新潟県に実在しない「燕三条市」がSNSで話題となっている。
「燕三条」は金属加工の集積地として全国的に知られている「地域」だが、行政区分は燕市、三条市に分かれている。両市は長年の因縁があり仲が悪いともささやかれるが、地域活性化に向けて協調を図る動きもある。
■長年にわたる確執
「あの地区では絶対に言ってはいけない『燕三条市』とやっちゃった」――。
先月中旬、テレビ番組で誤って「燕三条市」と放送されると、SNSには両市の関係性への言及が相次いだ。
一方、「私もずっと『燕三条市』があるとばかり思ってた」という声も。他県民を中心に、両市を「燕三条」とひとくくりで認知している人も多いようだ。
隣り合う両市は古くから「金物の町」として交流が深いが、燕は職人、三条は商人の街で、江戸時代から対立意識があったと言われている。両市の市境にあるJR燕三条駅と三条燕インターチェンジの名称を巡って論争が起きるなど、現代でも両市の確執は度々再燃している。
両市の合併が議論されたこともあった。2002年4月、旧燕、旧三条両市を含む5市町村で任意の合併協議会が設置され、合併への話し合いが進んだ。
だが、03年10月、旧燕市で合併の可否を問う住民投票が行われ、賛成1万1783票(49%)、反対1万2504票(51%)と僅差で反対多数となり、合併は実現しなかった。
■地域活性化へ連携
一方、両市で一丸となり、地域活性化に取り組もうという動きもある。
燕三条青年会議所(JC)は、燕JCと三条JCが統合し、1997年に誕生した。設立の目的は、県央地域の中核市となる「燕三条市」の誕生だ。2000年には燕三条JCが主体となり、旧燕、旧三条両市長に合併協議会の設置を求める住民発議を行ったこともある。
「人口減少が続く中、広域連携を進めることは地域の活性化につながる。すでに経済圏などを同じくする2市ならなおさらだ」
燕三条JCの野崎寛行理事長(39)は両市の連携を進める意義を強調する。
両市は「金物の町」として認知されているが、燕市がステンレス製品、三条市が鉄製品と、主力製品は両市で異なる。
燕三条地域の企業が工場などを開放するイベント「燕三条 工場の祭典」の実行委員長で、三条市の金属加工会社役員の斎藤和也さん(35)は「産業の世界でも、両市で得手不得手を補いあっている。世界にも『燕三条』として認識されており、両市の連携は不可欠だ」と強調する。
野崎理事長は、両市の合併には賛否があり、時代の流れとともに両市の現状も変わっていると指摘、「住民にメリット、デメリットを示しながら、両市を中心とした広域連携を作る運動を進めたい」と話す。