Z世代の約8割が動画視聴で“タイパ”を重視!? 約半数が「倍速視聴」も…理由をSHIBUYA109 lab.に聞いた

若い世代を中心に増えていると言われている、映像コンテンツの「倍速視聴」。再生速度を倍速にして、映像コンテンツをみることを差す言葉だが、こうした中、「SHIBUYA109 lab.」の調査で、Z世代の約半数が「倍速視聴」で映像コンテンツを楽しんでいることが分かった。SHIBUYA109が運営する若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.」が、Z世代を対象に行った「Z世代の映像コンテンツの楽しみ方に関する意識調査」の結果を8月8日に発表。対象は1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の15~24歳男女400人(スクリーニング設問の回答者数は945人)。

そのうち、65.5%がサブスクリプションサービスを利用しており、このうち74.1%が「動画配信系サブスク」を利用していることが分かった。また、「動画配信系サブスク」など、低価格で大量に映像コンテンツを見られる環境が整うにしたがって “タイパ(タイムパフォーマンス)” が重要視されるようになり、85.0%が「タイムパフォーマンスを重視する」と回答している。映像コンテンツの視聴態度の詳細をみてみると、「ながら見(別の作業をしながら映像を見る)」をしている人は81.3%だった。これに対し、「倍速視聴(再生速度を倍速にして視聴)」は48.6%、「スキップ再生(映像を飛ばしながら見る)」は51.5%、「ネタバレ視聴(作品を楽しむ前にある程度の内容を把握しておく)は44.3%と、いずれも約半数にとどまった。タイムパフォーマンスを重視する理由を聞いたところ、最も多かったのは「自分が価値を感じているコトに、時間を割きたいから」が49.3%。次に多かったのが「自分にとって無駄な時間は省いていきたいから」で41.5%だった。またグループインタビューでは、「何回も見たい作品があるが、家庭用録画機器だと記録容量を食ってしまうので、サブスクに入っている」「一回見れば満足な作品と、何回も見たい作品がある」といった意見が聞かれた。これについては、「全ての映像コンテンツをできるだけ効率化して見たいというわけではなく “自分の好きなものにできるだけ時間をかけたい” と考えており、時間の使い方に関してもZ世代の『メリハリ消費』の価値観が表れていることが分かる」としている。一方で、「ドラマやアニメなど何話まで見ていたか分からなくなることがある」と回答したのは65.8%、「観たことはあるが内容を覚えていないような映画やドラマがある」は72.6% 、「常に見たいコンテンツがあり追いつかない」が70.8%だった。これについては「大量の映像コンテンツを消費し続ける弊害もいくつか見受けられた」としている。約8割のZ世代が「タイムパフォーマンス」を重視していることが分かったわけだが、これはどうしてなのか? また、事前にある程度内容を把握してから見る「ネタバレ視聴」が話題になったりしているが、Z世代の映像コンテンツの視聴傾向について、SHIBUYA109エンタテイメントの担当者に詳しく話を聞いた。時間の使いどころをコントロールするために“タイパ”を重視――85%のZ世代が「タイムパフォーマンスを重視する」。理由として考えられることは?Z世代の自分が価値を感じることに対して時間をかけ、それ以外は節約したい、というメリハリ意識が強いことが理由です。実際に調査結果でも、タイムパフォーマンスを重視する理由として「自分が価値を感じるコトに、時間を割きたいから」という回答が49.3%で最も多く、「世の中のあらゆることを効率化したい」という回答(30.8%)よりも高い数値がとれました。全てに対して「時短」ということではなく、時間の使いどころをコントロールするためにタイムパフォーマンスを重視しているというのが実態です。――タイムパフォーマンスを重視する理由として、見るべき(もしくは、見たいと思っている)映像コンテンツが多いということもある?あります。SNSも含め、常に情報・コンテンツ過多な状態であることから、自分が本当に見るべきコンテンツを見極める必要があるのが現状です。視聴するコンテンツを自分で取捨選択していますが、それでも追いつかないことがあるからこそ、効率的にコンテンツを視聴する方法を活用しています。――85%のZ世代が「タイムパフォーマンスを重視する」と回答。この結果、どのように受け止めている?映像コンテンツに限らず、時間やお金の使い方にメリハリをつけるのが、Z世代の特徴です。「SHIBUYA109 lab.」では「メリハリ消費」と呼んでいます。そのため、8割以上のZ世代がタイムパフォーマンスを重視しているという結果にも納得です。