“億ション”もキャッシュで一括 円安で外国人が不動産“爆買い” “買われる”日本

日本時間の22日午前3時、アメリカの中央銀行にあたるFRB(連邦準備制度理事会)が、3回連続となる0.75%の大幅な利上げに踏み切りました。円安がさらに加速する可能性があります。こうした状況で今、日本の不動産を購入する外国人が増えています。億を超えるマンションを現金で一括購入です。
■“億ション”爆買い 外国人「手頃な値段」
今年に入ってから急激に進む円安。円相場は今月、24年ぶりに1ドル144円台を記録するなど、歴史的な水準になりました。
円安の影響で今、日本では外国人による不動産“爆買い”が加速しています。
ジャパンハナ不動産 ガラス・ウー代表:「ここからの眺めが素晴らしいんですよ」
物件購入を検討中・バービンさん(40):「わぁ、本当に良いですね!」
27階の部屋からは、都心の街並みを一望できる、抜群の眺め。東京ミッドタウンや虎ノ門の高層ビル群が広がります。
食洗機も備え付けられた使い勝手のいい、広々としたキッチン。壁一面に大理石が使われた、ぜいたくな乾燥機能付きのバスルーム。背の高い外国人にも十分な高さの天井。
内覧に訪れているのは、東京の一等地・麻布十番駅から徒歩4分。抜群の立地を誇る、高級タワーマンションです。
アメリカの金融ファンドで働くインド系アメリカ人のバービンさんは、コロナ禍でリモートワークが進み、住む場所の制約がなくなりました。そこで、学生時代から好きだった日本で暮らすマンションを探しています。
物件を案内するのは、香港の不動産仲介業者のウー代表です。
ウー代表:「最高級の2ベッドルームのマンション。東京のトップエリアの麻布十番です。この物件は、非常にお買い得だと思います」
気になるそのお値段は…。
ウー代表:「こちらは1億7000万円くらいです」
日本人に手の出しにくい金額ですが、バービンさんは…。
バービンさん:「手頃な価格だと思います。年初から、円は30%下がりました。1億7000万円は、1年前よりもずっと手頃な価格です。今の日本は円安で、投資に最高のタイミングです」
■“5億円”タワマン 34階 213平米
この日は、さらなる高額物件をもう一軒、案内しました。
白金高輪駅・徒歩6分の物件は、3LDKの間取りで、広さはなんと、213平米です。34階の部屋からは、渋谷の高層ビル群を眺めることもできます。
友人を呼んでパーティーもできそうな、35畳もあるリビングに加え、たくさんの食器を仕舞える回転式の収納や、ドイツ製のオーブンや食洗機も付いた、大きなキッチンもあります。
一日の疲れを癒やしてくれるジャグジーバスに、備え付けの間接照明や、高級感あふれるシャンデリア、キングサイズのベッドもゆうゆう置ける16畳の寝室があります。
玄関も、なぜか2つあります。バスルームの他に、もう1つシャワールームがあり、そこには外国人好みのレインシャワーがあります。これには、バービンさんも…。
バービンさん:「素晴らしい!レインシャワー大好きなんです!一番ぜいたくなシャワーです」
■都心“億ション” “現金一括”購入も
気になるそのお値段は…。
ウー代表:「5億円」
売買が成立すれば、仲介したウー代表にも、3%の手数料報酬が入ります。その額はなんと、1500万円。物件の説明にも熱が入ります。
バービンさん:「東京にしては、お得だと思います。こういう物件は、他にあまりない。プライスはリーズナブルです」
バービンさんのように、日本の物件を探す外国人は、円安の影響で、今年3月以降、およそ3倍に増えているといいます。
ウー代表:「円安になってからは、アメリカとかオーストラリア、香港・シンガポール・中国からも、結構色んな国から問い合わせが増えております」「(Q.円安で毎日忙しい?)そうですね。問い合わせは、本当に毎日たくさん。おかげさまで、たくさん頂いている。ちょっと、対応しきれない状況でもあります」
外国人の物件購入希望者の特徴は…。
ウー代表:「(外国人のお客さんは)だいたい、2億円以下であれば、皆さんキャッシュで買われております」「(Q.一括で?)一括です」「香港は今、不動産価格が世界で一番高いので。例えば、今見ているこのクラスの200平米以上、5億円の案件、香港だと15億円くらい。3倍くらいは最低限しますね」
この日、2軒の内覧を終えたバービンさんは、1軒目の麻布十番の部屋を気に入り、購入を検討しているということです。
■地方リゾート “外国資本”次々購入
かつてバブル景気に沸いた日本は、ニューヨークのロックフェラーセンターの買収に象徴されるように、世界の不動産を“買う立場”でした。しかし、現在は逆に“買われる立場”になっています。
それは、かつてにぎわいを見せたリゾート地でも同じことが起きています。スキーリゾートとして有名な新潟県妙高市の赤倉温泉です。
次井雪雄さんは、27年前から営業する「ホテルアルプ」の元オーナーです。
赤倉温泉は、北海道のニセコや長野県の白馬村同様、その雪質の良さがオーストラリア人観光客に大人気。次井さんはスキーブーム全盛期の35年前に、父からホテル事業を受け継ぐも、ここ数年間はコロナの影響などもあり、経営不振に陥りました。そして…。
次井さん:「これが売買契約書ですね。売買したというサインです」
ホテルをおよそ2億円で、香港の投資家に売却しました。
次井さん:「内心は、やっぱり寂しい思いはしますよ。親からもらった財産をゼロにするんだから」
親の代から続けてきたホテルですが、子どもに継がせることは考えなかったといいます。
次井さん:「私の責任で負った負債を、家内と子どもに全部継がせるなんて、そんな無責任なことはできないですから」
今、次井さんは、新しく上司になった外国人マネージャーのもと、かつての自分のホテルで住み込みの従業員として働いています。
次井さん:「ちゃんとそこで住んで、営業してくれてることには、もう大賛成。どこの資本だっていいと思うんですよ。潰れていくよりも、さびれていくよりも…」
今、赤倉温泉におよそ60軒あるホテルのうち、5分の1近くが外国資本になっているといいます。
現ホテルマネージャー・リアムさん:「(Q.円安をどう思う?)ここに住んで4年になりますが、毎年(年々)物件を購入して、ロッジを開く外国人が増えています。日本の不動産は、今は安いです」
■iPhone求め…海外から殺到「日本が安い」
円安の影響は、身近な商品にも及んでいます。
中古家電販売店で、外国人が熱心に見ているものが…。
ネパール人:「中古とかの安い携帯とかiPhone(アイフォーン)を見ようと思った」
スリランカ人:「iPad(アイパッド)とiPhone買ったから、(スリランカより)日本が安いと思うね」
世界で人気のiPhone。円安の影響により、日本で買うほうが断然お得ということで、この店には多くの外国人が訪れています。
例えば、最新のiPhone14(128GB)の場合、日本では11万9800円ですが、ブラジルではおよそ21万円、最も高いとされるトルコではおよそ24万円と、日本の倍以上の価格となっています。
イオシス アキバ中央通店・菊田沙生さん:「iPhoneが非常に人気で、家族の分とかお友達の分とか、まとめて購入される方が多い」
ドイツ人:「やっぱり、円安はありますけど、(日本は)どこにいてもどんな物でも、エレクトロニクス(電子機器)じゃなくても、靴とかも全部安いですね」