子どもが生まれて初めて直面する「意味不明なルール」は、もしかしたら、学校の校則かもしれない。学習塾経営・プロ家庭教師の妻鹿潤さんによると、謎な学校校則に困惑した生徒・親から相談を受けることは少なくないそうだ。そこで今回は妻鹿さんに、理不尽な「校則」の実態や、そうした「ブラック校則」が生まれる理由について解説してもらった。
学習塾経営、プロ家庭教師として活動している私は、理不尽な校則についての相談をよく受けます。たとえば、地毛が黒でない生徒への「黒染め」の強制、ツーブロック禁止、白色以外の下着の禁止など、理不尽な校則を挙げていくとキリがありません。
いままで聞いた校則の中でも、最も理不尽なのは、次に挙げるようなルールです。- 登下校中に水分補給してはいけない- 真夏の体育館であっても、手や服、扇子などで扇いではいけない- 雨や雪で濡れた髪の毛を拭いてはいけない子どもたちは何でもない愚痴のように話しますが、猛暑の登下校中に水分補給を疎かにしたり、真夏の体育館で体温調整を禁止したりしたら、脱水症状や熱中症のリスクが高まります。濡れた髪の毛も放置すれば風邪の原因になるでしょう。逆に、そうしたリスクを踏まえたうえでも、あえて禁止しなければならない理由は思いつきません。こういった命や健康に関わる校則は、早急に見直す必要があります。学校や教育委員会に迅速な対応を求めるべきでしょう。大人の都合で作られていった「ブラック校則」こうした理不尽な校則の多くは、昭和の名残でしょう。当時の学校は校内暴力が吹き荒れるなど、いまと比べてかなり荒れていました。時代的にも「力尽くで子どもをコントロールする指導が当然」と考える教師・親が少なくない状況でした。さらに高度経済成長期の「大量生産」の時代には、決まった製品を大量に、効率良く作り出すための組織・人材が求められていました。そうした時代には、個性や創造力よりも「規律」や「調和」が重視され、学校でも手っ取り早く子どもたちに言うことを聞かせるための校則が作られていました。これは、現場の教師にとっても都合がよかった。いちいち物事の善し悪しを生徒に考えさせるよりは、「校則で決まっているから」と指導するほうがはるかに「楽」だからです。そうして、生活の細かいところまでが校則で定められていくようになりました。校則とは違いますが、プロ家庭教師としてよく遭遇するエピソードに、「学校で習っていない方法で問題を解いたら怒られた」「学校で習っていない漢字を使ったら×を付けられた」というものがあります。これも、学校で習うことが全てであり、そこからはみ出したものは一切許さないという、昭和の価値観の名残と言えます。しかし、今はもう令和です。高度経済成長期が終わり、30年来の経済停滞が続く現代日本で求められているのは、言われたことに黙って従う従順な人ではなく、自分で考え創造していくことができる人です。社会に出てから「校則」はありません。決められたことを鵜呑みにするのではなく、「なぜ必要なのか?」を考えられる人になれるよう、学校での生徒指導の在り方を見直す必要があるでしょう。結局、社会の空気を変えていくためには、昔の価値観で育てられた大人たち自身も「物事を鵜呑みにせず、自ら考える姿勢」を、自ら実践して、子どもたちに見せていく必要があるのかもしれません。近影【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)大手教育会社にて長年勤務の後、個別指導塾を起業。16年でのべ1600人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。現在は塾コンサル・プロ家庭教師紹介・不登校・発達障害の生徒の個別指導の他、キャリアアドバイザーとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。
学習塾経営、プロ家庭教師として活動している私は、理不尽な校則についての相談をよく受けます。たとえば、地毛が黒でない生徒への「黒染め」の強制、ツーブロック禁止、白色以外の下着の禁止など、理不尽な校則を挙げていくとキリがありません。
いままで聞いた校則の中でも、最も理不尽なのは、次に挙げるようなルールです。
– 登下校中に水分補給してはいけない- 真夏の体育館であっても、手や服、扇子などで扇いではいけない- 雨や雪で濡れた髪の毛を拭いてはいけない
子どもたちは何でもない愚痴のように話しますが、猛暑の登下校中に水分補給を疎かにしたり、真夏の体育館で体温調整を禁止したりしたら、脱水症状や熱中症のリスクが高まります。濡れた髪の毛も放置すれば風邪の原因になるでしょう。
逆に、そうしたリスクを踏まえたうえでも、あえて禁止しなければならない理由は思いつきません。こういった命や健康に関わる校則は、早急に見直す必要があります。学校や教育委員会に迅速な対応を求めるべきでしょう。
こうした理不尽な校則の多くは、昭和の名残でしょう。当時の学校は校内暴力が吹き荒れるなど、いまと比べてかなり荒れていました。時代的にも「力尽くで子どもをコントロールする指導が当然」と考える教師・親が少なくない状況でした。
さらに高度経済成長期の「大量生産」の時代には、決まった製品を大量に、効率良く作り出すための組織・人材が求められていました。そうした時代には、個性や創造力よりも「規律」や「調和」が重視され、学校でも手っ取り早く子どもたちに言うことを聞かせるための校則が作られていました。
これは、現場の教師にとっても都合がよかった。いちいち物事の善し悪しを生徒に考えさせるよりは、「校則で決まっているから」と指導するほうがはるかに「楽」だからです。そうして、生活の細かいところまでが校則で定められていくようになりました。
校則とは違いますが、プロ家庭教師としてよく遭遇するエピソードに、「学校で習っていない方法で問題を解いたら怒られた」「学校で習っていない漢字を使ったら×を付けられた」というものがあります。これも、学校で習うことが全てであり、そこからはみ出したものは一切許さないという、昭和の価値観の名残と言えます。
しかし、今はもう令和です。高度経済成長期が終わり、30年来の経済停滞が続く現代日本で求められているのは、言われたことに黙って従う従順な人ではなく、自分で考え創造していくことができる人です。
社会に出てから「校則」はありません。決められたことを鵜呑みにするのではなく、「なぜ必要なのか?」を考えられる人になれるよう、学校での生徒指導の在り方を見直す必要があるでしょう。
結局、社会の空気を変えていくためには、昔の価値観で育てられた大人たち自身も「物事を鵜呑みにせず、自ら考える姿勢」を、自ら実践して、子どもたちに見せていく必要があるのかもしれません。
近影
【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
大手教育会社にて長年勤務の後、個別指導塾を起業。16年でのべ1600人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。現在は塾コンサル・プロ家庭教師紹介・不登校・発達障害の生徒の個別指導の他、キャリアアドバイザーとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。