川崎ストーカー事件検証、女性が9回相談も署長や県警本部に報告せず…「危険性・切迫性を過小評価」

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ストーカー被害を訴えていた川崎市川崎区の岡崎彩咲陽(あさひ)さん(20)が元交際相手に殺害された事件で、神奈川県警は4日、対応を検証した報告書を公表した。
被害相談を受けた時も岡崎さんの失踪後も、「危険性・切迫性を過小評価していた」と指摘。担当する川崎臨港署と県警本部の双方で連携不足などの機能不全も起きた結果、不適切な対応で安全確保の機会を逸し、捜査も遅れたと総括した。警察庁と県警は和田薫本部長ら、退職者を含む関係者43人を処分した。
和田本部長は4日の記者会見で、「相談を受けていた女性が殺害されるという重大な結果を重く受け止めている。最高責任者として責任を痛感している。おわび申し上げる」などと述べた。3日に岡崎さんの父・鉄也さん(51)と面会し、謝罪したという。
処分を受けた43人のうち、懲戒処分は5人。署の生活安全課長(当時)は減給100分の10(1か月)、署長ら4人は戒告だった。和田本部長は警察庁から口頭厳重注意を受けた。
岡崎さんは昨年12月20日、行方不明となった。県警が白井秀征(ひでゆき)被告(28)(殺人罪などで起訴)の自宅床下から遺体を見つけたのは今年4月だった。
本部の警務部長をトップとする検証チームがまとめた報告書によると、岡崎さんは昨年12月9~20日に9回、署に電話をした。しかし、署員は「(白井被告に)家の周りをうろつかれた」といった相談内容を署長やストーカー事案を担当する本部の人身安全対策課に報告せず、一部は記録に残していなかった。白井被告への事情聴取もしなかった。検証チームはこうした対応を「不適切」と断定した。
岡崎さんが行方不明になった後、白井被告がつきまとい行為を認めるなど、岡崎さんの身の危険を疑わせる事実や情報が複数あり、岡崎さんの親族も強制捜査を繰り返し求めた。それでも、署は危険性や切迫性の評価を見直さなかった。本部でも被害者保護などに携わる生活安全部門と、犯罪捜査を担う刑事部門の情報共有が不十分だった。
県警は再発防止策として、両部門を統括する司令塔ポストを設け、捜査1課に人身安全事案専従の係を作る。

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