ボロボロになってしまった自公関係。先の自民党関係者は萩生田氏の狙いについて、こう語る。「佐藤さんはこれまでも自民党を脅しすかしで動かしてきました。例えば、20年、広島3区で公明党の斉藤鉄夫副代表を擁立した際、自民広島県連が猛反発すると佐藤さんは広島の宏池会議員に電話し、“支援しなければそちらも応援しない”と半ば脅迫した。そうした強硬姿勢には公明党内にも批判の声があり、萩生田さんは今回の要求をはねのけることで、佐藤さんの横暴を止めようとしたのでは。ただ、他の選挙協力までほごにされた。計算外の事態に陥ってしまった格好です」 萩生田事務所に聞くと、「東京都連として直接選挙区協議に加わっておりませんが、(中略)東京28区には選挙区支部長候補が内定しており、調整は難しいという報告をしております」 翔太郎氏の一件で支持率が下がる中、解散総選挙の可能性はあるか。 政治ジャーナリストの青山和弘氏によれば、「今回、公明党との関係が悪化したことで“解散をしにくくなった”と自民党幹部は話しています。岸田総理は自公関係について“党でうまくやってほしい”と周囲に漏らしていますが、選挙はどこかでやらなければなりません。翔太郎さんを更迭し、政権への逆風を和らげようとする一方で、野党から内閣不信任案が出る可能性も高く、政治的変数が多い状況になっています。解散できるか、状況を慎重に見極めてからになるでしょう」 これまで「学会票」という甘い汁を吸い続けた自民党の自業自得とはいえ、選挙で同士が討ち死にしていくことは必至。 いくら勇ましいことを言っていても、選挙に落ちれば“ただの人”なのだが――。「週刊新潮」2023年6月8日号 掲載
サミットの“成果”を見事に打ち消した「バカ息子」をさすがに放置できなかったのか。 5月29日、岸田文雄総理(65)の長男で首相秘書官の翔太郎氏が辞職すると発表された。本誌(「週刊新潮」)が報じた総理外遊先での公用車による観光三昧問題に続き、「週刊文春」が首相公邸の階段に寝そべったり、会見ごっこをするなど大はしゃぎする翔太郎氏と親族の写真を掲載し、レッドカードとなった。
官邸関係者が言う。
「あの写真にはさすがに官邸の人間もあきれていて、松野博一官房長官は“ああいう行動は控えるべきだ”と苦言を呈していました。さらに28日に発表された日経新聞とテレビ東京による世論調査で内閣支持率が5ポイントも下がってしまった。サミットで上がった支持率が戻った格好です」
さる官邸幹部も周囲に、
「翔太郎の件が支持率下落の一因だ」
と語っているというが、加えてこの幹部は自民党と公明党の候補者調整の問題についても危機意識を強めていた。
自公問題の渦中の人物となったのが、創価大学など創価学会の関連施設が多く集まり、「聖地」とされる八王子を地盤にする萩生田光一政調会長だ。現在は党三役に納まる萩生田氏は遡ること四十余年、“都の西北”を肩で風を切り闊歩するバンカラ高校生として名をはせていた。早稲田実業高等部に在籍していた際、別の高校の生徒と乱闘に及ぶなどして2度の停学処分を食らう“番長”として君臨していたのだ。その萩生田氏が時を経てけんかを売ったのは、公称で800万世帯以上の信者数を誇る創価学会とその学会が支持する公明党だ。
しかし、今度ばかりは相手が悪かった――。
「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」
公明党の石井啓一幹事長が会見でそう語ったのは5月25日のこと。
自民党と公明党は、衆院小選挙区の「10増10減」に伴う候補者調整を行っていた。石井幹事長の言葉は、両者の交渉がまさに「決裂」したことを意味していた。
政治部デスクによれば、
