〈「抜け道」はかえって遅くなる? 高速道路上の渋滞で気をつけたい“間違いだらけの渋滞対策”〉から続く
車での移動が増える夏の行楽シーズン、ゲンナリするポイントの一つが「駐車後の車内温度」である。キンキンに冷えていたはずの車内が、わずかな時間のうちに蒸し風呂状態になり、乗り込む度にドバッと汗が噴き出してくる。
【写真】この記事の写真を見る(2枚)
それもそのはず、真夏の車内温度は50℃を超え、ダッシュボード付近の気温は70℃を超える。生気を奪われる暑さに加え、シートベルトの金具などに触れてしまえば、ヤケドのリスクも考えられる。
車がいくら進歩しても、なかなか根本的な解決をみない炎天下の車内温度問題。どうにか防ぐ手立てはないだろうか。JAFによる実験データなどを参照しながら、真夏の駐車時に車内温度を下げるための対策や、乗車後になるべく早く車内を涼しくする方法について紹介する。
AFLO
炎天下における車内温度の上昇は、温室効果によってもたらされ、逃げ場を失った熱が密閉空間に充満することで生じる。この際の温度上昇はきわめて急激であり、JAFによる炎天下(気温35℃)の車内温度変化に関する実験においては、開始からわずか5分で10℃の温度上昇(25.5℃→35.5℃)が確認された。
また同実験では、熱中症の危険度を5段階で表す暑さ指数(WBGT)でみた場合、エアコン停止から15分後には最高レベルの「危険」ゾーンに達することが報告されている。
さらにスタンフォード大学の実験では、駐車中に生じる温度上昇分の80%は駐車直後30分のうちに生じるというデータも示されている。このように真夏のドライブにおいては、わずかな駐車時間でも車内が危険な状態になることを把握しておきたい。たとえ数分であっても、子どもやペットの車内放置は厳禁である。
真夏の屋外駐車における最善手は、当然ながら日陰を選ぶことである。気温32℃台の快晴時、日なたと日陰に駐車した車の車内温度を比較するJAFの実験においては、駐車後20分ほどから顕著な差がつきはじめ、駐車後60分にかけておおむね6℃から8℃の違いが生じている。さらにステアリングやダッシュボードなど、フロントウインドウ付近の温度差は15℃以上にもなる。
とはいえ当然、真夏の屋外駐車場において日陰のポジションは真っ先に埋まっていく。駐車場所に関する別の対策としては、「太陽がある方向になるべく車両の後方を向ける」というものもあるが、太陽の高度が高い状況ではあまり期待のもてない方法だ。
日なたに車を止める際のポピュラーな対策としては、フロントウインドウ内側に設置するサンシェードが挙げられる。実際の効果について、JAFはサンシェードをつけた車両と無対策の車両、少し窓を開けた車両の温度変化を比較する実験をおこなっている。
この実験では残念なことに、サンシェードの有無によって生じる車内温度の違いはおおむね2℃程度であった。対策なしの車の車内温度が最高で52℃、平均して47℃であったのに対し、サンシェードありの車は最高50℃、平均45℃と、顕著な差は生じなかったのだ。
しかし、サンシェードがまったく効果を発揮しなかったわけではない。とりわけダッシュボードまわりの温度上昇を防ぐ効果は大きく、無対策の場合に比べて20℃以上も低い数値を記録した。ハンドルやシフトノブなどの温度上昇を抑え、ちょっとした接触によるヤケドのリスクを予防するには有効だろう。
この実験において、もっとも温度上昇を抑えられたのは「窓を開けた車両」であった。対策なしの場合に比べ、最高温度で7℃、平均温度で5℃の違いが生じている。窓を開ける幅は3cm程度であったが、それでも車内の熱を逃がす効果が確認されたわけである。
一方で、窓を開けていても、ダッシュボードまわりの温度変化は無対策の場合と同様だった。この点では、窓開けとサンシェードの組み合わせも有効といえそうだ。
ただし問題は、窓を開けた隙間がわずかであっても、防犯上は大きなリスクになるという点である。ドアバイザーがあれば手や道具を入れることは難しくなるが、それでも車上荒らしなどに遭う危険性は高まるので、しばらく車を離れる際には推奨しにくい方法といえる。
さらに、先のスタンフォード大学の実験に関連する資料では、駐車中に窓を開けることでしばらくは温度上昇を防ぐ効果があるものの、駐車後50分以降は無対策の場合とほぼ同じ温度になってしまうというデータも残されている。こうした結果は実験条件にも左右されるだろうが、効果の面でも防犯の面でも、長く車を離れる際の「窓開け」は有効な対策とはいいがたい。
つまるところ、炎天下に駐車する限り、決定的に温度上昇を防げる方法はないといえる。そうなると、「乗車する際にどれだけ早く涼しくできるか」が問題になってくる。これについても、JAFがさまざまな方法を比較した実験データを公開しているので、参照してみよう。
