無許可の臓器移植あっせんで逮捕者も 海外での臓器移植の実態と中国で手術を受けた男性の告白

警察や軍関係、暴力団組織などの内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、海外での臓器移植の実態について。
【写真】臓器提供意思表示カード * * *「臓器売買」の話を詳しく聞いたのは、手術を受けた本人からだ。重度の肝硬変で移植するしか助かる道がなかった彼は、日本の病院でいつになるかわからない移植の順番を待つよりも、中国で移植を受けることを選んだ。彼のことを思い出しだのは、NPO法人による無許可の臓器あっせん事件が報じられたからだ。

逮捕されたのはNPO法人「難病患者支援の会」の理事長の菊池仁達容疑者(62才)。肝硬変を患っていた男性に、移植費は約3300万円でベラルーシでの移植を無許可なのに勧めたという。男性は2022年1月に渡航し、2月に肝臓の移植手術を受けたが、移植後に体調が悪化、帰国後に家族から生体肝移植を受けたが亡くなっている。このNPO法人の理事長は、過去にも移植をあっせんし問題をおこしていた。理事長のあっせんでキルギスやブルガリアに渡航し、移植を受けた人たちの中には、すでに亡くなってしまった人もいる。 このような状況が起きるのは、他国に比べ日本では、移植を受けられる患者が圧倒的に少ないからだ。希望者の2~3%しか移植を受けられないのが現状だという。冒頭で紹介した中国で移植を受けた彼は「いくら待っても自分の番は回ってこない。待ちながら死ぬのは嫌だ。生きていたかった」と話していた。彼にとって、中国で臓器を買って移植というのは、生きるための唯一の手段だった。 彼は日本在住の中国人ビジネスマンを介し、中国の移植コーディネーターを紹介してもらったという。日本では海外に渡航し移植を受けること自体は違法ではないのだ。彼が中国に渡航してから、移植を行うまでは実にスピーディーだったようだ。翌日にはコーディネーターに紹介された病院を受診。そこは警察関係の病院だったという。移植に必要な検査を行い一旦帰国。日本でその日が来るのを待った。ドナーになるのは中国人の囚人と聞かされていたらしい。「それ以上のことは聞かなかった。移植される肝臓が健康であればよかった」。中国で肝臓移植を受けたがその後、体調が… 2014年12月、中国政府は「処刑された囚人からの臓器摘出を中止した」と発表した。それまで中国の臓器移植の大半は、死刑囚から提供されており、彼が移植を受けたのもそれ以前だ。中国には1984年に成立した「死刑囚の死体及び死体臓器の利用に関する暫定規定」があり、死刑囚の自由意志か家族の同意、引き取る人がいない場合、死体が利用されていた。2007年には臓器移植法が制定されたが、ドナーが囚人の場合、同意の有無が不明なケースがあるとネット上で報じられることも多い。移植を受ける側にとっては「知らない方がいいこともある」と彼は言った。「その病院では、移植手術がよく行われていた。検査も移植の説明も手慣れていた」と彼はいうが、手術には一抹の不安があった。病院側は過去に何人もの移植を手掛けたと話したそうだが、担当医師の医療技術がどうなのかわからなかったのだ。だが通訳は、「これまで何人もの日本人が移植しに来た」と話したそうだ。 中国からの連絡はすぐに入った。「移植が決まったから、すぐに、こちらに来るように」。その時のことを彼は「思っていたよりとても早かった」と話す。彼は飛行機のチケットを購入し、その日のうちに一人中国へ飛び、病院へ直行。最終検査を受け、翌日には手術が行われたという。日本なら入院した翌日に移植手術するなど考えられなかったというが、待ちに待った移植手術だ。受けないという選択肢は彼になかった。手術は無事に成功し、心配された拒絶反応もクリア、「これでまた元の生活に戻れる」と喜んだのだ。 だが移植から半年も過ぎた頃、彼の病状は再び悪化。移植された肝臓は機能しなくなっていた。「若くてキレイな肝臓だと聞いていたんだが…」と肩を下した。若くてキレイということは、ドナーは健康な若者だったのだろうか。中国の「臓器狩り」が問題視された時、法輪功の信者の臓器が強制的に売買されている可能性が度々報じられた。酒もタバコもやらない彼らの臓器は健康だったのだという。もう一度、肝臓移植をと願ったが、彼の身体はすでに限界だった。移植から1年弱、彼は帰らぬ人となった。 2008年、国際移植学会は「イスタンブール宣言」を採択し、臓器売買を禁止したが、2016 年2月2日のNewsweek日本版では、一部のキリスト教徒や法輪功支持者などの囚人たちからの臓器摘出は今も続いていると指摘。2017年7月28日の産経新聞オンライン版、「ニュースの深層」では「チャイナ臓器狩り、日本は最大の顧客か」というタイトルの記事が掲載されている。実態はわからないが、実際に中国で移植を受けた彼の話を振り返ってみると可能性は否定できない。