「創価学会は近年、信者の高齢化による集票力の低下が深刻です。昨年の参院選では比例で800万票を目標としていたにもかかわらず、実際の得票は200万票近く少ない約618万票でした。さらに、日本維新の会が勢力を伸ばし、“常勝関西”と呼ばれた大阪の小選挙区も落とす可能性が出てきた。そこで、選挙区が増える東京や埼玉などで新たな公明党候補を擁立させようとしていたのです」
都内で公明党が狙ったのは、練馬区の一部から成る東京28区だった。
「しかし自民党サイドは、すでに内定している候補者がいるとして、公明党候補の擁立を認めませんでした。これに公明党が猛反発したのです」(同)
結果、公明党は自民党への苛烈な“措置”を通達した。
・都内小選挙区の自民党候補を推薦しない
・都議選や首長選も協力しない
・都議会での協力関係も解消する
などである。1選挙区あたりの学会・公明党票は1万~2万票とされる。仮に都内の自民党候補が学会の支援を受けることができなければ、小倉將信少子化大臣など、接戦を辛くも制してきた複数の自民党議員が野党候補に逆転を許すことになる。
「実はこの28区問題について、萩生田さんが驚くほど強硬でした」
と語るのは都連所属の自民党議員である。
「28区には、八王子の医師で萩生田さんの支援者だった安藤高夫・前衆院議員を自民党候補として立てています。支援者だけに、公明党が独自候補を擁立したいと要求しても萩生田さんが安藤さんを外さないのでは、といわれています」
さらに、創価学会と公明党を激昂させたのは、足立区の一部と荒川区で構成される東京29区の問題だ。
今年1月、東京29区に公明党から岡本三成衆院議員が立候補する方針が固まっった。ところが、そのことを公明党が発表すると、地元の自民党都議らが茂木敏充幹事長へ抗議の意を表明するため、党本部を訪れたのである。
地元政界関係者が言う。
「先頭に立ったのは足立区を地盤とする高島直樹都連幹事長でした。足立区は太田昭宏前公明党代表や岡本氏など、公明党の候補者が擁立されてきた土地です。そのため、地元では“次は自民党候補を”という声が以前から上がっていた。岡本氏の立候補は高島さんからすると、寝耳に水で承服できなかったのです」
公明党に対抗しようとしたのか、こんな動きが。
「高島さんは自民党候補擁立へ向け動いていました。2人ほど名前が挙がっていて、一人は東京都医師会幹部の親類という都内の医師。もう一人は高島さんに近い墨田区選出の自民党都議、川松真一朗さんです。実際、高島さんは川松さんに対し、“いつでも公認してやる”と伝えていました」(同)
川松氏の地盤の墨田区は、うちわを選挙区の有権者に配った問題で14年、法相を辞任した松島みどり氏が衆院選で当選を重ねている。関係者が続ける。
「しかし、松島さんは議員としての展望が見えないのに国政にしがみつき、頑として議席を譲ろうとしない。川松さんは“地元は墨田”という思いがあるものの、29区から出馬する可能性が取り沙汰されてきたんです」
実はこの動きの後ろ盾となっている人物がいた。森喜朗元総理(85)である。
「川松さんは元テレビ朝日アナウンサーで、学生時代からラグビーに打ち込んだラガーマン。森さんはラグビーつながりもあり、川松さんが政界進出してから、ずっとかわいがってきました。当然、川松さんを国会議員にしたいという考えが強くあり、党幹部や萩生田さんに“面倒を見てやってくれ”と伝えていると聞きます」(同)
森元総理は萩生田氏が所属する清和会(安倍派)に絶大な影響力を及ぼしている「ドン」である。萩生田氏も頼まれれば、ご意向に背くわけにいくまい。
こうした28区と29区の一連の問題が火種となり、学会と公明党を激怒させることになってしまった。
怒りの矛先は都連会長でもある萩生田氏に向いている。急先鋒となっているのは創価学会の大物幹部、佐藤浩副会長である。
1961年生まれの佐藤氏は早稲田大学商学部卒業後、85年に学会本部入りした。
創価学会に詳しいジャーナリストの乙骨正生氏が解説する。
