西武池袋本店の建物、ヨドバシがほとんど取得か…1階などに家電量販店を出店の可能性も

セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の百貨店「そごう・西武」が、米ファンド傘下で新たなスタートを切ることとなった。
そごう・西武を買収した「フォートレス・インベストメント・グループ」は不動産案件を強みとしているものの、百貨店の経営手腕は未知数だ。百貨店の姿が大きく変わる可能性もある。
■低迷
セブン&アイは2006年、経営不振に陥っていたそごうと西武百貨店を買収した。小売り業界で「カリスマ」と呼ばれ、セブン&アイを国内最大級の総合小売りグループに育てた鈴木敏文名誉顧問(89)が主導した。09年には両百貨店を合併させ、そごう・西武とした。
グループ内のスーパーやコンビニと連携することで再建しようとしたが、業績は低迷したままだった。22年2月期の最終利益は88億円の赤字で、3期連続の赤字に沈んでいた。セブン&アイ内部からは「百貨店は中途半端な設備投資ではすぐに陳腐化し、生き残れない。資金力のあるファンドに任せた方が良い」(幹部)との声が出ていた。
■改装200億円以上
フォートレスは11日、「西武池袋本店(東京都豊島区)を含む店舗の改装と設備投資に200億円以上を投じる予定だ」などとするコメントを出した。家電量販店大手ヨドバシHDと連携し、そごう・西武の再建を進める計画だ。
関係者によると、ヨドバシが西武池袋本店と西武渋谷店(東京都渋谷区)、そごう千葉店(千葉市)の一部を取得する案が出ている。
このうち西武池袋本店は、ヨドバシが建物のほとんどを取得するとみられる。1階などに家電量販店を出店したうえで、百貨店全体をヨドバシが運営する可能性がある。
そごう・西武の従業員約4500人は店舗に残るほか、セブン&アイ内での配置転換やヨドバシが一部を採用することが検討されている。「そごう・西武の屋号は歴史やブランド力があり、売却後も変わらないのでは」(交渉関係者)との見方があり、地方店ではフォートレスがテコ入れを進めるとみられる。
■激戦区
ただ、百貨店の経営環境は厳しい。ユニクロなどの専門店が台頭したほか、インターネット通販が拡大。1990年代前半に10兆円弱あった百貨店業界の売上高は2021年には4・4兆円と半減している。
訪日外国人客の増加で収益拡大が見込める銀座などの店舗を除くと、業界は苦戦が続いており、新たな体制のもとで百貨店そのものの魅力がどこまで上昇するかは見通せない。
ヨドバシにとって、今回の案件では数千億円規模の費用がかかる見通しだ。そごう・西武の店舗の立地の良さを踏まえて決断したとみられるが、出店が見込まれる池袋はビックカメラやヤマダデンキがひしめく都内随一の激戦区で、思惑通りに収益をあげられるかは不透明だ。