実験で比較されている方法は、「ドアの開閉」「冷却スプレーの散布」「停車したままエアコンON(外気導入および内気循環)」「走行しながらエアコンON」の5つであり、いずれも車内温度55℃の状態から開始。やはり走行風の効果が得られる「エアコン+走行」がもっとも効果的で、開始から2分たたずに車内温度は30℃を下回った。 ただし、ドアの開閉による瞬間的な温度低下も顕著だった。ここで取り入れられているのは「助手席の窓だけを開け、運転席のドアを5回開閉する」というアナログな方法だが、47.5℃の地点までは「エアコン+走行」と同等のスピードで至っている。エアコンを使わず8℃近く温度を下げられるのなら、これを実践しない手はない。 つまりもっとも効率的な車内の冷やし方は、車の中に入る前にドアを何度か開閉して篭もった熱を逃がし、それからエアコンを最低温度に設定してすぐに走り出す、ということになるだろう。 この際、走行開始時点で窓を全開にし、エアコンは外気導入に設定してしばらく走行したあと、車内の熱が逃れしだい窓を閉めてエアコンを内気循環に切り替える、という流れがJAFによって推奨されている。 米国の非営利消費者組織が運営するコンシューマー・レポートにおいても、これと似た手順が紹介されている。こちらは「窓を全開にして10秒から20秒走行」「エアコンの設定温度を最低に」「冷たい風が循環しはじめたら前席の窓を閉めるが、後席側は空気が循環しにくいのでさらに10秒から20秒開けておく」という流れである。 なお、エアコンの内気循環は冷却効率に優れるが、車内の換気ができないので、長時間そのままにしておくとCO2濃度が上昇し、眠気や頭痛を引き起こすことがある。ある程度車内が冷えたら、外気導入に切り替えるとよい。車を離れる前に、今一度車内の確認を 繰り返しになるが、どのような方法をとるにせよ、車を離れる際に子どもやペットを車内に置き去りにするのは厳禁である。窓を開けてもサンシェードをしても、車内が危険な温度になることは避けられない。 さらに、夏場はもちろん、比較的気候の穏やかな日であっても、車内温度は想像以上に上昇する。JAFが最高気温23℃の日に実施したテストでは、車内温度が最高で48.7℃に達している。たとえ数分であろうが、あるいは曇りや雨の日であろうが、車内放置は御法度と肝に銘じたい。 生き物のほかにも、ライターやアルコール消毒液などは、高温により容器が破損する可能性もあるので、車内に取り残さないようにしよう。その他、スプレー缶や飲料缶、ペットボトル、リチウムイオンバッテリーなど、急激な温度変化の影響を受けやすいものがないか、車を離れる際には必ずチェックするようにしたい。 真夏の車内は、わずかな時間のうちに「命にかかわる温度」へと達する。急激な温度上昇が生き物や物質に及ぼす影響は、しばしば我々の想像を超えてくる。「まぁ大丈夫だろう」と思わずに、しっかりと多角的に対策を講じておくことが、夏場のお出かけには欠かせない。(鹿間 羊市)
実験で比較されている方法は、「ドアの開閉」「冷却スプレーの散布」「停車したままエアコンON(外気導入および内気循環)」「走行しながらエアコンON」の5つであり、いずれも車内温度55℃の状態から開始。やはり走行風の効果が得られる「エアコン+走行」がもっとも効果的で、開始から2分たたずに車内温度は30℃を下回った。
ただし、ドアの開閉による瞬間的な温度低下も顕著だった。ここで取り入れられているのは「助手席の窓だけを開け、運転席のドアを5回開閉する」というアナログな方法だが、47.5℃の地点までは「エアコン+走行」と同等のスピードで至っている。エアコンを使わず8℃近く温度を下げられるのなら、これを実践しない手はない。
つまりもっとも効率的な車内の冷やし方は、車の中に入る前にドアを何度か開閉して篭もった熱を逃がし、それからエアコンを最低温度に設定してすぐに走り出す、ということになるだろう。
この際、走行開始時点で窓を全開にし、エアコンは外気導入に設定してしばらく走行したあと、車内の熱が逃れしだい窓を閉めてエアコンを内気循環に切り替える、という流れがJAFによって推奨されている。
米国の非営利消費者組織が運営するコンシューマー・レポートにおいても、これと似た手順が紹介されている。こちらは「窓を全開にして10秒から20秒走行」「エアコンの設定温度を最低に」「冷たい風が循環しはじめたら前席の窓を閉めるが、後席側は空気が循環しにくいのでさらに10秒から20秒開けておく」という流れである。
なお、エアコンの内気循環は冷却効率に優れるが、車内の換気ができないので、長時間そのままにしておくとCO2濃度が上昇し、眠気や頭痛を引き起こすことがある。ある程度車内が冷えたら、外気導入に切り替えるとよい。
繰り返しになるが、どのような方法をとるにせよ、車を離れる際に子どもやペットを車内に置き去りにするのは厳禁である。窓を開けてもサンシェードをしても、車内が危険な温度になることは避けられない。
さらに、夏場はもちろん、比較的気候の穏やかな日であっても、車内温度は想像以上に上昇する。JAFが最高気温23℃の日に実施したテストでは、車内温度が最高で48.7℃に達している。たとえ数分であろうが、あるいは曇りや雨の日であろうが、車内放置は御法度と肝に銘じたい。
生き物のほかにも、ライターやアルコール消毒液などは、高温により容器が破損する可能性もあるので、車内に取り残さないようにしよう。その他、スプレー缶や飲料缶、ペットボトル、リチウムイオンバッテリーなど、急激な温度変化の影響を受けやすいものがないか、車を離れる際には必ずチェックするようにしたい。
真夏の車内は、わずかな時間のうちに「命にかかわる温度」へと達する。急激な温度上昇が生き物や物質に及ぼす影響は、しばしば我々の想像を超えてくる。「まぁ大丈夫だろう」と思わずに、しっかりと多角的に対策を講じておくことが、夏場のお出かけには欠かせない。
(鹿間 羊市)