5歳児餓死“ママ友”初公判 無罪主張「指示してません」…担当記者が感じた“変化”

福岡県で、当時5歳の男の子が十分な食事を与えられずに餓死した事件です。母親と共に逮捕された、いわゆる“ママ友”赤堀恵美子被告(49)の初公判が開かれ、被告が全面的に争う構えを見せました。裁判を傍聴した記者が感じた変化とは…。
■無罪主張「指示していません」
裁判長:「体調に変わりないですか?」
赤堀被告:「はい」
裁判長:「今から裁判員が入ります」
赤堀被告:「はい」
29日、初公判に臨んだ赤堀被告。ママ友の5歳の息子に十分な食事を与えず、餓死させた罪などに問われている女は、何を話したのでしょうか。
裁判長:「最初に、翔士郎くんに関する保護責任者遺棄致死について、言いたいことをまとめて言って下さい」
赤堀被告:「指示はしてません」
起訴内容をすべて否認し、無罪を主張しました。
赤堀被告は、白髪交じりの髪を後ろで束ね、上下紺色の服を着て出廷。時折、早口で話すこともありましたが、終始落ち着いた様子でした。
■担当記者が感じた被告“変化”
初公判を傍聴した高橋絵里記者は、次のように話します。
高橋記者:「(Q.赤堀被告の印象は?)非常に落ち着いていると思いました」「(Q.過去との比較で、変わった点は?)紺のセットアップで、きれいめな格好。きちんと、きょうに向けて用意したのが分かる服装でした。以前、碇被告の裁判にも証人として、赤堀被告は出廷していた。一貫して、何も答えることはなかったが、今回は裁判長からの問い掛けにも、一つひとつ目を見て、きちんと『はい』というふうに答えていて。非常に落ち着いていて、柔らかい雰囲気も感じました」
事件は、おととし4月、福岡県篠栗町のマンションで起きました。
シングルマザーの碇利恵被告と2人の兄と一緒に暮らしていた、5歳の翔士郎ちゃんは、極度の栄養失調のため、命を落としました。
捜査の過程で浮上したのが、ママ友だった赤堀被告です。
検察側:「赤堀被告は、碇被告一家の生活全般を『支配』。食事量を減らし、碇被告と共謀して、保護責任者遺棄致死の罪に当たる」
■詐欺と窃盗「頼まれて下ろした」
また、碇被告からおよそ200万円をだまし取ったなどとして、詐欺や窃盗の罪でも起訴されています。
福岡県警の会見:「長きにわたり、碇家の家庭内の事情に精通し、また食生活一切を管理。碇家の食事の元となるお金を搾取するような、本件の主導的な立場にある」
しかし、29日の初公判。赤堀被告の弁護側の主張は、起訴内容とは真っ向から対立するものでした。
赤堀被告の弁護側:「碇被告は赤堀被告にとって、久しぶりの友達と呼べる存在で、碇被告から嫌われるのが怖くて、話にも付き合っていた」
「碇被告を支配していたとする検察の主張」を否認したうえで、翔士郎ちゃんの餓死についても、共謀関係にはないと訴えました。しかし…。
福岡県警の会見:「わずかなお米をおかゆ状にして、分け合って食べるとか。というようなこともあったと聞いております」
翔士郎ちゃんの死亡時の体重は、およそ10キロ。平均的な5歳児の半分でした。
検察は、碇被告が受け取る公的手当のほとんどを赤堀被告が搾取していたほか、一家の食事の量についても、細かく指示していたとみています。
裁判長:「詐欺と窃盗について、言いたいことがあれば言って下さい」
赤堀被告:「違います。お金をだまし取ったわけではないです。窃盗の件も、頼まれて(お金を)下ろしたので、そこも違います」
赤堀被告の弁護側は、次のように述べました。
赤堀被告の弁護側:「赤堀被告は碇被告に金を貸したこともあり、その返済として受け取ったことはあるが、それ以外で、お金を受け取ったことはない」
■碇被告“証人”として出廷予定も
この事件を巡っては今年6月、1審判決で碇被告に懲役5年の有罪判決が言い渡されています。そのなかで、裁判所は赤堀被告による「実質的な支配」があったとして、共謀を認定しました。
高橋記者:「碇被告の裁判長と今回、同じ裁判長なんです。裁判長が今回、赤堀被告の共謀がなかったと判決を出すのは、自分の過去の判決を覆すこと。相当新しい証拠を出さない限り、(赤堀被告にとって)厳しい展開だろう」
果たして、2人の間に支配関係はあったのでしょうか?
判決までに8回の公判があり、その中では、碇被告が検察側の証人として出廷することも予定されています。