軽トラで児童はねた男を一時見失う…教頭が校舎内で取り押さえ窓のない放送室へ

宮城県栗原市の市立若柳小学校で6日、児童4人が軽トラックにはねられた事件は、目撃者の証言などから当時の状況が明らかになってきた。
殺人未遂容疑で現行犯逮捕された職業不詳小野寺章仁容疑者(34)は、クラブ活動をしていた児童を背後からはねたとみられる。市はバリケードを設置するなどの対策を行うとともに、児童らの心のケアに努める。
■「痛い」泣く児童
事件が起きた6日午後3時頃、同小ではクラブ活動の最中だった。北側の通用口と校庭を結ぶアスファルトの通路で、児童約15人と教職員2人がクラブ活動でロケットの発射実験をしていた。小野寺容疑者が運転する車が通用口から侵入した時、多くの児童は通用口に背を向けていた。
車に気づいた小学5年の女児(10)は「誰かのお母さんかな」と思った。だが車はゆっくりと直進し、そのまま児童たちに突っ込んだ。市教育委員会によると、現場にいた教員は「音が聞こえないくらいのスピードだった」と話しているという。
はねられた小学4年の男児(10)は突然、背後から強い衝撃を感じた。車とぶつかったはずみで肘や膝をアスファルトに打ちつけ、「びっくりしたし、怖かった」。「痛い」と泣く児童もいた。
■容疑者見失う
事件後、同小の教員らは負傷した児童の対応などに追われ、小野寺容疑者の行方を一時見失った。結果的に通報も遅れたため、危機管理マニュアルを見直すという。
市教委は7日、臨時の学校長会議を開催。その後、報道陣の取材に応じた千田知幸校長と千葉睦子教育長によると、事件直後、現場近くにいた教員が職員室に急行し、報告を受けた教頭と養護教員らが負傷した児童を介抱した。
一方、車に小野寺容疑者がいなかったため、教頭は児童から「校舎の方に行った」と聞き、校舎内に入るのを発見。取り押さえて窓のない放送室に連れて行き、110番した。
マニュアルでは、教頭とは別の教員も連絡を担当するとしていたが、この日は出張で校内にいなかった。このため、消防への連絡は教頭が行い、午後3時25分になったという。また、教頭はメールでの連絡役も担うなど業務が重なり、保護者への連絡は午後7時頃に遅れたという。
また、文部科学省は3月17日付で、校門などの施錠対策が十分かどうか確認するよう通知を出していたが、同小は業者が入る通用口は確認していなかった。
同小は10日に授業を再開し、スクールカウンセラーが児童や教員の心のケアを行う。千田校長は「別の教員が任務をしっかりカバーし合える態勢を整える必要がある」などとし、マニュアルの見直しや警備の強化を進める考えを示した。
■模擬訓練を指示
今回の事件を受け、市教委は市内の小中学校に対し、こうした事態に備えて教員の役割や動きを検証する模擬訓練を行うよう指示した。また、教育施設の出入り口の状況を緊急調査し、バリケードを設置するなどの不審者対策も行う方針だ。