1000万円が回収不可能に…“悪徳マルチ商法”被害者が語った怒りの声「GAFAを超えていくに乗せられた」

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コロナ禍で収入が減った人や生活が不安定になった人が増えている。そんな人たちを狙うのが、いわゆるマルチ商法。2022年10月には、違法な勧誘活動を行っていたとして、消費者庁が日本アムウェイに対し、一部業務の6か月間停止を命じた。 国民生活センターの発表によれば、具体的な商品ではない投資や情報商材などの儲け話をうたった「モノなしマルチ商法」の被害相談は、昨年度3353件寄せられ、ほぼ半数を10~20代が占めている。
なぜマルチ商法の被害は減らないのだろうか。今回話を聞いたAさん(50代)と、Bさん(50代)も、マルチ商法の被害に遭い、現在は集団訴訟を検討しているという。それぞれの意見を聞いた。
◆約50万円払って秘書をつけられるサービス
現在50代のAさんは結婚後、息子3人を育てあげ、現在は実母との3人暮らしだ。マルチ商法にハマるきっかけは、知人からの「49万5000円を払って秘書をつけませんか」という誘い話からだったという。
「私は全く必要ないと思ったのですが、『とにかく話だけでも聞いてくれ』としつこく言われたので、友人と一緒に話を聞きました。それはL社のたった1回49万5000円を払ってコンシェルジュサービスが使え、権利収入をもらい続けるという携帯のアプリを商材にしたサービスでした」
Aさん曰く、「L社は、実在していないものや仕組みを、あたかも実現するかのように語る、ビジョン系マルチ商法だった」という。その事業内容は、一流クレジットカードの一部の富裕層が受けられるような、飛行機やホテルの予約代行といったコンシェルジュ的なサービスを低価格で一般人に提供していくものだった。
◆5口分の49万5000円を出資
「L社は出資者を募集していました。出資者はオーナーと呼ばれ、集めたお金は半年後に公開される予定のアプリ開発費、コンシェルジュのお給料、オーナー募集〆切後の一般ユーザー募集のためのテレビ広告費に使われるはずでした。一般有料会員が増えれば、何もしなくても会費の半分がオーナーたちに分配金として毎月分配され続けるということでした」
実は、Aさんは過去にもマルチ商法に参加したことがあるという。そのときは毎月1万~2万円を払っていたが、全然儲からずにやめたそうだ。
「でも、今回は毎月支払い続けると言うのではなく、一度まとまった額を払うだけと言うので、わかりやすいと思ったんです。一緒に聞いた友人も『1回だけ払うだけなら……』ってことで、とりあえず5口分の49万5000円をそれぞれ出資しました。1口より断然お得だからという理由で、5口で登録が当たり前だったんです」
◆L社からさらなる出資を要求される
しかし、Aさんが出資金約50万円を支払うと、「レベルによってもらえる額がもっと増えるから」「もっとレベルを上げられるように、合同会社を作って出資金を増やすように」と勧められたという。個人は1~5口しか出資できないが、法人は無制限で出資できるからとL社からさらなる出資を要求されたのだ。
「しかも、『オーナー募集〆切は目前、アプリはもうほぼ完璧な状態まで完成しつつあるから!』と言われました。ZOZOTOWNやメルカリを例にあげて『ITの儲けはとてつもない金額になるから……』と説明され、家族や友達も紹介し、レベルを上げ、さらに法人にもしてお金を出資しました。つい、日本も活気を取り戻し、分配金ももらえてみんな幸せに暮らせるという夢を見させられました」

