《“前リュック論争”だけじゃない》ラッシュの電車内で本当に迷惑な人たち 扉付近で動かない「狛犬ポジション」、「肩や肘にかけたままのトートバッグ」

通勤や通学時の電車内リュックマナーが話題だ。リュックサックなど大きなカバンを持っている場合は、車内スペースのゆずりあいをしてくださいと車内アナウンスが流れ、それに応じてリュックサックを腹側に抱え直す”前リュック”にする人が多いが、それに対しても意味が無い、かえって邪魔、など様々な「マナー」を訴える声がSNSで飛び交っている。SNSで飛び交う電車マナーに対して、実際に通勤通学で電車を利用する人たちはどう思っているのか。ライターの宮添優氏が、リュックだけでなくトートバッグ、狛犬ポジションなどに悩まされている利用者の本音をレポートする。
【写真】狛犬ポジションをとる人たちが決まって陣取る場所
* * *「テレビやSNSでも、最近では電車内でアナウンスまでされます。でも、本当に迷惑なのはリュックの人たちなんでしょうか?」
こう憤るのは、東京在住で、通勤のために毎日リュックを背負って「満員電車」を利用するという男性会社員(30代)。実は筆者も、両手が自由に使えるリュックを長年愛用しており、毎朝の通勤電車も利用するため、満員電車の中でリュックを背中に背負うことが周囲の客にどれだけ迷惑をかけるかは、十二分に理解しているし、混雑時は必ずリュックを背中側でなく、腹側にして乗り込む。
リュックの迷惑さについては、テレビワイドショーや雑誌、ネットでも散々取り上げられたためか、今や、都心の電車で「リュックを前に」は常識になりつつあるし、実際に「リュックは前で」とか「ほかのお客様の迷惑に」と車内アナウンスが続く。このことについて男性は、リュックよりも迷惑な人がいるのに、なぜリュックのことばかりやり玉にあがるのか、とこぼすのだ。
「リュックは確かに邪魔になることも多いでしょう。でも、トートバッグだって相当邪魔くさい。どんなに混んでいても肩からかけたり、肘からぶら下げっぱなし。よけたり、棚に荷物を載せようともしない人が多くて、周りの人にバンバン当たる。特に混雑時、トートバッグの角の部分が周囲の客に当たっていて危険なのに、全く無関心の人たちがいます。しかし言い出しにくい」(東京在住の会社員男性)
通勤通学で混雑し、ピリピリした雰囲気が漂う電車内で「そのカバンを棚に置いてくれ」などとは言い出しにくい。万一、反論でもされた日には面倒な人と思われるだけでなく、場合によっては痴漢と間違われるかもしれず、我慢するしかないという男性会社員。取材を進めると、リュックのように表立って語られることはないが「本当に迷惑」な人たちの存在も浮かび上がってきた。
「身動きできないほどの混雑でもないのに、他のお客さんが乗り降りしようとしても”絶対に動かない”人がいます。本当に、磁石で床にくっつけられてるんじゃないかというくらい微動だにしない」
埼玉県在住の団体職員の女性(30代)も、毎朝通勤のために混雑する電車を利用しているが、この「絶対動かない人」には、いつも不快な思いをさせられていると嘆く。
「特に扉の近辺は、車内奧が空いていようと、いち早く降りたい、という人たちがひしめき合っていて邪魔になり、乗り降りがスムーズに出来ないこともあります。あとは、冷房の下も奪いにくる人がいます。去年の夏、冷房の下に偶然いたところ、大柄な男性に押しのけられたこともありますが、冷房の下から絶対に動かない人も、これからの季節は増えるはずです」(団体職員の女性)
女性は小柄(身長150センチ台前半)なため、こうした「絶対に動かない人」がいた場合、その都度、遠回りを強いられる。また、扉の両サイド部分のスペースを陣取り、どんなに車内が混んでも「テコでも動かない」ひとたちがいる。この位置は一部で「狛犬ポジション」と呼ばれている。出入り口近くをはじめ、自分のポジションを死守する人たちが出現することで、周囲の人々に不快と不便を押しつける結果となっているのだ。
一方で、逆に「動きすぎる人」の存在も、利用客に大きなストレスを与えているという声も聞こえてくる。都内在住の公務員の男性(40代)がいう。
「走行中の満員電車内を、どんな目的があるのか、行ったり来たりする人がたまにいます。混雑を押しのけていくから、ほとんど必ずといっていいほど、他の乗客とトラブルになっているんです。これをやるのはほとんどが男性。女性だと、衛生面が気になるのか、意地でも吊り革を触らない方も見かけます。スマホをじっと眺めつつ、吊り革に捕まらないものだから、周囲の人に当たりまくっている。それでも平気とばかり、スマホからは絶対に視線を外さないんですから」(公務員の男性)
今回は、満員電車通勤歴の比較的長そうな、30代以上の男女を中心に話を聞いた。電車内で不快に感じたり、迷惑だと思う他人の言動は、男女の性別、そして体つきによって多少の差はあったが、ここでとありあげた例については、ほぼ全員が見聞きしたり、迷惑行為だと感じているようであった。やはり、本当に迷惑な人は「リュック」の人だけ、ではなかったようだ。