仕事を引退すると心筋梗塞（こうそく）などの心疾患の発症リスクが下がるとの研究成果を、京都大や早稲田大などのチームが２６日発表した。
運動する機会の増加などが影響した可能性があるという。現役を続ける高齢者は積極的な対策が必要なことを示しており、論文が国際科学誌に掲載された。
チームは、退職した人と、高齢になっても働き続ける人とでどちらが心疾患にかかりやすいか調べるため、日本を含む３５か国の疫学調査を活用。５０～７０歳の男女約１０万人分のデータを比較し、加齢や健康状態が発症リスクに与える影響を統計学的手法で調整した。
その結果、退職した人の方が現役を続けた人よりリスクが２・２ポイント、ウォーキングなどの運動が不足するリスクも３ポイントそれぞれ低かった。仕事のストレスから解放されたり、運動する時間が生まれたりするためとみられるという。
佐藤豪竜（こうりゅう）・京都大助教は「社会の状況から定年退職の年齢が延びると考えられるので、働き続ける人ほど意識的に運動に取り組む必要がある」と話した。
川崎良・大阪大教授（公衆衛生学）の話「多国籍で大規模かつ、精緻（せいち）に研究した点で大変貴重な知見だ。高齢者の就労に関する議論には、労働力の確保だけでなく、健康をどう維持するかという視点も求められる」