「年齢も性別も関係ない」ロリータファッションに1800万円、50代男性がハマった“多様性の世界”

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「偏見なしで、とにかく着てみてほしい。年齢も性別も関係ないです」
【写真】「偏見なしで」ロリータファッションで街中に溶け込むオンプさん
そうはっきりと言い切るのは、ロリータファッション歴18年のオンプさん。50代の男性だ。普段はタクシーの運転手をしているが、休日はロリータファッションに身を包み、友人とイベントなどに出かける。
オンプさんがロリータファッションに目覚めたきっかけは、2004年に公開された映画『下妻物語』だという。ロリータファッションが大好きな女子高生(深田恭子)が特攻服を着た不良少女(土屋アンナ)と出会う物語で、世の中のロリータファッションの認知度を一気に上げた作品だ。
「下妻物語は、映画そのものの面白さはもちろんですが、作中で深田恭子ちゃんが着ていたお洋服が本当にかわいくて。素直に、自分も着てみたいなと思いました。でもそこから1年くらいはネットでお洋服を眺めているだけだったんですが、自分でも着れそうなサイズのお洋服を見つけて、思い切って通販で買ったんです。」(オンプさん、以下同)
最初は、自宅で着るだけのつもりだったが、
「代官山にあるロリータファッションのお店に行ってみたんです。そしたらお店の店員さんがとても優しくしてくれて。何着か買っているうちに、せっかくお洋服を持っているならお店に着てきてください、って言ってくれたんです。“え、着て行ってもいいの?”とびっくりしました。でもとても嬉しくて、そこからロリータファッションで外出するようになりました。今では普段着がほぼロリータになってます(笑)」
小さい頃から、アイドルが着ているふわふわのスカートの衣装が好きだった。ずっと頭の片隅で憧れ続けたお洋服を実際に着られるのが、ロリータ服だったという。
「ロリータのお洋服を来ていると、自分じゃないみたいで、所作まで変わってくるんですよ。元々ガサツな性格なんですが、物を大切にしたりとか、人に優しくなれたりするんです」
ロリータファッションは、全身コーディネートしたら10万円はかかるという。
「前は7~8万で全身揃えられたんですが、最近は世間の流れのとおり、ロリータ服も値上げされていて…。全身を揃えようとしたら、今では10万は余裕でかかってしまいます。でも可愛くて買っちゃうんですよね。特に靴は再販がないことがほとんどなので、買ったら壊さないように大切に履いています。ロリータ服が500着以上あるので、自宅はすごいことになってますよ(笑)。ほとんどが1年に1回着るか着ないかですけど、捨てられないんです。これまでに、1800万くらい使っていると思います」
ロリータファッションをしていて嫌な思いをしたことはあるか聞いてみた。
「今はほとんどないですが、昔は好奇な目で見られることもありました。昔、ロリータファッションで田舎の駅に降りたら、そこで通報されたみたいで(笑)。警察に職務質問されたことがあります。人生で初めての職務質問でしたね(笑)。
今は嫌な思いをすることはないです。強いてあげるなら、“写真撮ってもいいですか”って聞いてきてくださる人にOKを出すと、それを見た周りの人たちも一斉に撮り出すこと。特に外国人の方はすごいですね。あれはちょっと困ることかな。あと、ロリータ服って、着ているだけで大変なんですよ(笑)夏は暑いし、冬は寒いし。でも、それ以上に楽しいんです」
ロリータファッションの魅力をあらためて尋ねると、
「もう全部です、全部!
素晴らしさをうまく言葉にできないので、偏見なしで、一度だけ着てみてほしい。着てみたら、ほとんどの人は“すごい!”って思うはずです。その感情や、ロリータの服を着ることに、年齢も性別も関係ないです。私の知っている人で70代のロリータの方もいますが、本当に素敵なんですよ。私も、これから先もずっとロリータを続けていくつもりです」
心からロリータファッションを愛し、ポジティブに楽しんでいることが伝わってくる。
インタビュー中のオンプさんの語り口は、ゴルフや映画鑑賞などのいわゆる普通な趣味を語る50代男性と変わらなかった。
「偏見なしで」
オンプさんの言葉が響く。

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