20代後半で発達障害と診断された漫画家が語る、生きづらさと「ADHDでよかったこと」

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厚生労働省が2018年に公表した「平成28年生活のしづらさなどに関する調査」によると、医師から「発達障害」と診断された人は約48万人いると推計され、診断を受けていない人も含めると、800万人以上いるという試算もある。『発達障害の人が見ている世界』(アスコム)の著者で精神科医の岩瀬利郎さんはこう話す。
【漫画で解説】モンズースーさんが自身の状況を漫画にて説明する「脳の機能の特性にはさまざまあり、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などが挙げられます。これらを総称して“発達障害(神経発達症)”といいます。

発達障害の人は、人の気持ちを想像する眼窩前頭皮質、感情表現を担う大脳辺縁系、行動を司る前頭葉、共感や自己意識に関係する島皮質の働きが弱い傾向にあります」 これらはコミュニケーションに関わる部分であり、本人と周囲の人の理解や適切な対応も必要となってくる。自身がADHDだという漫画家・モンズースーさんに、発達障害の人がどう見られ、どう扱われ、どんな思いを抱いてきたのか、語ってもらった。長男の1才半健診で自身の発達障害を知る 結婚して3年目に長男を授かったというモンズースーさん。息子の1才半健診の際、保健師から、「発達が遅れている」 と指摘された。それはどういうことか──。調べているうちに、「発達障害」という言葉を知った。「発達障害について調べてみると、空気が読めない、集中力が続かない、人の顔が覚えられない、気が散りやすいなどの特徴が書いてありました。そのときに“これは私のことだ”と思い至ったのです」(モンズースーさん・以下同) そして、精神科を受診。20代後半にして、自分がADHDだったと知った。「これまで私は、自分にずっと違和感を抱えていました。不器用で何をするにも人より遅い。得意な図工もアイディアがよくても最後まで集中して仕上げられない。激しいかんしゃくを起こすことも多かったし、人の目を見て話せないこともありました。忘れものも多く、ランドセルを忘れて帰ったこともありました」 そんな自分を大らかに見守ってくれた母親のおかげで、子供の頃はまだ受け入れられてきた。しかし、成長するにつれて問題が……。「特につらかったのは中学や高校時代。女子は集団行動が基本で、ちょっとした失言で仲間外れにされます。私は、他人や流行への興味が薄いからうまく立ち回れず、行動を否定されてばかり。高校では授業についていけず、ノートをとることすら難しいこともありました」 専門学校卒業後は、倉庫内の仕分け、居酒屋のホール担当、リゾートバイト、介護、製造などの仕事をした。「働くのは好きなのですが、飽きやすく、それで辞めたことも。 なんで私はほかの人のようにできないんだろう、人に嫌な思いをさせてしまうんだろうと悩みました。大人になると空気も多少は読めるようになり、何が悪かったのかはわからなくても、違和感は察知できるんです。 ちょっとした言動で、変な目で見られたり、否定されることもあり、とにかく毎日とても疲れていました」 人に気持ちを伝えることが苦手で、相談もできなかった。「診断されたときは、腑に落ちたところもあります。投薬治療の選択肢もあるとわかり気が楽になりましたし、予防できることもあると知ると、安心できました」「~すべき」という言葉はなるべく使わない ADHDでよかったこともあるという。それは、次々と新しいことに挑戦できる点だ。これは多動傾向といわれるが、おかげで、発達障害の対処法を模索したり、幼い息子を育てながら家でもできる漫画という仕事も見つけられた。「人にも恵まれました。寛大な母もそうですが、夫も大らかな人です。私はすぐメールの返信を忘れるし、コミュニケーション能力も低い。なのに、彼らは“普通”を強要してきません。2人の息子の発育に遅れがあるとわかっても、私が希望した療育に対し、否定をすることもありませんでした」 自分はそういう人たちに恵まれてきたから、周りに迷惑をかけながらも生きてこられたが、2人の子供たちがどんな人生を歩むのか、不安になることもあるという。「漫画を描き始めてから、発達障害の当事者の話を聞く機会が増えました。居場所のなさに悩み、投薬治療をしながら社会生活を続けている人も少なくありません。うつや統合失調症を併発する人も多く、周囲の環境が大切だと感じています。私は幸いにも、いまは助けてと言える相手と専門家に恵まれました。できていないことも多いですが、自分が感じてきたことや経験を育児にも生かし、息子たちのいいところを伸ばしたいと思っています」 たとえば、「普通は〇〇だ」とか、「~すべき」といった言葉をなるべく使わないように気をつけ、子供たちの考えを認めるようにしていきたいという。【プロフィール】漫画家・モンズースーさん/漫画家で2児の母。自分はADHD、長男・次男は発達障害グレーゾーン。3月30日に新刊『家族から放置されて発達障害に気づかないまま大人になりました』(KADOKAWA)が発売予定。※女性セブン2023年3月30日・4月6日号