ただ、データでみると「全てを効率的に時短したい」と解釈しがちですが、メリハリをつけるためのタイムパフォーマンスであることを企業や大人は認識していただきたいです。「倍速視聴」の対象は“時間をなるべくかけずに視聴したいコンテンツ”――視聴態度の詳細を見てみると、「ながら見」するZ世代が約8割であるのに対し、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」は約半数程度にとどまった。「ながら見」以外は、意見が割れているのはなぜ?「ながら見」は、Z世代にとって映像コンテンツが日常の一部であるからこその行動であるのに対して、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」は、コンテンツに対してかける、時間の節約手段です。性質が若干異なることで、各項目の数値に乖離があると分析しています。Z世代たちはテレビを見ながらスマホをいじる、メイクする時にYouTubeをみる、勉強しながら映像コンテンツを流しっぱなしにするなど、常に映像コンテンツに触れる環境が当たり前であり、その中で「ながら見」を取り入れています。時間短縮という意識のもと、行っているというよりも、生活と映像コンテンツが密着した関係にあるから、という要素が強いです。それに対し、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」は、コンテンツによって視聴態度を意識的に変える、つまり、コンテンツの向き合い方の調節をするための(ちゃんと見たいコンテンツと、サクッと見たいコンテンツ、ざっくり把握しておきたいコンテンツなど)手段として活用されていることから、半数程度に留まっていると分析しています。半数程度になっているのは、そもそも「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」をするくらいなら、そのコンテンツを見ないという判断を前段でしていることが関係していると考えられます。――「倍速視聴」の対象となるのは、どのようなコンテンツ?時間をなるべくかけずに視聴したいコンテンツ、もしくは視聴せず、耳だけで聞くラジオ感覚で接触したいコンテンツが対象であると分析しています。好きなアーティストやインフルエンサーのコンテンツや、自分が深く知りたい情報に対しては、倍速視聴という手段をとることはありません。逆に、「知りたい・視聴したい」けど、「そこまで時間をかけたくない、もしくは、真剣に向き合う必要のないコンテンツ」と判断した場合は活用されています。倍速で動画内の“間”をカットし、少しでも短い時間で動画の内容を習得したい場合に活用されています。――「ネタバレ視聴」が半数以下だったことは、どのように受け止めている?「SHIBUYA109 lab.」としては想定通りの結果でした。今回、この設問を聴取したのは、メディアでは「Z世代の過半数がネタバレ視聴をしている」というような捉えられ方をされている報道が多いので、多くのZ世代がやっているというよりも、「そのような手段は選択肢としてはある」といった程度だという実態を伝えたいと思ったことが背景にあります。映像コンテンツ配信サービスが生き残っていくためには…――今回の調査で、Z世代が大量の情報の中で生きる弊害という側面も感じられる?弊害というか、情報過多の世の中をサバイブするためのスキルを持っているという認識です。現代を生きる上で限られた時間とお金の有効活用をするという観点で、このような工夫をしているZ世代の時代への適応能力は非常に優れていると感じています。――今回の調査結果を踏まえ、映像コンテンツを配信するサービスが生き残っていくためにはどうすればよい?2点あると考えています。1つは「視聴者の世界を最優先にしつつ、コンテンツ側として視聴者とどのような関係性を築きたいかを定める」。視聴方法・視聴時間・視聴態度など、あらゆるコンテンツ視聴における選択の主導権を握っているのはユーザー側です。そのため、彼らコンテンツの楽しみ方の選択肢を認識し、彼らが楽しみやすい環境を提供することを前提として、コンテンツの展開方法を設計することが重要と考えます。一方で、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」などの手段を活用して、視聴してもらいたいのか、世界観に没入してもらいたいのか、などのコンテンツ側のスタンスも、もちろん重要だと思います。そのため、どんな視聴者層に共感してもらいたいか、どんな視聴層と関係を築きたいかを定めることも、必要であると考えています。もう1つは「プラットフォームごとの作法を理解すること」。視聴するデバイスや各プラットフォームによって、視聴態度や、視聴モチベーションが異なるため、それを理解することが大事です。また、各プラットフォームにおける、Z世代の映像コンテンツの楽しみ方を阻害しないコンテンツを提供することも必要だと思います。約8割が「タイムパフォーマンス」を重視して動画視聴しているという、Z世代の実態。担当者は、限られた時間とお金の有効活用をするために今回のような工夫をしているZ世代の時代への適応能力は非常に優れていると評価していた。