* * *「臓器売買」の話を詳しく聞いたのは、手術を受けた本人からだ。重度の肝硬変で移植するしか助かる道がなかった彼は、日本の病院でいつになるかわからない移植の順番を待つよりも、中国で移植を受けることを選んだ。彼のことを思い出しだのは、NPO法人による無許可の臓器あっせん事件が報じられたからだ。
逮捕されたのはNPO法人「難病患者支援の会」の理事長の菊池仁達容疑者(62才)。肝硬変を患っていた男性に、移植費は約3300万円でベラルーシでの移植を無許可なのに勧めたという。男性は2022年1月に渡航し、2月に肝臓の移植手術を受けたが、移植後に体調が悪化、帰国後に家族から生体肝移植を受けたが亡くなっている。このNPO法人の理事長は、過去にも移植をあっせんし問題をおこしていた。理事長のあっせんでキルギスやブルガリアに渡航し、移植を受けた人たちの中には、すでに亡くなってしまった人もいる。
このような状況が起きるのは、他国に比べ日本では、移植を受けられる患者が圧倒的に少ないからだ。希望者の2~3%しか移植を受けられないのが現状だという。冒頭で紹介した中国で移植を受けた彼は「いくら待っても自分の番は回ってこない。待ちながら死ぬのは嫌だ。生きていたかった」と話していた。彼にとって、中国で臓器を買って移植というのは、生きるための唯一の手段だった。
彼は日本在住の中国人ビジネスマンを介し、中国の移植コーディネーターを紹介してもらったという。日本では海外に渡航し移植を受けること自体は違法ではないのだ。彼が中国に渡航してから、移植を行うまでは実にスピーディーだったようだ。翌日にはコーディネーターに紹介された病院を受診。そこは警察関係の病院だったという。移植に必要な検査を行い一旦帰国。日本でその日が来るのを待った。ドナーになるのは中国人の囚人と聞かされていたらしい。「それ以上のことは聞かなかった。移植される肝臓が健康であればよかった」。
2014年12月、中国政府は「処刑された囚人からの臓器摘出を中止した」と発表した。それまで中国の臓器移植の大半は、死刑囚から提供されており、彼が移植を受けたのもそれ以前だ。中国には1984年に成立した「死刑囚の死体及び死体臓器の利用に関する暫定規定」があり、死刑囚の自由意志か家族の同意、引き取る人がいない場合、死体が利用されていた。2007年には臓器移植法が制定されたが、ドナーが囚人の場合、同意の有無が不明なケースがあるとネット上で報じられることも多い。移植を受ける側にとっては「知らない方がいいこともある」と彼は言った。
「その病院では、移植手術がよく行われていた。検査も移植の説明も手慣れていた」と彼はいうが、手術には一抹の不安があった。病院側は過去に何人もの移植を手掛けたと話したそうだが、担当医師の医療技術がどうなのかわからなかったのだ。だが通訳は、「これまで何人もの日本人が移植しに来た」と話したそうだ。
中国からの連絡はすぐに入った。「移植が決まったから、すぐに、こちらに来るように」。その時のことを彼は「思っていたよりとても早かった」と話す。彼は飛行機のチケットを購入し、その日のうちに一人中国へ飛び、病院へ直行。最終検査を受け、翌日には手術が行われたという。日本なら入院した翌日に移植手術するなど考えられなかったというが、待ちに待った移植手術だ。受けないという選択肢は彼になかった。手術は無事に成功し、心配された拒絶反応もクリア、「これでまた元の生活に戻れる」と喜んだのだ。
だが移植から半年も過ぎた頃、彼の病状は再び悪化。移植された肝臓は機能しなくなっていた。「若くてキレイな肝臓だと聞いていたんだが…」と肩を下した。若くてキレイということは、ドナーは健康な若者だったのだろうか。中国の「臓器狩り」が問題視された時、法輪功の信者の臓器が強制的に売買されている可能性が度々報じられた。酒もタバコもやらない彼らの臓器は健康だったのだという。もう一度、肝臓移植をと願ったが、彼の身体はすでに限界だった。移植から1年弱、彼は帰らぬ人となった。
2008年、国際移植学会は「イスタンブール宣言」を採択し、臓器売買を禁止したが、2016 年2月2日のNewsweek日本版では、一部のキリスト教徒や法輪功支持者などの囚人たちからの臓器摘出は今も続いていると指摘。2017年7月28日の産経新聞オンライン版、「ニュースの深層」では「チャイナ臓器狩り、日本は最大の顧客か」というタイトルの記事が掲載されている。実態はわからないが、実際に中国で移植を受けた彼の話を振り返ってみると可能性は否定できない。