就活「Webテスト」代行受検、依頼した人も書類送検 入社後、会社にバレたらどうなる?

就職試験で課されるWebテストを就活生本人ではない第三者が代行する「替え玉受検」がSNSで度々話題となっていたが、全国初とみられる逮捕者が出る事態となった。
朝日新聞などの報道によれば、替え玉受検したとして、警視庁が京都大学大学院卒業の男性会社員を私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで逮捕したと11月22日、発表したという。ANNの報道によれば、依頼した女子大生も書類送検された。
Webテストの不正をめぐっては、過去にも度々、SNSをにぎわせてきた。
2021年8月には、東大と京大があいついで、学生たちに注意喚起をおこなった。その際、東大の担当者は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し「仮に本学学が加担しているとすれば、本学学としてあるまじきことであり、 また仮に本学学でない者が本学学を騙って加担しているとすれば、本学ならびに本学学の名誉を傷つけるもの」と回答した。
今回は「替え玉受検」した側が逮捕となったが、代わってもらった就活生本人はどのような責任を問われる可能性があるのだろうか。加藤寛崇弁護士に聞いた。
–替え玉受検が発覚したら、どのような法的責任を負う可能性がありますか。
オンライン試験だと書面の答案は作成されませんが、電磁的記録に対応した処罰規定である電磁的記録不正作出・供用罪(刑法161条の2第1項)が成立することになります。
また一般には、替え玉を依頼した就活生本人も、替え玉と同じ電磁的記録不正作出・供用罪が成立する可能性があります。就活生本人が自ら採用試験の申込手続をとるなど替え玉受検行為の実行に関与していると考えられる場合には、単に依頼した立場にとどまらないためです。
–民事責任はどうでしょうか。
民事上の責任が追及されたケースは見当たりませんが、替え玉受検は企業の適正な採用手続を妨害する行為であり不法行為が成立し、賠償責任を負うと考えられます。
もっとも、どのような損害が生じたのか算定しづらいでしょうし、あえて企業が賠償請求まではしないことも多いと思われます。
–替え玉受検が入社後に発覚した場合はどうなるでしょうか。
入社後の場合だと、第一に「経歴詐称」に準じて懲戒解雇理由になることが考えられます。
経歴を偽ることが常に懲戒理由として成り立つわけではないものの、最終学歴詐称のような重大な経歴詐称であれば懲戒解雇理由として認められています。替え玉受検もこれに準じて考えることができるでしょう。
第二に、経歴詐称にせよ、替え玉受検にせよ、「このような経歴のある人」「試験で一定の成績を挙げたこの人」を採用するという企業の判断を誤らせて採用させる行為です。
そのため、そもそもの雇用契約に錯誤又は詐欺があり、雇用契約が取り消される理由になるという理屈も考えられます。
現実には、あえて当初の雇用契約の取消しとして扱うのではなく、懲戒解雇や退職させることで処理することが多いと思います。
取消しにすると、当初から雇用契約が成立していなかったことになるので当初から支払った給与の返還を請求できることになりますが、反面、労務の提供を受けた利益分の支払はすべきではないか、社会保険の加入も遡って取り消すべきではないか、といった事態が生じて、扱いが複雑になるという問題もあります。
【取材協力弁護士】加藤 寛崇(かとう・ひろたか)弁護士東大法学部卒。労働事件、家事事件など、多様な事件を扱う。労働事件は、労働事件専門の判例雑誌に掲載された裁判例も複数扱っている。事務所名:みえ市民法律事務所事務所URL:https://miecitizenlaw.com/