高3娘に「反抗期」が見られず逆に不安です…溜め込み続けて将来“反動”がくるのでしょうか?

子育てをしている過程でやってくる子どもの「反抗期」。2歳くらいの「イヤイヤ期」も大変ですが、「思春期」に見られる反抗期に悩む親御さんもたくさんいます。
しかし我が子の反抗のひどさに悩むご家庭もある一方で、年齢的には反抗期なのにまったくその気配がないことで心配されることもあるようです。そこで今回は反抗期の本来の意味を踏まえながら、思春期の反抗がある場合、ない場合の両方を見ていきたいと思います。
事例1:家具を殴って壊すことも……叱れば叱るほど逆効果の中1息子■相談者プロフィール相談者:父45歳家族構成:妻40歳、長男12歳、次男8歳、三男5歳
【相談内容】中学に入学後、急に親の言うことを聞かなくなりました。ゲームばかりして勉強はせず、言葉遣いも荒くなってきて、「命令ばかりせず、お前がやれば」というような生意気な口をききます。
学校も遅刻、早退、欠席が多く、ほぼ仮病。いじめが原因なのかと思って、学校や息子の友だちに相談しましたが、そういったことは至ってないようでした。
きちんとするよう、しつけようとすればするほど反抗も強くなっていくようです。祖父母には非常に良い孫であるようで、叱りつける私のほうが悪者扱い。親として厳しく教育しなければならないと思うことが多いのですが、叱れば叱るほどに逆効果になっているようで、非常に悲しいです。
家具を殴って壊すこともあり困っています。
反抗に真っ向勝負するのは逆効果にも……中学に入って、急に息子さんが反抗的な態度を取るようになったということ。大変なご様子が伝わってきます。この時期の反抗期は「第二次反抗期」といわれるものです。第一次反抗期であるイヤイヤ期が“自我の芽生え”の時期、そして第二次反抗期は“自我の確立”に向けた時期になります。 この時期は友だちからの影響を強く受けながら「自分探し」をしており、大人からの干渉を好まないことが多いものです。よって、友だちの前にいるのと、親の前にいるのでは、まるで態度が違うこともよくあります。 この時期のことを心理学者のホリングワースは「心理的離乳」と呼んでおり、子どもたちが親から心理的にも乳離れしようと試みる時期といいます。
しかし実際には、親に頼っていることがまだまだある年頃であり、しかも自分探しの途中ですから、葛藤を抱えたり、精神的にも揺れることが多くなります。そんなとき親に半人前に扱われたり、自分の領域に干渉されたりすると過剰に反応してしまうことがあるのです。 これは日本人だからという類のものではなく、人間の成長における一過程ですので、どこの国の子であっても通り過ぎる道です。この時期に親との距離や関係性が変化していくのは、ごく自然な成長の姿なのです。 ただ反抗の出方には個人差があります。今は、叱れば叱るほど逆効果になっているようですが、たしかにこの時期は大人からの干渉を好みませんから、真っ向勝負をしてしまうと、さらに反抗を強めることもあるでしょう。
しかしだからといって、学校を休んだり、家具を壊したりするのをそのまま見過ごすわけにはいきませんので、何らかの働きかけはしていきたいものです。 この時期の子は、相手によって向き合い方が違い、全員に反抗的というわけではないことも多くあります。この事例でも実際におじいちゃん、おばあちゃんとはいい関係を保てているようですね。
親として「責任を果たさないと」と思うからこそ言い方が強くなってしまうと思うので、少し距離を置けているご両親に力を貸してもらうのも一案でしょう。
また同じことを言うにしても、声のトーンや言い回しで伝わり方は変わってくるものです。目につくことを全部そのまま口にするよりも、その子を認めたり、一歩引いて見守ったりする間接的なアプローチの方が結果的に心理的離乳を促すため、改善につながることもよくあります。
今は、事を正そうとすることに追い込まれてしまっているため、余計に辛いでしょう。いい関係を保てている人に相談してみるのがいいように思います。
事例2:親への反抗が見られない高3長女、将来反動がないか心配です■相談者プロフィール相談者:母45歳家族構成:夫52歳、長女18歳
【相談内容】これまで子どもの「反抗期」ならではの言動を、目の当たりにしたことがほぼありません。確かに口数は少なくなってきましたが、10代後半という年齢にしては、学校のことや友人のことなどを親に話してくれる方だと思います。
子ども部屋も与えているのですが、リビングで勉強したり、スマホをいじったり、テレビを見たりしており、自室はほとんど使っていません。
私自身はこの時期にだいぶ親を困らせた記憶があるため、我が子がなぜこのような状態なのか心配になります。「反抗期」がないまま、大人になってしまうのでしょうか。
この時期特有の感情などを我慢してしまっていて、この先、大人になってからそういった感情が爆発してしまうのではないかと不安になってしまうことがあります。
自我を成長させる時期、「反抗期」という呼び名が誤解を生む?中学や高校の時期は親に反抗するのが普通で、我が子にその気配がないことに不安を感じる親御さんは多いようです。もしかしたら、「反抗期」という呼び名が誤解を招いてしまっているのかもしれません。
この時期の一番の目的は「自分とは?」の問いに答えながら自我を成長させていくことであり、反抗は一番の現象ではありません。反抗があるかないかよりは、その本質を見ていくことが求められます。 たとえば、子どもが自己主張できないほどに親の力が強いために、反抗が出ない(出せない)こともあるでしょうし、親が子どもを尊重していて、物事を穏やかに解決することが習慣化されている場合でも反抗があまり見られないことはあると思います。 もし、「親の望むいい子にならなくては」という思いからリビングで過ごしているのなら問題ですが、その子が好きで自室を使わないのであれば心配には及びません。
「反抗期」という呼称はいったん横に置き、「この子の自立は進んでいるかな?」という見方でお子さんを見てあげるといいのではと思います。
厳しすぎても甘すぎてもダメ、あたたかさと規律の“バランス”が大事心理学書「ヒルガードの心理学」には、青年期早期についてこのようにつづられています。
『規則について明白で、ゆるぎない態度を持つ、あたたかく支持的である権威のある親の場合、その子どもたちは青年期を通してほとんど大きな問題を起こすことはない
対照的に、権威主義的な親を持つ青年の場合(親が厳格な規則を持ち、子どもたちに対してあたたかさに欠ける態度をとる)、あるいはあまりにも甘すぎる場合、子どもはより多くの情緒的ないし行動的問題を示す傾向がある』
これで分かるのは、あたたかさの中にも規律があるというバランスが大事だということです。反抗があまりにもひどい場合は、そのバランスが厳しすぎか、甘すぎのどちらかに偏っているからかもしれません。 経験上、反抗期に入ってからそのバランスを整えるのはとても大変だと感じていますが、反抗という強い力に応戦してしまっても事は悪化するだけです。とくに小さい頃の反抗と違い、体も大きくなっている分、思わず手や足が出て、親が痛みを受けるというケースもあります。
学校のスクールカウンセラーや身内、そして専門家など、状況を理解してくれる存在を作ることは自分のメンタルを保つ上でも大事でしょう。思春期は、幼少期とはまた違う悩みになりがちなので、1人で抱え込まないことが大切になります。