波紋広がる水着撮影会 埼玉の県営プールで中止要請も…一部撤回

埼玉県営公園のプールで予定されていた水着撮影会が、県の外郭団体の要請によって相次いで中止となった。
公序良俗に反するとして、県に会場の貸し出し反対を訴える政党もあり、主催者側からは特定の政治的主張の影響をいぶかる声も上がる。混乱が広まる中、12日には、県が外郭団体に一部の中止要請を撤回するように指導した。ただ、子育て世帯などに水着撮影会への抵抗感が根強いのも事実で、公共施設の利用ルールに一石を投じる機会となっている。(星直人)
《直前での開催中止となり誠に申し訳ございません》
今月10日、近代麻雀水着祭運営事務局がツイッターに投稿したイベント開催中止の告知が波紋を広げた。
取りやめとなったのは、越谷市にある県営の「しらこばと水上公園」のプールで24、25日に予定されているグラビアアイドルらの水着撮影会。県の外郭団体で公園を管理する県公園緑地協会が8日、県営公園での水着撮影会を一律に禁じるルールを打ち出したため、開催が難しくなった。
突然出されたルールによって、県営公園を会場としていた6つの撮影会が中止を余儀なくされた。
「性の商品化」批判
県営公園での水着撮影会は平成30年以降、延べ約120回にわたり開催されてきた。しかし、過去のイベントで未成年の参加や過激とみなされるポーズが確認されたことから、協会側は「全ての水着撮影会を公序良俗に反しないようにコントロールして開催することは困難」と判断。今月8日に県営公園での水着撮影会を一律に禁じる新ルールを設定し、それに基づき、予定されていた6つの撮影会を中止するよう各主催者に求めた。
新ルールが出る直前の6日には、しらこばと水上公園での撮影会に関し、公共の福祉の増進を目的とした都市公園法に反するとして、共産党県委員会が会場貸し出しを禁止するよう大野元裕知事に口頭で申し入れた。8日には書面でも提出している。
申し入れの書面では、入場料が1万円から3万6千円と高額で、過去のイベントの動画に水着姿の女性がわいせつなポーズやしぐさで映っているため、「『性の商品化』を目的とした興業」と主張している。
知事が要請撤回指導
SNS(交流サイト)などでは、こうした動きが公園側の判断に影響を与えたのではないかとの観測も広がった。大野知事は影響を否定したが、川越市にある県営の「川越水上公園」で中止となった撮影会を主催していたイベント会社の植田章太郎さんは「(県側の)政治団体の意見に左右されていないという説明には無理があるのではないか」といぶかる。
撮影会に参加予定だったモデルの蒼猫いなさんは「撮影会に参加していたモデルは会場で指定されていたルールを守っていた」と訴え、自身の活動が「性商品といわれていることは不本意だ」とも憤った。
ところが、事態は12日に一転する。県が11日に公園側に確認したところ、中止要請したイベントの中にはルールに違反していないものがあることが判明。大野知事は12日の記者会見で、一律に中止を要請したのは適切ではなかったとして、6つのイベントのうち、近代麻雀水着祭などを除く4つについては中止要請を撤回するよう公園側を指導したと明らかにした。公園側は、その日のうちに要請を取り下げた。
ただ、県営プールの利用者からは、水着撮影会を忌避する声も少なくない。次女の卒園遠足で公園を訪れたことがあるという男性会社員(50)は「水着の女性の撮影会はあまり子供に見せたいものではない。民間の施設ならともかく、公営の施設で行うのはどうかと思う」と話した。