グループLINEで「動画」を共有していた「ロリコン教師」たち…明るみになってきた「学校現場での性被害」の実態

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福井県の杉本達治知事、佐賀県有田町の松尾佳昭町長、沖縄県南城市の古謝景春市長が、セクハラ問題で相次いで辞任した2025年末。圧倒的な立場の差による卑劣な性加害に弁明の余地はないが、教育現場における性加害問題も深刻さを増す。加害者が教師・被害者が生徒、という絶対的立場を悪用した被害。“ロリコン教師”というおぞましい連中がグループLINEで、校内で撮影していた動画を共有し、芋蔓式に逮捕されるという事件も発覚した。子どもを安心して通わせることができる学校は今、もはや安全地帯ではなくなったのか。
取材・文=渡邉寧久
四半世紀にわたり、子どもたちへの性暴力問題に向き合 ってきた認定NPO法人エンパワメントかながわ理事長でNPO法人デートDV防止全国ネットワーク代表理事の阿部真紀さん(1961年生まれ)は、教育者による性的犯罪について「昔からあったものが明るみになったと私は思っています」と冷静に見つめる。
「DVもセクハラも虐待もストーカーもリベンジポルノも私の子どもの頃にはなかった」という性加害の実態は不幸にも拡大の一途で、学校現場だけに収まらず、社会全体を巣くうほどの病原菌と化している。
教師による生徒への性加害に加え、最近では、男性生徒の依頼を受け女子更衣室を盗撮したという女性生徒による事件、バトントワリングの男性指導者が教え子の高校生の男性に性的暴行を加えていたという事件、小学校6年生女生徒の裸の写真を保存していた疑いで中学校教員が逮捕された事件などが発覚している。
運動部に所属する中高生はアスリート盗撮の被害に遭い続けている。卒業アルバムの顔写真を使った性的ディープフェイクの被害も深刻だ。性加害のニュースが報じられない日はないほど、モラルのたがが外れた加害者が暴走し続けている現代。
そこで阿部さんが着目し、力を入れているのは予防教育だ。
「正しい知識を知らないと加害者になることもある。性暴力に遭っても、被害の声を上げられない」と危惧する阿部さんは「大人が守ってあげなきゃいけないんだという上から目線ではなく、子どもに備わっている守りの力を引き出す、そのためには知識が必要です」と力説する。
阿部さんは1999年、アメリカで開発された教育プログラムCAP(キャップ:Child Assault Prevention)のスペシャリストの資格を取得し、2004年にエンパワメントかながわを設立。デートDV予防プログラムの開発と普及に携わってきた。子どもたちを性加害者にしない、性被害に遭わせないために立ちはだかる、性教育の守護神だ。
「今の日本に性教育はないんじゃないですか」と疑問を呈す。「性教育を学校の先生はしてはいけない、という歯止め規定があるんです。精子と卵子が受精すると子どもが生まれることは教えられるけど、セックスをすると受精することは誰も教えてくれないんです」といびつな現実に言及する。
学校教育に代わる形で、自治体や教育委員会等のオファーを受けて教育現場に出向き、CAPのプログラムを伝えるのが、阿部さんの役目だ。
「子どもは子どもだけで、1時間のプログラムを受けます。大人には大人用に説明し、教職員向けにも説明しますが、授業参観のスタイルは取りません」と阿部さん。子どもたちを委縮させない配慮が施されている。
「まきちゃんと呼んでね」と阿部さんはソフトに語りかけ、子どもたちとの垣根を取り除く。クラス単位で約60分の参加型のワークショップ。演劇などの表現形態を通して、子どもたちに「自分ならどうするだろう」ということを考えてもらう。
子どもたちは安心して日々を過ごせて、自信をもって生きることができて、何ごとも自分で決定できる自由があるということを、分かりやすく伝達する。暴力、性暴力を受けるということは、子どもたちの安心、自信、自由が奪われることに他ならない。子どもたちは、キスを迫られても嫌だと言えること、しつこく付きまとわられたら安全な場所に逃げられること、自分一人で抱え込まず誰かに相談できることを受け止める。
CAPのプログラムが終わった後、こんな子どもに出会ってきた。
「小学校1年の女の子が寄って来て『あのね、まきちゃん』と話してくれたんです。目の前で硬くなりながら。よく覚えています。『先生がいやなことをする』壁に押し付けて、性器を押し付けていたんです。その親は裁判を起こしました。別の小学校では、教材室に入れられて体を触られたとか、ある学校では、エロい先生がいる、教卓の後ろでお尻を触られる、と。CAPを受けて話すことができた子どもです。法律が整備されてきているおかげで、学校現場のいろんなことが明るみに出るようになったと思います」
さらに阿部さんは、子どもたち、保護者、教職員に分かりやすく性教育を伝えるため、著書『いちばんやさしい性教育 恋愛する前に知っておきたい心と体のすべて』(講談社刊)を2025年に上梓した。
性に関するデータが分かりやすく解説されているが、その中に興味深いデータを見つけた。
