安倍晋三・元首相が2022年、奈良市で演説中に銃撃され死亡した事件で、殺人罪などに問われた無職山上徹也被告(45)の第9回公判が19日、奈良地裁であり、前日に続き被告の妹の証人尋問が行われた。
世界平和統一家庭連合(旧統一教会)を信仰する母親に苦しんだ「宗教2世」としての生い立ちを振り返り、「子どもの私たちにはどうすることもできなかった。事件は徹也の絶望と苦悩の果てに起きた」と涙ながらに語った。
妹は被告の4歳下で、弁護側証人として出廷。前日と同様、遮蔽(しゃへい)板に囲まれ、傍聴席からは姿が見えなかった。
弁護側の尋問に対する説明によると、母親が教団への多額の献金で破産した02年頃、クレジット会社から督促状が届いたり、お年玉をためていた通帳の残高がゼロになったりした。
母親に大学進学の希望を伝えたが、「お金がないから自分でどうにかして」と突き放された。大人になると、母親から教団施設のある韓国への渡航費などを何度も求められたという。
妹は「(家を出てから)母が連絡してくるのは金の無心くらいだった」と振り返った。15年に一番上の兄が自殺した直後には、普段感情を出さない被告が遺体のそばで「俺のせいだ」と泣いていたとも証言した。
妹は、母親の部屋に安倍氏が表紙を飾る教団傘下組織の機関誌が置かれていたことを明かし、被告が安倍氏を狙ったことについて「特に不思議ではなかった」と述べた。
検察側の反対尋問も行われた。妹は、被告から勉強を教えてもらったと述べ、「大好きなお兄ちゃんでした」と証言。教団への復讐(ふくしゅう)を考えたことがあるかと問われ、「復讐するよりも関わりたくない」とした一方、「もしもできたなら、していたかもしれない」と述べた。
20日から被告人質問が行われる予定。