「くも膜下出血の前兆となる初期症状」はご存知ですか?医師が徹底解説!

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Medical DOC監修医がくも膜下出血の初期症状・セルフチェック法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
※この記事はMedical DOCにて『「くも膜下出血」を発症すると首にどんな「痛み」を感じるの?初期症状も医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:佐々木 弘光(医師)
医師、医学博士。香川大学医学部卒業。奈良県立医科大学脳神経外科に所属し、臨床と研究業務に従事している。現在、市立東大阪医療センターに勤務。脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、脳卒中学会専門医、の資格を有する。
くも膜下出血の原因はいくつかありますが、そのほとんどが脳動脈瘤とよばれる脳の中の血管にできた「こぶ」によるものです。この脳動脈瘤が、ある日突然破裂し、脳内の「くも膜下腔」と呼ばれるスペースに出血するのが、このくも膜下出血という病気です。出血によって脳の中の圧力が高まり、強烈な頭痛を中心として、嘔吐や失神・意識障害などの様々な症状を呈する場合もあります。発症すると、そのうち約1/3の人が即死、約1/3の人が何らかの後遺症を残して重症化する、とされるほど、この現代においても致死率・後遺症率ともに高い疾患です。さらに、後遺症なく歩いて帰ることのできる人は全体の約1/3と言われていますが、そもそも発症すると1か月以上の長期入院を余儀なくされ、破裂後に続く様々な合併症によって集中治療を要し、複雑な経過を辿ります。原因となる脳動脈瘤は破裂するまで症状を出しにくく、気づかれないというのも非常に厄介です。脳ドックで頭のMRIを撮ったら、たまたま脳動脈瘤が見つかったということも多くあります。本記事ではくも膜下出血の前兆である首の痛みについて解説していきます。
ここまで、くも膜下出血の症状は「突然の」「いままで経験したことのないような」強い頭痛であると表現してきました。しかし、ときどき動脈瘤が破裂しかかっている状態、またはほんの少しだけ出血した状態、の場合にみられる前兆症状(切迫破裂や警告頭痛といいます)もあるのです。具体的には、本格的な破裂が起きる数日前からの突然の軽~中等度の首後ろの頭痛や肩凝りといった症状で、吐き気やめまいを伴う場合もあります。また、破裂の直前に動脈瘤が急激に大きくなる場合があり、動脈瘤の位置によっては急増大したことで周辺にある神経を押さえつけて、急に片方の瞼が下がってきたり、視力が低下したり、物が二重に見えて目の動きがおかしくなったり、といった症状を認める場合があります。これらの症状は動脈瘤が切迫破裂の状態にあるときに見られます。前兆症状が見られた場合、数日~数週以内に動脈瘤の大きな破裂が生じてしまう可能性があるため、躊躇せず早期に脳神経外科を受診するようにしましょう。これらの状態にある場合は極めて危険なので、血圧を激しく上下させてしまうようなことや喫煙などの血管に影響を与えてしまうようなことは避けるようにしましょう。
ここまではくも膜下出血の前兆となる症状を紹介してきました。以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
今まで経験したことのないような突然の強い頭痛(例えるなら、後ろからバットで殴られたような、雷が落ちてきたような頭痛)は、くも膜下出血の可能性があります。直ちに脳神経外科を受診し、頭部CTや頭部MRIなどで精査が必要になります。同時に嘔吐や意識消失を伴うこともあり、救急車による搬送が必要となる場合もあります。
・中程度の頭痛症状がある場合首後ろを中心とした頭痛や肩凝りといった症状が出現し、強弱の波が少なく、寝ても覚めても強い頭痛が続く、時に吐き気やめまいを伴うような症状の場合、警告頭痛の可能性があります。動脈瘤が大きく破裂する前兆の可能性があるため、脳神経外科を早期に受診しましょう。またもともと頭痛もちの人でも、少しでもいつもと違う突然の頭痛、と感じる場合には注意が必要です。・物が二重に見える、瞼が下がる症状がある場合破裂の直前に、急激に増大した脳動脈瘤が周辺の神経を圧迫することで、急に片方の瞼が下がってきたり、視力が低下したり、物が二重に見えてきたりといった症状を認める場合もあります。これらも頭痛と合わせて破裂する前の症状のことがありますので注意が必要です。
ここまで首に現れるくも膜下出血の前兆などを紹介しました。ここでは「くも膜下出血の前兆・首」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
佐々木 弘光医師
くも膜下出血の頭痛は首の後方に生じやすいため、首の凝りや肩凝りのような頭痛として自覚される場合もあります。ただ首や肩凝りは筋肉や皮膚などの表層で起きている現象なので、押したら痛い、ひねったら痛い、といった特徴を伴うことがあります。単純な首の傷みや肩凝りであれば対症療法や整形外科での治療も考えられます。一方で、くも膜下出血の場合はそれらに関係なく、突然、そして頭の中で痛いと感じるような頭痛症状を自覚します。もちろん判断が難しくて不安な場合は、まずは頭痛外来や脳神経外科を受診してみましょう。

佐々木 弘光医師
軽い症状の場合は首の後ろや肩凝りなどと似た頭痛として破裂の数日前などに自覚される場合もあります。その他、突然瞼が下がる、視力が落ちた、ものが二重に見える、といった多彩な症状を呈する場合もあります。また、他の脳神経疾患を発症している可能性もありますので、いずれにせよ早期の脳神経外科の受診をお勧めします。

ここまでくも膜下出血の前兆症状についてまとめてきました。「頭痛」と一言でいっても、自分での判断は難しいと思います。実際、世の中の多くは一次性頭痛といって、画像検査で頭の中に明らかな異常のない頭痛です。しかし本当に危険な頭痛というのはある日突然、強烈な形で襲ってきます。またもともと頭痛もちの人であっても、少しでも「いつもと違うな」、と感じる場合はすぐに受診することをお勧めします。そして予防のためには、脳ドックなどの検査を受けて、自分の脳の健康状態とともに、そういった血管の異常の有無を確認しておくことが大切かもしれません。
「くも膜下出血の前兆」と関連する病気は5個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
脳動脈解離
脳動静脈奇形
硬膜動静脈瘻
出血の前兆症状として頭痛や嘔気などの症状が出現する可能性のある病気はたくさんあり、代表的な病気を列挙します。
「くも膜下出血」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
突然のとても強い頭痛
首や肩凝りのような頭痛
失神、意識障害
手足の麻痺
急に瞼が下がる、物が二重に見える
突然これらの症状が出現した場合には、すぐに救急車を呼んで病院を受診するようにしてください。
参考文献
頭痛の診療ガイドライン2021
脳卒中のガイドライン2021(改訂2023)

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