「脳の機能の特性にはさまざまあり、注意欠如・多動症(ADHD)や自閉スペクトラム症(ASD)、学習障害(LD)などが挙げられます。これらを総称して“発達障害(神経発達症)”といいます。
発達障害の人は、人の気持ちを想像する眼窩前頭皮質、感情表現を担う大脳辺縁系、行動を司る前頭葉、共感や自己意識に関係する島皮質の働きが弱い傾向にあります」
これらはコミュニケーションに関わる部分であり、本人と周囲の人の理解や適切な対応も必要となってくる。自身がADHDだという漫画家・モンズースーさんに、発達障害の人がどう見られ、どう扱われ、どんな思いを抱いてきたのか、語ってもらった。
結婚して3年目に長男を授かったというモンズースーさん。息子の1才半健診の際、保健師から、
「発達が遅れている」
と指摘された。それはどういうことか──。調べているうちに、「発達障害」という言葉を知った。
「発達障害について調べてみると、空気が読めない、集中力が続かない、人の顔が覚えられない、気が散りやすいなどの特徴が書いてありました。そのときに“これは私のことだ”と思い至ったのです」(モンズースーさん・以下同)
そして、精神科を受診。20代後半にして、自分がADHDだったと知った。
「これまで私は、自分にずっと違和感を抱えていました。不器用で何をするにも人より遅い。得意な図工もアイディアがよくても最後まで集中して仕上げられない。激しいかんしゃくを起こすことも多かったし、人の目を見て話せないこともありました。忘れものも多く、ランドセルを忘れて帰ったこともありました」
そんな自分を大らかに見守ってくれた母親のおかげで、子供の頃はまだ受け入れられてきた。しかし、成長するにつれて問題が……。
「特につらかったのは中学や高校時代。女子は集団行動が基本で、ちょっとした失言で仲間外れにされます。私は、他人や流行への興味が薄いからうまく立ち回れず、行動を否定されてばかり。高校では授業についていけず、ノートをとることすら難しいこともありました」
専門学校卒業後は、倉庫内の仕分け、居酒屋のホール担当、リゾートバイト、介護、製造などの仕事をした。
「働くのは好きなのですが、飽きやすく、それで辞めたことも。
なんで私はほかの人のようにできないんだろう、人に嫌な思いをさせてしまうんだろうと悩みました。大人になると空気も多少は読めるようになり、何が悪かったのかはわからなくても、違和感は察知できるんです。
ちょっとした言動で、変な目で見られたり、否定されることもあり、とにかく毎日とても疲れていました」
人に気持ちを伝えることが苦手で、相談もできなかった。
「診断されたときは、腑に落ちたところもあります。投薬治療の選択肢もあるとわかり気が楽になりましたし、予防できることもあると知ると、安心できました」
ADHDでよかったこともあるという。それは、次々と新しいことに挑戦できる点だ。これは多動傾向といわれるが、おかげで、発達障害の対処法を模索したり、幼い息子を育てながら家でもできる漫画という仕事も見つけられた。
「人にも恵まれました。寛大な母もそうですが、夫も大らかな人です。私はすぐメールの返信を忘れるし、コミュニケーション能力も低い。なのに、彼らは“普通”を強要してきません。2人の息子の発育に遅れがあるとわかっても、私が希望した療育に対し、否定をすることもありませんでした」
自分はそういう人たちに恵まれてきたから、周りに迷惑をかけながらも生きてこられたが、2人の子供たちがどんな人生を歩むのか、不安になることもあるという。
「漫画を描き始めてから、発達障害の当事者の話を聞く機会が増えました。居場所のなさに悩み、投薬治療をしながら社会生活を続けている人も少なくありません。うつや統合失調症を併発する人も多く、周囲の環境が大切だと感じています。私は幸いにも、いまは助けてと言える相手と専門家に恵まれました。できていないことも多いですが、自分が感じてきたことや経験を育児にも生かし、息子たちのいいところを伸ばしたいと思っています」
たとえば、「普通は〇〇だ」とか、「~すべき」といった言葉をなるべく使わないように気をつけ、子供たちの考えを認めるようにしていきたいという。
【プロフィール】漫画家・モンズースーさん/漫画家で2児の母。自分はADHD、長男・次男は発達障害グレーゾーン。3月30日に新刊『家族から放置されて発達障害に気づかないまま大人になりました』(KADOKAWA)が発売予定。
※女性セブン2023年3月30日・4月6日号

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