北海道の道南・七飯(ななえ)町議会は今年3月21日、杉原太町長に対する問責決議案を採決の上賛成多数で可決した。一見すればただの出来事に思えるかもしれないが、杉原町長に問責決議案が出された背景にはある道の駅の「トイレの浄化槽」が大きく関係していた。(小林英介)
2018年、同町に道の駅「なないろ・ななえ」が開業した。無料で利用できる休憩スペースのほか、町の歴史を紹介するコーナーや農産品などの直売所もあるが、大きな問題になったのは私たちが日常でよく使う「トイレ」だった。
そもそも、排出物はトイレからつながった下水管を通して排出される。ところが、都市計画区域の影響などもあり、道の駅には下水管が未整備で、専用の浄化装置を通して浄化する仕組みとなっていた。ここを通して浄化された物を川に流していたが、この浄化物が今回の騒動の主役となった。
水中がどれだけ汚れているかを示す指標の中に、BOD(Biochemical Oxygen Demand、生物化学的酸素要求量)と呼ばれるものがある。環境省が定める浄化槽法によると、BOD値は20mg/L以下に抑える必要があり、法定検査などを必ず受け、その後も定期検査を行うことなどを規定している。
町議会がまとめた「道の駅浄化槽適正化に関する調査特別委員会報告書」によると、道の駅の開業から数か月たった18年8月の検査ではBOD値が193mg/Lで、国の基準の9倍以上を記録する異常事態が判明。検査結果は「不適正」とされた。
町はその翌年から年に2~3回前後、法定検査と自主検査も進めてきたが、基準のBOD値が20mg/L以下になったのは23年8月の自主検査で18mg/Lが初めてだった。
この事実を前述の決算審査特別委員会で指摘された町は、法定検査水質基準を満たしていない原因と対策に関する調査費を補正計上。油を分離させる装置などを導入するなどし、補正予算として7030万円を充てた。
当初は24年8月末に浄化槽の適正化が終わる予定だったものの、工期の設定を誤ったため工事の完了は同年11月中旬ごろにずれこみ、追加の補正予算約470万円を計上する事態になった。その後、浄化槽工事は11月15日に完了。11月末の検査では55mg/Lと基準値を超えていたが、12月中旬からの自主検査以降、BOD値は基準値内に収まる状態となった。
一連の騒動を受けて平松俊一町議会議員は3月18日、杉原町長に対する問責決議案を町議会に提出。次のように批判した。
「最高責任者としての指導力不足や特別職と管理職との連携不足は、今後の町政運営に大きなマイナスとなり、議会と行政が一つになって豊かな七飯町を実現していくことにはならない」
採決では賛成8票、反対5票となり、杉原町長への問責決議案は可決された。本稿記者の取材に応じた町の担当者は、「町長と協議の上、今後の課題を乗り越えようとしているのが現状」と回答した。
ちなみに騒動の元となった七飯町の道の駅は、北海道地区「道の駅」連絡会が主催し、国土交通省北海道開発局が取りまとめて昨年12月に発表している「北海道『道の駅』ランキング2023」の「トイレがきれいだと感じた道の駅ランキング」1位に選ばれている。
北海道開発局によると、ランキングは北海道「道の駅」スタンプラリーの完走者からアンケートを募り、それを集計して発表しているという。スタンプラリーでは道の駅の訪問数や限定する道の駅などでスタンプを押すと、抽選で特産品などの商品を獲得できる。北海道地区「道の駅」連絡会によると、スタンプラリーは1992年前後に創設。2023年ランキングでの完走者数は3014人だったが、今回の騒動で輝かしい記録に水を差される形になってしまった。
杉原町長は2022年3月の選挙で当選し、七飯町政の先頭に立ってきた。町のホームページには「『町民の声を生かして創る七飯町』を築くため、職員の先頭に立って全身全霊で職務を遂行する決意」などといった町長の言葉が並んでいる。町長は問責決議案が可決された事実を受け止め、町のためにまい進してほしい。
小林英介(こばやしえいすけ)1996年北海道滝川市生まれ、札幌市在住。ライター・記者。北海道を中心として、社会問題や企業・団体等の不祥事、交通問題、ビジネスなどについて取材。酒と阪神タイガースをこよなく愛している。