“夫婦のレス問題”がテーマの新ドラマ「あなたがしてくれなくても」(木曜夜10時、フジテレビ系)は、4月13日の初回放送から賛否を巻き起こしている。数々のレス夫婦の相談を受けてきた家族問題評論家の池内ひろ美さんは、このドラマをどう見るのか。
【写真9枚】レス解消のために「奈緒(28)」が選んだ下着の色は家族で見るには気まずい「あなたがしてくれなくても」の主演・奈緒(28)演じる吉野みちは、結婚して5年になる夫・陽一(永山瑛太、40)とのレス問題に悩む。
「レスをテーマにしたドラマをキー局が作るなんて、率直に言って勇気があるなと思いました。しかも、深夜帯の放送やネット配信でも無いですからね。リビングで家族と一緒に見るには気まずい内容で、特に男性は見たくないでしょうね」と池内さん。「あなたがしてくれなくても」公式Twitter(@anataga_drama)より たしかに1話の平均世帯視聴率が5.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と奮わなかった。「夫婦の中でも、レスの話題は出しづらいもの。ドラマを見ながら『そういや私たちも……』なんて言われる状況は避けたいですよね。特に、年齢とともに性機能が衰えた男性からしたら、絶対に触れられたくない話題です」異性に相談はNG 池内さんは、夫婦・家族問題の専門家としてさまざまな相談を受けてきた。「レスに悩む夫婦は本当に多いです。相手を拒否するのは夫と妻、どちらのパターンもあります。レス問題の難しいところは、他の夫婦のトラブルと比べても、愚痴のように身近な人に簡単に相談できないことです。例えば、仲が良い女同士で集まっても、恥ずかしくて話せないという人は多い。表向きには順調に見える夫婦でも、実はレスということも多いでしょう」 ドラマ第1話で、主人公は、岩田剛典(34)演じる会社の先輩にレス問題を打ち明けた。実はその先輩も妻・田中みな実(36)との間に同じ悩みを抱えているというが……。「女性が異性にレスの悩みを打ち明けるなんて、もってのほかですね。浮気の誘いだと勘違いされるでしょう。妻が第三者に相談していることを知って、夫が怒ったり傷ついて、さらに夫婦仲がこじれるということも大いにありえると思います」刺激的な下着では解決しない理由 日本性科学会では、レスを性的な触れ合いが1カ月以上ないことと定義している。「1カ月と聞くと短いと感じるかもしれません。ですが、レスの期間が長くなれば長くなるほど、それが当たり前になってしまい、改善することが難しくなると思います。普段の生活では気恥ずかしくなって出来ないなら、旅行に行ったりホテルに泊まるなどして、なるべく早くきっかけを作ることが大事です」 ドラマでは、レス解消のために主人公が下着を買うシーンがあるが、「レスに悩む妻が、新しい下着を買う、寝る時にも化粧をするといった方法で解決しようとすることがありますが、露骨なアピールは逆効果になることも多いです。もちろん身ぎれいにして女性らしく振舞うということ自体は意味があると思いますが、男性はプレッシャーに弱い。そもそも妻側が『女性として見られない』ことが原因だと勝手に思っているだけで、問題は別のところにあるということもあります」 ドラマの主人公のように夫側が拒否する場合、どのような原因が考えられるのだろうか。「外に女性がいるというパターンが多いですが、浮気をしていない場合も、もちろんあります。性的な部分に関しては、とにかく男性は繊細なんです。自分の能力に自信を無くしていたり、過去に妻に断られた経験が尾を引いていたり……。女性からしたら、ものすごく些細なことで傷ついて、それがきっかけになっていることが多い。結婚生活が長くなると、お互いに遠慮が無くなるのは仕方がありませんが、妻が結構きついことを日常的に言っていて、夫がそれにへそを曲げているということもあります」 子どもが生まれたことがきっかけになることも多い。「特に出産後は、ホルモンの影響で女性が情緒不安定になったり、夫に口うるさく言ってしまうことも多いですよね。小さな子どもを守り育てないといけないから当然なんですが、子どもが生まれたことがきっかけでギスギスした空気になり、そのままレスになることもよくあるパターンです」レス問題の解決策とは?「どんな夫婦にもレスのきっかけはある」と池内さんは言う。「夫婦の不幸なところは、結婚するまで2人の性生活に関する感覚が本当に一致するかは分からないということです。付き合っているときは、体調が良い時に、いつもより少し素敵な姿でデートしますよ。でも夫婦となれば日常を一緒に過ごすわけですから、良い時も悪い時もある。相手がジャージでダラダラしている姿やダサいところも見なければいけないのが生活というものなんですけど、想像していたものとギャップを感じるということは男女ともにあると思います」 それでは、レス問題の解決策は何だろうか。「残念ながら、これをやればOKというものはありません。夫婦と言っても人間関係ですから、妻の性格、夫の性格、夫婦の関係性によって、有効な策が違います。自分から誘うのか、誘われるように仕向けるのか、またレスの悩みを話し合った方がいいのか、自然とそういう空気を作った方が良いのか……上手くいく方法は夫婦それぞれ違うと思います。デリケートな問題だからこそ、カウンセラーのような第三者に助言を求めるのも有効です」 一方で、さまざまな夫婦にも共通する対策はある。「夫婦はお互いに『自分を大切にしてほしい』と思っています。逆に言えば、『大切にされていない』と感じた時に、関係が悪くなりレスにも繋がる。基本的なことですが、レスの対策としては夫婦がお互いを大切にするということだと思います。日中仲が悪いのに、夜だけ仲良くというのは無理ですから」 最後に、池内さんはドラマにこんな期待を寄せる。「ドラマの視聴率は苦戦するかもしれませんが、漫画はヒットしているので、夫と一緒には見られなくても、配信で見るという女性も多い気がします。レス問題という、ある意味タブー視されてきたテーマを扱うことで、時代が変わるきっかけになるのではと期待しています」デイリー新潮編集部