若い世代を中心に増えていると言われている、映像コンテンツの「倍速視聴」。
再生速度を倍速にして、映像コンテンツをみることを差す言葉だが、こうした中、「SHIBUYA109 lab.」の調査で、Z世代の約半数が「倍速視聴」で映像コンテンツを楽しんでいることが分かった。
SHIBUYA109が運営する若者マーケティング研究機関「SHIBUYA109 lab.」が、Z世代を対象に行った「Z世代の映像コンテンツの楽しみ方に関する意識調査」の結果を8月8日に発表。対象は1都3県(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)の15~24歳男女400人(スクリーニング設問の回答者数は945人)。
そのうち、65.5%がサブスクリプションサービスを利用しており、このうち74.1%が「動画配信系サブスク」を利用していることが分かった。
また、「動画配信系サブスク」など、低価格で大量に映像コンテンツを見られる環境が整うにしたがって “タイパ(タイムパフォーマンス)” が重要視されるようになり、85.0%が「タイムパフォーマンスを重視する」と回答している。
映像コンテンツの視聴態度の詳細をみてみると、「ながら見(別の作業をしながら映像を見る)」をしている人は81.3%だった。
これに対し、「倍速視聴(再生速度を倍速にして視聴)」は48.6%、「スキップ再生(映像を飛ばしながら見る)」は51.5%、「ネタバレ視聴(作品を楽しむ前にある程度の内容を把握しておく)は44.3%と、いずれも約半数にとどまった。
タイムパフォーマンスを重視する理由を聞いたところ、最も多かったのは「自分が価値を感じているコトに、時間を割きたいから」が49.3%。
次に多かったのが「自分にとって無駄な時間は省いていきたいから」で41.5%だった。
またグループインタビューでは、「何回も見たい作品があるが、家庭用録画機器だと記録容量を食ってしまうので、サブスクに入っている」「一回見れば満足な作品と、何回も見たい作品がある」といった意見が聞かれた。
これについては、「全ての映像コンテンツをできるだけ効率化して見たいというわけではなく “自分の好きなものにできるだけ時間をかけたい” と考えており、時間の使い方に関してもZ世代の『メリハリ消費』の価値観が表れていることが分かる」としている。
一方で、「ドラマやアニメなど何話まで見ていたか分からなくなることがある」と回答したのは65.8%、「観たことはあるが内容を覚えていないような映画やドラマがある」は72.6% 、「常に見たいコンテンツがあり追いつかない」が70.8%だった。
これについては「大量の映像コンテンツを消費し続ける弊害もいくつか見受けられた」としている。
約8割のZ世代が「タイムパフォーマンス」を重視していることが分かったわけだが、これはどうしてなのか? また、事前にある程度内容を把握してから見る「ネタバレ視聴」が話題になったりしているが、Z世代の映像コンテンツの視聴傾向について、SHIBUYA109エンタテイメントの担当者に詳しく話を聞いた。
――85%のZ世代が「タイムパフォーマンスを重視する」。理由として考えられることは?
Z世代の自分が価値を感じることに対して時間をかけ、それ以外は節約したい、というメリハリ意識が強いことが理由です。
実際に調査結果でも、タイムパフォーマンスを重視する理由として「自分が価値を感じるコトに、時間を割きたいから」という回答が49.3%で最も多く、「世の中のあらゆることを効率化したい」という回答(30.8%)よりも高い数値がとれました。
全てに対して「時短」ということではなく、時間の使いどころをコントロールするためにタイムパフォーマンスを重視しているというのが実態です。
――タイムパフォーマンスを重視する理由として、見るべき(もしくは、見たいと思っている)映像コンテンツが多いということもある?
あります。SNSも含め、常に情報・コンテンツ過多な状態であることから、自分が本当に見るべきコンテンツを見極める必要があるのが現状です。
視聴するコンテンツを自分で取捨選択していますが、それでも追いつかないことがあるからこそ、効率的にコンテンツを視聴する方法を活用しています。
――85%のZ世代が「タイムパフォーマンスを重視する」と回答。この結果、どのように受け止めている?