「デートしているときにいきなり手を握ってもいいと思う中高生」というアンケートに、「80%」の人が「イエス」と答えている点。今の中高生でさえも、まだ古いしがらみを当たり前だと思っている、思い込んでいる証左に映る。
阿部さんはこう記している。
「手をにぎったり、キスをしたり、体にさわること。これらの性的な行為ですから、本来はすべての行為に同意をとることが必要です」
同性間であっても、異性間であっても、同意がない性行為は暴力につながる。友達にカラオケに誘われ、気乗りしないけど嫌々行ったりするケースがあるが、体への接触は、少しでも嫌な感情があったらきっぱりと断る。きのうは許したけど、きょうはそんな気分じゃなければ、そう伝える。そのあたりの線引きをきちんとしないと、両者の間に対等ではない関係、優劣のある関係が生まれ、それがやがてデートDVの土壌になったりする。
今世紀になり登場し、この20年間で普及した言葉に、デートDVというものがある。DV、ドメスティック・バイオレンスはそれまで夫婦間のものととらえられていたが、恋人間にもあることを周知させるために、一般社団法人アウェアの山口のり子さんが自著で明らかにした日本語造語だ。
「2003年10月に、初めて聞いた言葉です。なにそれ?っていう感じ。恋人間に暴力があるって、これを子どもたちに伝えたい」
そう考えた阿部さんは、すぐさま啓発のための行動に移した。
「子どもたちに、恋人同士でも暴力があるんだよ、ということを啓発して予防することができたら、いずれDVも虐待もなくなると思ったんです。まずは高校生向けにデートDVのプログラムを、1,2年かけて開発しました。高校生向けにワークショップをした際に、コンパスで手に穴をあけている女の子がいた。理由を聞くと、中学の時に付き合っていたけど束縛がキツイから別れた彼の名前を彫って、墨汁を入れてタトゥーにするためだったんです。 中学生の時からデートDVは始まっているんだなと思いましたね」
以来、阿部さんは開発のウィングを広げ、現在では高校生向けの他、中学生向け、大学生向け、障がいのある子ども向けのプログラムがそろえられている。
思春期を迎え、初恋に心躍らせることの多い10代。当初はラブラブの2人も、けんかをしたり意見がすれ違ったりすることもある。そこまでなら、昔からあったことだが、今ではLINEの既読がつかない→どこにいた?→誰といた? と、簡単に連絡がつく時代になったゆえの弊害で、愛情が容易に束縛に変換したりするという。
「何で返信してくれないの、心配していたんだよ、と言われると、すぐに返信しなかった自分が悪かった、と思ってしまう。これからは事前に報告してほしい、GPSをつけよう、と提案されると受け入れてしまう。そういう束縛から暴力が始まります。普段優しい相手がちょっと怒って、段々怒って、言うことを聞けばまた優しい恋人に戻ってくれる。だから悪いのは私、となるわけです」と阿部さんはため息をつく。
解決のための名案については
「すごく難しい問題だと思います」と受け止め「デートDVの、別れられない構造をまずは理解し、被害者の心理に寄り添い続けることを心掛けています。あなたは決して悪くない、そんなことをされていいはずがない、どんな理由があっても、どんな好きな人からであっても殴られていいわけじゃない、対等な関係のはずだと伝え続けます」
2015年4月、川崎市川崎区の自宅で、行方不明だった女性の遺体が発見された。いわゆる“川崎ストーカー殺人事件”。
メディアが「ストーカー殺人」と伝えることに、阿部さんは違和感を覚えたという。
「あれは間違いなく、デートDV殺人事件です。法律にデートDVの名前がないので、ストーカー事件として扱われていると考えられます。児童虐待防止法は2000年にできました。DV(配偶者暴力)防止法は2001年にできました。法律ができたことで、相談件数もあがり、被害実態も明るみに出ました。 デートDVという言葉だけはまだ法律に乗ってきていないので、まだまだ被害が周知できていない」
と話したところで、一瞬、間を置いた阿部さんは決意の表情でこう続けた
「デートDVという言葉を法律に含めることが、今後の私の課題です」
後編記事<じつは「壁ドン」も「スカートめくり」も立派な性暴力……専門家が警鐘を鳴らす、誰もが陥る「加害者」への意外な入り口>へ続く。
【阿部真紀 プロフィール】
認定NPO法人エンパワメントかながわ理事長 NPO法人デートDV防止全国ネットワーク代表理事。1961年神奈川生まれ。1999年よりCAP(米国発子どものための暴力防止プログラム)スペシャリスト。2004年、エンパワメントかながわを設立し、デートDV予防プログラムの開発の普及に携わる。学校教育現場などへのプログラム提供は、2025年夏で1万回を超えた。
【つづきを読む】じつは「壁ドン」も「スカートめくり」も立派な性暴力……専門家が警鐘を鳴らす、誰もが陥る「加害者」への意外な入り口

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