「国籍でなく人見て」前橋で地域おこし協力隊になったロシア人の決意

パーベル・フョードロフさん(47)は10月に前橋市の地域おこし協力隊員に就任した。ウクライナ侵攻で、日本人の母国ロシアに対するイメージは悪化した。「外国人と接する機会が少ないから偏見も生まれてしまう」と、地域に溶け込む決意を新たにしている。
ITから忍者に転身 甲賀ブランド高める地域おこし協力隊員 早速、「洗礼」を受けた。前橋に転居しようとしたところ、ロシア人であることを理由にマンションの入居拒否に遭った。建物内にウクライナ人が住んでいたためという。「すぐに別の住まいが見つかりました。それも外国人と交流することが少ないのが一因」。流ちょうな日本語でそう話した。

極東のハバロフスク市の出身で、母親はウクライナ人だ。高校時代から日本語を学び始め、大学で日本語を専攻した。「オリンピック出場を目指し、水泳学校に通っていたが挫折。日本語に精通した母親の友人がいて、日本語を習い始めた」と明かす。 大学卒業後に立教大に留学し、政治学の博士号を取得。その後、東京を拠点に、ロシアと日本を行き来しながらテレビドキュメンタリーを制作していた。だが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)やウクライナ侵攻で、制作そのものが難しくなった。そのタイミングで、高崎市に住む知人を通じて前橋市の山本龍市長に会い、隊員として活動することを決めた。 隊員としての任期は3年。前橋に住み始めてからまだ1カ月余りだが、すでにアグレッシブに活動を始めている。「空き家や入居者のいないビルをペイントし、ストリートアートに変えられないか」。既に一つのビルから承諾を取り付けた。 前橋に住む外国人との橋渡し役も期待されている。その対象にはウクライナからの避難民も含まれ、聞き取りも既に行った。「ウクライナの女性の中には、ファストフード店でアルバイトしている人もいる。でも、店頭ではなく、調理などで市民と接する機会はほとんどなく孤独を感じている。もっと接する機会を増やしてあげたい」 一つのアイデアが浮かんでいる。ロシア風のクリスマスで、高齢者施設や子どもたちと交流する計画だ。ロシア版のサンタクロースは「ジェド・マロース」と呼ばれる寒さの使いだ。トナカイではなく、「スネグーラチカ(雪娘)」という孫娘を連れている。ウクライナ避難民とともに、それを演じたいという。 「ロシア人とウクライナ人が協力している姿を見てもらえれば、報道によるイメージも大きく変わるはず。国籍ではなく、人や個性を見てほしい」。ロシア人への見方を変えられたらとの願いを胸に、活動を続ける。【庄司哲也】 ■人物略歴パーベル・フョードロフさん 1975年生まれ。ハバロフスク国立教育大日本語学科卒業後、97年に来日。水泳学校では背泳ぎ選手。当時の憧れはソウル五輪金メダリストの鈴木大地さん。「白ワインのつまみに納豆を食べるのがおいしい」と話す。愛称はパーシャ。
早速、「洗礼」を受けた。前橋に転居しようとしたところ、ロシア人であることを理由にマンションの入居拒否に遭った。建物内にウクライナ人が住んでいたためという。「すぐに別の住まいが見つかりました。それも外国人と交流することが少ないのが一因」。流ちょうな日本語でそう話した。
極東のハバロフスク市の出身で、母親はウクライナ人だ。高校時代から日本語を学び始め、大学で日本語を専攻した。「オリンピック出場を目指し、水泳学校に通っていたが挫折。日本語に精通した母親の友人がいて、日本語を習い始めた」と明かす。
大学卒業後に立教大に留学し、政治学の博士号を取得。その後、東京を拠点に、ロシアと日本を行き来しながらテレビドキュメンタリーを制作していた。だが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)やウクライナ侵攻で、制作そのものが難しくなった。そのタイミングで、高崎市に住む知人を通じて前橋市の山本龍市長に会い、隊員として活動することを決めた。
隊員としての任期は3年。前橋に住み始めてからまだ1カ月余りだが、すでにアグレッシブに活動を始めている。「空き家や入居者のいないビルをペイントし、ストリートアートに変えられないか」。既に一つのビルから承諾を取り付けた。
前橋に住む外国人との橋渡し役も期待されている。その対象にはウクライナからの避難民も含まれ、聞き取りも既に行った。「ウクライナの女性の中には、ファストフード店でアルバイトしている人もいる。でも、店頭ではなく、調理などで市民と接する機会はほとんどなく孤独を感じている。もっと接する機会を増やしてあげたい」
一つのアイデアが浮かんでいる。ロシア風のクリスマスで、高齢者施設や子どもたちと交流する計画だ。ロシア版のサンタクロースは「ジェド・マロース」と呼ばれる寒さの使いだ。トナカイではなく、「スネグーラチカ(雪娘)」という孫娘を連れている。ウクライナ避難民とともに、それを演じたいという。
「ロシア人とウクライナ人が協力している姿を見てもらえれば、報道によるイメージも大きく変わるはず。国籍ではなく、人や個性を見てほしい」。ロシア人への見方を変えられたらとの願いを胸に、活動を続ける。【庄司哲也】
■人物略歴
パーベル・フョードロフさん
1975年生まれ。ハバロフスク国立教育大日本語学科卒業後、97年に来日。水泳学校では背泳ぎ選手。当時の憧れはソウル五輪金メダリストの鈴木大地さん。「白ワインのつまみに納豆を食べるのがおいしい」と話す。愛称はパーシャ。