「夫の1歳娘への距離感が異常だと考えています」。こんな理由から離婚を考えている女性が弁護士ドットコムに相談を寄せました。
女性によると、夫は娘の口にキスをする回数が「かなり多く、普通の範囲を超えています」。先日は、お風呂上がりに下着一枚で出てきたあと、下着の横から男性器を出して娘に触らせたそうです。
本人は「悪ふざけ」と言っているものの、キスの件もあり不信感が募った女性は、離婚を検討しています。こうした娘への性的いたずら・虐待を理由に、離婚することはできるのでしょうか。伊藤真樹子弁護士に聞きました。
子どもへの性的行為について、児童虐待の防止等に関する法律は、「児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること」を虐待として規定しています(同法2条2号)。
他方、親の子どもへのスキンシップは、一定程度は愛情表現と捉えられるため、その線引きが問題になります。この点については、厚生労働省が作成に関与している「児童相談所における性的虐待ガイドライン 2011年版」が参考になります。
このガイドラインでは、性器に触れさせる行為を、明らかな性的虐待・性暴力被害としており、今回の相談にある父親が娘に自分の性器を触らせた行為は、まさにこれにあたります。
キスについては、舌を使ったキスについては、やはり明らかな性的虐待・性暴力被害とされています。
相談のケースで、キスが性的虐待にあたるかは明確に言えませんが、少なくとも性器を触らせた行為は性的虐待にあたり、重大な問題です。
したがって、離婚についても、「婚姻を継続し難い重大な事由」(民法770条1項5号)にあたるものとして、離婚理由になりえます。
【取材協力弁護士】伊藤 真樹子(いとう・まきこ)弁護士2008年に弁護士登録後、離婚や相続などの家事事件、債権回収などの民事事件を500件以上取り扱う。「何かあったらすぐに相談に行ける、身近な法律事務所」をモットーに法律事務所を運営。事務所名:仙川総合法律事務所事務所URL:http://sengawa-law.jp/