「学会本部に就職すると、政治を担当するようになり、菅義偉前総理と親交を深めてきました。学会内部でエリートコースを歩んだ佐藤氏は近年、菅前総理とのパイプを生かし、副会長として自民党との交渉を含めた政界との実務を掌握していったのです」
実は、自公間の候補者調整でも、茂木幹事長らとやり取りしていたのは他ならぬ佐藤氏だった。
学会関係者がささやく。
「佐藤さんは党幹部の中でも28区と29区で譲らない萩生田さんに対する怒りをあらわにしていました。周囲に“あいつだけは勘弁ならねぇ”とぶちまけていたそうです。佐藤さんは萩生田さんに“本当にその対応でいいのか”と念押ししていたのに、何も変わらなかった。佐藤さんは“こちらが折れると思ってなめているんだろう”と怒り心頭です」
もはや相手を“仏敵”と言わんばかりだが、学会と萩生田氏とのあつれきには発火点があった。
統一教会との問題だ。
本誌は昨年、参院選の期間中に、当時自民党の候補者だった生稲晃子氏を統一教会の関連施設に萩生田氏が連れて行き、過去にも教会の関連施設で演説などを行っていたと、氏と教会の蜜月ぶりを報じた。
「八王子を地盤とする萩生田さんの前回衆院選の得票数は15万票ほどで、選挙区の学会票は4万4千票あるといわれています。09年には落選経験もある萩生田さんは、学会に頼り切りの“一本足打法”の現状を変えようと、統一教会にも触手を伸ばしてきたのです。しかし、それが週刊新潮の報道で露見し、学会側から不信感を持たれることになりました。そうした中での今回の騒動だったのです」(自民党関係者)
佐藤氏は他の自民党幹部への不満も漏らしている。前出と別の学会関係者は、
「選対委員長の森山裕さんのことです」
と名指しし、理由を語る。
「森山さんは選挙区で学会の支援を受けておらず、交渉の中で佐藤さんの要求を突っぱねる場面もあった。茂木さんが佐藤さんの要求をのもうとすると、森山さんが“茂木と佐藤が手を組みやがった”などと陰で吹聴することもありました。それが佐藤さんの耳に入り、森山さんに怒っていたんです」
パートナーだったはずの両者が憎悪すらぶつけ合う。自公関係のかかる状況に、佐藤氏とじっこんの菅前総理も頭を抱えているという。
ボロボロになってしまった自公関係。先の自民党関係者は萩生田氏の狙いについて、こう語る。
「佐藤さんはこれまでも自民党を脅しすかしで動かしてきました。例えば、20年、広島3区で公明党の斉藤鉄夫副代表を擁立した際、自民広島県連が猛反発すると佐藤さんは広島の宏池会議員に電話し、“支援しなければそちらも応援しない”と半ば脅迫した。そうした強硬姿勢には公明党内にも批判の声があり、萩生田さんは今回の要求をはねのけることで、佐藤さんの横暴を止めようとしたのでは。ただ、他の選挙協力までほごにされた。計算外の事態に陥ってしまった格好です」
萩生田事務所に聞くと、
「東京都連として直接選挙区協議に加わっておりませんが、(中略)東京28区には選挙区支部長候補が内定しており、調整は難しいという報告をしております」
翔太郎氏の一件で支持率が下がる中、解散総選挙の可能性はあるか。
政治ジャーナリストの青山和弘氏によれば、
「今回、公明党との関係が悪化したことで“解散をしにくくなった”と自民党幹部は話しています。岸田総理は自公関係について“党でうまくやってほしい”と周囲に漏らしていますが、選挙はどこかでやらなければなりません。翔太郎さんを更迭し、政権への逆風を和らげようとする一方で、野党から内閣不信任案が出る可能性も高く、政治的変数が多い状況になっています。解散できるか、状況を慎重に見極めてからになるでしょう」
これまで「学会票」という甘い汁を吸い続けた自民党の自業自得とはいえ、選挙で同士が討ち死にしていくことは必至。
いくら勇ましいことを言っていても、選挙に落ちれば“ただの人”なのだが――。
「週刊新潮」2023年6月8日号 掲載