◆飛行機の予約をコンシェルジュに頼もうと…
そんなAさんと集団訴訟を起こそうとしているのが、もう1人の被害者であるBさん。50代の独身だという。
「L社を知ったきっかけは、たまたま知り合った女性とお茶をしたときです。海外によく行くので、飛行機の予約をコンシェルジュに頼めたらいいなと思って話を聞きました。Aさんと同様、『1口50万円で出資者を募っている』と言われ、2か月だけですが、自分も500万円弱出資したり、知人にお金を出してもらったりしました。なかには1000万円前後のお金を出してくれた知人もいて大変困っています」
編集部では、事実関係についてL社に電話で問い合わせた。すると、メールにて回答があった。
◆事実関係についてL社に問い合わせると…
L社の担当は「当社はサービス提供企業であり、『出資』を募った事はありません」と回答し、次のように続けた。
「リサーチされた方の無知もしくは故意により、当社サービスへの営業にともなう報酬や謝礼の事を言われている可能性があります。こちらは当社会員に対して、営業に伴う報酬は約束しておりますが、出資は受けておりませんし、当然の事ながら配当もおこなっておりません」
しかし、編集部が入手した映像には、代表が「あと20日しかないです。次は2000人集めたパーティがあります。僕らが、次のステージにはばたくまで、全力でレベルを上げてください」と、出資を募る様子が撮影されている。
◆「裏切られた気持ちでいっぱいです」
「L社が勧めるままに100万円以上を出資し、レベル10まで上がったいる人もいる」(Bさん)という。だが、まだ配当が届いていないという。なぜAさんも、Bさんもだまされてしまったのか?
「私としてはIT企業に出資している気持ちでした。L社代表の講演も聞きましたが『(米国超大手IT企業の)GAFAを超えていく』とよく言っていて、口がうまいからつい信じてしまったんです。会員を増やして、もっと便利な世の中にしたいという社会貢献の気持ちもありましたが、裏切られた気持ちでいっぱいです」(Aさん)
「コンシェルジュサービスが繁盛すると、キックバックがあり、ゆくゆくは『有名なホテルやテーマパークもコンシェルジュや決済サービスが使えるようになるから、頑張って提携店を増やしてほしい』と言われていたんです。決済を行うためのアプリも開発されていて、実際に店舗で使って、支払いすることもできました」(Bさん)
◆2億円かけたパーティを開くはずが
とはいえ、編集部が確認したところ、この決済サービスが使えるのは全国で十数店舗のみ。また開発も延期が相次いでいて「事実上、開発ストップした状態」だという。
このアプリの開発がストップしたことについて、L社はこう回答した。
「アプリの機能については、随時調整をいれていますが、サービスは通常通り24時間提供しております。現在当社は●●●●●●(※実際の文面では全て実名。以下同)にくわえ、突撃youtuber、●●●●をはじめ●●●●他、違法行為含む不実による業務妨害をうけております。そして、それらの行為によって現在、新サービスの遅延などが発生しておりますが、当社としては、適正に対応すべく努力しているしだいです。弊社は刑事及び民事による対応を準備しておりますし、幇助している者についても個人法人を問わず厳正に対処させて頂く所存です」
業務妨害を受けているというL社の回答に対し、会員の中からは「私たちはただ誠実に対応しているだけ。不実はどっちなんだと呆れてしまいます。今は、社名も変えて契約移管中で、アプリにログインも誰もできない状態です」という証言もある。
◆「ただ誠実に対応しているだけです」
「銀行口座は今も止まっています。その理由の説明はありません。しかも東京にあった事業所が突然閉鎖になってしまいました。また昨年7月には2億円をかけた7000~8000人規模のパーティが行われるはずだったんです。しかし、やる・やらないで大揉めの結果、規模も1000人弱に縮小され、パイプ椅子に座らされるような、しょぼいパーティになっていました。
しかも、代表がZoomで登場して、『この中に裏切り者がいる』と突然言い出し、会社でクーデターが起きているようでした。事実、そのあと行政処分が下されていました」(Aさん)
これまで2人は、知人の出資と合わせて1億円近くをL社から指定された口座にお金を支払っていた。しかし、突如として入金ができなくなったという。そうしてL社から突如としてはしごを外されてしまった2人は「集団訴訟を検討している」と語る。
勧誘時の説明を真に受けたことを今では後悔しているという2人。事態が解決に向かう日は訪れるのだろうか……。

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