映像コンテンツに限らず、時間やお金の使い方にメリハリをつけるのが、Z世代の特徴です。「SHIBUYA109 lab.」では「メリハリ消費」と呼んでいます。そのため、8割以上のZ世代がタイムパフォーマンスを重視しているという結果にも納得です。
ただ、データでみると「全てを効率的に時短したい」と解釈しがちですが、メリハリをつけるためのタイムパフォーマンスであることを企業や大人は認識していただきたいです。
――視聴態度の詳細を見てみると、「ながら見」するZ世代が約8割であるのに対し、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」は約半数程度にとどまった。「ながら見」以外は、意見が割れているのはなぜ?
「ながら見」は、Z世代にとって映像コンテンツが日常の一部であるからこその行動であるのに対して、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」は、コンテンツに対してかける、時間の節約手段です。
性質が若干異なることで、各項目の数値に乖離があると分析しています。
Z世代たちはテレビを見ながらスマホをいじる、メイクする時にYouTubeをみる、勉強しながら映像コンテンツを流しっぱなしにするなど、常に映像コンテンツに触れる環境が当たり前であり、その中で「ながら見」を取り入れています。
時間短縮という意識のもと、行っているというよりも、生活と映像コンテンツが密着した関係にあるから、という要素が強いです。
それに対し、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」は、コンテンツによって視聴態度を意識的に変える、つまり、コンテンツの向き合い方の調節をするための(ちゃんと見たいコンテンツと、サクッと見たいコンテンツ、ざっくり把握しておきたいコンテンツなど)手段として活用されていることから、半数程度に留まっていると分析しています。
半数程度になっているのは、そもそも「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」をするくらいなら、そのコンテンツを見ないという判断を前段でしていることが関係していると考えられます。
――「倍速視聴」の対象となるのは、どのようなコンテンツ?
時間をなるべくかけずに視聴したいコンテンツ、もしくは視聴せず、耳だけで聞くラジオ感覚で接触したいコンテンツが対象であると分析しています。
好きなアーティストやインフルエンサーのコンテンツや、自分が深く知りたい情報に対しては、倍速視聴という手段をとることはありません。
逆に、「知りたい・視聴したい」けど、「そこまで時間をかけたくない、もしくは、真剣に向き合う必要のないコンテンツ」と判断した場合は活用されています。
倍速で動画内の“間”をカットし、少しでも短い時間で動画の内容を習得したい場合に活用されています。
――「ネタバレ視聴」が半数以下だったことは、どのように受け止めている?
「SHIBUYA109 lab.」としては想定通りの結果でした。
今回、この設問を聴取したのは、メディアでは「Z世代の過半数がネタバレ視聴をしている」というような捉えられ方をされている報道が多いので、多くのZ世代がやっているというよりも、「そのような手段は選択肢としてはある」といった程度だという実態を伝えたいと思ったことが背景にあります。
――今回の調査で、Z世代が大量の情報の中で生きる弊害という側面も感じられる?
弊害というか、情報過多の世の中をサバイブするためのスキルを持っているという認識です。
現代を生きる上で限られた時間とお金の有効活用をするという観点で、このような工夫をしているZ世代の時代への適応能力は非常に優れていると感じています。
――今回の調査結果を踏まえ、映像コンテンツを配信するサービスが生き残っていくためにはどうすればよい?
2点あると考えています。
1つは「視聴者の世界を最優先にしつつ、コンテンツ側として視聴者とどのような関係性を築きたいかを定める」。
視聴方法・視聴時間・視聴態度など、あらゆるコンテンツ視聴における選択の主導権を握っているのはユーザー側です。そのため、彼らコンテンツの楽しみ方の選択肢を認識し、彼らが楽しみやすい環境を提供することを前提として、コンテンツの展開方法を設計することが重要と考えます。
一方で、「倍速視聴」「スキップ再生」「ネタバレ視聴」などの手段を活用して、視聴してもらいたいのか、世界観に没入してもらいたいのか、などのコンテンツ側のスタンスも、もちろん重要だと思います。そのため、どんな視聴者層に共感してもらいたいか、どんな視聴層と関係を築きたいかを定めることも、必要であると考えています。
もう1つは「プラットフォームごとの作法を理解すること」。
視聴するデバイスや各プラットフォームによって、視聴態度や、視聴モチベーションが異なるため、それを理解することが大事です。また、各プラットフォームにおける、Z世代の映像コンテンツの楽しみ方を阻害しないコンテンツを提供することも必要だと思います。
約8割が「タイムパフォーマンス」を重視して動画視聴しているという、Z世代の実態。担当者は、限られた時間とお金の有効活用をするために今回のような工夫をしているZ世代の時代への適応能力は非常に優れていると評価していた。