「女の盛り」は40代まで?「おばさんでごめん」と自虐するけど他人に言われると腹が立つ

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今年の第95回アカデミー賞授賞式で、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』が作品賞や監督賞を含む7部門で受賞した。主演女優賞を獲得したのは、主人公エヴリン役を演じたミシェル・ヨーさん(60歳)。ヨーさんはマレーシア出身の中国系女優。アジア系女性がこの賞を受賞するのに95年もかかったとネットは大騒ぎとなった。
彼女は、少年少女にとって、この受賞は希望と可能性を意味する良い事例になるでしょうと語り、さらに「女性たちよ。どうか誰もあなたに『女盛りを過ぎた』なんて言わせないで」と話して大喝采を浴びた。
これは、その少し前(2023年2月)にCNNの朝の番組でアンカーのドン・レモン氏が「女の盛りは40代まで」と発言して大炎上したことに対する皮肉だと考えられている。
ヨーさんは、アカデミー賞の前哨戦ともいわれるゴールデングローブ賞(2023年1月)でも主演女優賞を受賞、その時のスピーチでも「昨年私は60歳を迎えた」「女性は年齢の数字が大きくなればなるほど、機会に恵まれることは少なくなる」と話している。年を重ねるごとに、さまざまな機会が失われていくことを問題視していた。
60歳になった女性が自虐的に何かを言うことはあるだろう。若い人たちに囲まれたときには、どうしてもつい一言、「おばさんですみません」的なことを言いたくなるものだ。だが、それを他人に言われるのは腹立たしい。
会社の飲み会でブチ切れた「私も年齢で差別されるのが我慢できず、何度か仕事上、キレていますね(笑)」
そう言うのは、マナミさん(57歳)だ。大学卒業以来、今の会社一筋で勤めてきた。会社への思い入れも強かったが、ここ数年、無神経な同世代に悩まされている。
「20代、30代の若手たちは差別もしないし、ごく普通に話してくれる。飲み会にも誘ってくれますしね。でも同世代がダメなんです。昨年暮れ、久々に忘年会があったんですが、そのときも50代の部長が挨拶の中で、『うちの部は若手が頑張ってくれている。まあ、若干一名、平均年齢を上げている人がいますが』と私を見たんですよ。周りはしらーっとしてました。
思わず私、『あんただって同世代でしょうが』と笑いながら言ってしまいました。実は部長は私の後輩だから。すると周りの女性たちが思わず拍手、男性たちもヒューヒューと口笛を吹いたりして」
一応、和やかに進んだように見えたが、マナミさんは実際には憤っていた。隣にいた30代女性が「ああいうのって、本当にムカつきますよね」と言ってくれたのが救いだった。
「男は、ああいうことをどういう神経で言うんでしょうね。妻に対しても言うのでしょうか。女性が年をとったら女性として認められない世の中って、男性も結局は自分で自分の首を締めるようなことになるんじゃないでしょうか」
年齢による差別はいけないと誰もがわかっているのに、女性の年齢に対しては世間は厳しい。
若手を引き立てなければいけない立場なの!?5人の女性部下を率いてチームリーダーとして社内で活躍しているヨリコさん(58歳)も、同じような経験を多々している。
「役員たちに私たちが取り組んでいる仕事の説明をする場面があったんです。他はみんなチームリーダーが説明していたので、当然、うちのチームも私がしたんですが、『みなさん、大丈夫ですか。ヨリコおばさんにいじめられていませんか』と役員のひとりが言い出して騒然となりました。
おそらく役員は冗談のつもりだったし、それで若い女性たちの気を引こうとしたんだと思う。他のチームはみんな男性リーダーで部下に女性がひとりふたり混じっているという状態。うちだけが会社が特別に取り入れた女性だけのチームだったんです。だからといって、ああいう言い方はないですよね」
ムッとしているヨリコさんを尻目に、チームの若手女性が「私たちはヨリコさんがリーダーだから、まとまって仕事に取り組むことができています」とさらりと答えた。
「ムッとして何も言えなかった私より、彼女のほうがよほど大人だなと思いました。若手女性のほうが、うまく反論する術をもっている。私だったら『ふざけるなよ』とケンカを売るような場面ですけどね」
若手が頼もしいとヨリコさんは目を細めた。
人は誰もが年をとる。男性が同世代や年上の女性を貶めるのは見ているだけで苦々しい。ミシェル・ヨーさんの例でもわかるように、世界はまだまだ女性に厳しい。

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