「あなたがしてくれなくても」の主演・奈緒(28)演じる吉野みちは、結婚して5年になる夫・陽一(永山瑛太、40)とのレス問題に悩む。
「レスをテーマにしたドラマをキー局が作るなんて、率直に言って勇気があるなと思いました。しかも、深夜帯の放送やネット配信でも無いですからね。リビングで家族と一緒に見るには気まずい内容で、特に男性は見たくないでしょうね」と池内さん。
たしかに1話の平均世帯視聴率が5.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と奮わなかった。
「夫婦の中でも、レスの話題は出しづらいもの。ドラマを見ながら『そういや私たちも……』なんて言われる状況は避けたいですよね。特に、年齢とともに性機能が衰えた男性からしたら、絶対に触れられたくない話題です」
池内さんは、夫婦・家族問題の専門家としてさまざまな相談を受けてきた。
「レスに悩む夫婦は本当に多いです。相手を拒否するのは夫と妻、どちらのパターンもあります。レス問題の難しいところは、他の夫婦のトラブルと比べても、愚痴のように身近な人に簡単に相談できないことです。例えば、仲が良い女同士で集まっても、恥ずかしくて話せないという人は多い。表向きには順調に見える夫婦でも、実はレスということも多いでしょう」
ドラマ第1話で、主人公は、岩田剛典(34)演じる会社の先輩にレス問題を打ち明けた。実はその先輩も妻・田中みな実(36)との間に同じ悩みを抱えているというが……。
「女性が異性にレスの悩みを打ち明けるなんて、もってのほかですね。浮気の誘いだと勘違いされるでしょう。妻が第三者に相談していることを知って、夫が怒ったり傷ついて、さらに夫婦仲がこじれるということも大いにありえると思います」
日本性科学会では、レスを性的な触れ合いが1カ月以上ないことと定義している。
「1カ月と聞くと短いと感じるかもしれません。ですが、レスの期間が長くなれば長くなるほど、それが当たり前になってしまい、改善することが難しくなると思います。普段の生活では気恥ずかしくなって出来ないなら、旅行に行ったりホテルに泊まるなどして、なるべく早くきっかけを作ることが大事です」
ドラマでは、レス解消のために主人公が下着を買うシーンがあるが、
「レスに悩む妻が、新しい下着を買う、寝る時にも化粧をするといった方法で解決しようとすることがありますが、露骨なアピールは逆効果になることも多いです。もちろん身ぎれいにして女性らしく振舞うということ自体は意味があると思いますが、男性はプレッシャーに弱い。そもそも妻側が『女性として見られない』ことが原因だと勝手に思っているだけで、問題は別のところにあるということもあります」
ドラマの主人公のように夫側が拒否する場合、どのような原因が考えられるのだろうか。
「外に女性がいるというパターンが多いですが、浮気をしていない場合も、もちろんあります。性的な部分に関しては、とにかく男性は繊細なんです。自分の能力に自信を無くしていたり、過去に妻に断られた経験が尾を引いていたり……。女性からしたら、ものすごく些細なことで傷ついて、それがきっかけになっていることが多い。結婚生活が長くなると、お互いに遠慮が無くなるのは仕方がありませんが、妻が結構きついことを日常的に言っていて、夫がそれにへそを曲げているということもあります」
子どもが生まれたことがきっかけになることも多い。
「特に出産後は、ホルモンの影響で女性が情緒不安定になったり、夫に口うるさく言ってしまうことも多いですよね。小さな子どもを守り育てないといけないから当然なんですが、子どもが生まれたことがきっかけでギスギスした空気になり、そのままレスになることもよくあるパターンです」
「どんな夫婦にもレスのきっかけはある」と池内さんは言う。
「夫婦の不幸なところは、結婚するまで2人の性生活に関する感覚が本当に一致するかは分からないということです。付き合っているときは、体調が良い時に、いつもより少し素敵な姿でデートしますよ。でも夫婦となれば日常を一緒に過ごすわけですから、良い時も悪い時もある。相手がジャージでダラダラしている姿やダサいところも見なければいけないのが生活というものなんですけど、想像していたものとギャップを感じるということは男女ともにあると思います」
それでは、レス問題の解決策は何だろうか。
「残念ながら、これをやればOKというものはありません。夫婦と言っても人間関係ですから、妻の性格、夫の性格、夫婦の関係性によって、有効な策が違います。自分から誘うのか、誘われるように仕向けるのか、またレスの悩みを話し合った方がいいのか、自然とそういう空気を作った方が良いのか……上手くいく方法は夫婦それぞれ違うと思います。デリケートな問題だからこそ、カウンセラーのような第三者に助言を求めるのも有効です」
一方で、さまざまな夫婦にも共通する対策はある。
「夫婦はお互いに『自分を大切にしてほしい』と思っています。逆に言えば、『大切にされていない』と感じた時に、関係が悪くなりレスにも繋がる。基本的なことですが、レスの対策としては夫婦がお互いを大切にするということだと思います。日中仲が悪いのに、夜だけ仲良くというのは無理ですから」
最後に、池内さんはドラマにこんな期待を寄せる。
「ドラマの視聴率は苦戦するかもしれませんが、漫画はヒットしているので、夫と一緒には見られなくても、配信で見るという女性も多い気がします。レス問題という、ある意味タブー視されてきたテーマを扱うことで、時代が変わるきっかけになるのではと期待しています」
デイリー新潮編集部