不特定多数との性行為や過剰な自慰行為などを、日常に支障を来してもやめられない状態、「セックス依存症」(広義には性依存症)。性病や予期せぬ妊娠のリスクはもちろんのこと、仕事や人間関係にまで影響を及ぼすこともある。
【映像】“風俗女性の評価”が書かれたノート(イメージ図)
夫の過度な風俗通いに悩む好美さん(仮名・40代)。発覚したのは3カ月ほど前、引き出しから出てきた手帳を見たことがきっかけだった。
「風俗の女性の名前とバストのカップサイズ、その方との営みが『◯』『△』『×』、一番よくて『◎』『はなまる』もあった」
1日2回のペースの時もあり、多い時は月に10回近く。そして、その詳細なメモが10年分にわたり出てきたという。
「子どもを生んだばかりで、ものすごくお金に苦しい時期だった。もう愕然としたのと、怒りと、両方」
夫は借金をしてでも風俗通いを辞められず、既に依存ともいえる状態だという。後日、本人に詰め寄ったが未だ改善は見られない。
同じく夫の過度な「風俗通い」に悩む、3児の母の山田さん(仮名・30代)。夫に複数回注意するもやめず、結婚10年目に離婚を検討中だという。「独身の時に風俗に行っていたのは聞いていて、“やめよう”となって私と付き合った。結婚して3年ぐらいでバレ、昨年末に5回目がバレ。“今回こそやめて、次行ってしまったら離婚しよう”という話も毎回しているが、やめてくれない」と話す。
店の名刺や、児童手当まで使われたことが通帳から発覚したほか、USBやスマホから写真や動画も見つかった。「それを目の当たりにして、本当にやめてほしいと思っている。本人は毎回『やめたいけど、お金が手に入ったら行っちゃう』と言っている」という。
1年ほど前、ネットで調べた性依存症の症状に当てはまったため、病院へ。「病院では『ただ意志思が弱いだけ』『歩いている女性を襲いたくなるほどでないと依存ではない』と言われてしまった。1年経った最近、それが当てはまっているんじゃないかと」。
新たに病院を探しているものの、「夫婦2人で一緒に行ける先生がまだ見つかっていない」状況。では、夫との関係は今後どう考えているのか。「難しいと思うが、良い父親ではあるので、できればこのまま家族仲良く過ごしていきたい。動画も見てしまったので、次に発覚した時は離婚も検討している」と複雑な胸中を明かした。
不特定多数との性行為や過度な自慰行為、風俗通いなどがやめられないことについて、WHO(世界保健機関)は2018年、「強迫的性行動症」という精神疾患であると認定した。
性依存症については、大船心療内科の井出広幸院長は、そうした行動のほか、盗撮やのぞき、露出、痴漢などを犯してしまうことも。ただ、性犯罪者=性依存症者ではなく、「犯罪の正当化に用いてはいけない」と話す。
診断基準は、「日常生活がうまくいかない」「人生が破綻するのにやめられないかどうか」「行動に至る動機。生きづらさ、モヤモヤを感じないために行動しているか」などだという。
「まずは過剰だということ。2つ目は、コントロールが効かない。このままではやばいと思っても、全然やめられない。3つ目が、人生が壊れていく。家庭や仕事、お金、健康、精神面、これらのコントロールが効かない。3つが揃うと依存だ」「依存というのは、自分の生きづらさやモヤモヤをごまかすというか、代償行為として行われるもの。セックスに限らずギャンブルだったり、時に仕事、買い物、過食だったりする。いろんな形で同時に持っていたり、変わったりする」
では、治療法はあるのか。井出氏は「治っていく例も実際に多数ある。ただ、本人に“これは問題だ”“なんとかしないと”という決意がないと無理。奥様がどんなに願っても、本人にその気がないと手のつけようがない。期間は1、2週間というものではなく、最初の1年はグズグズだったり、助走が長く続く印象はある」と話す。
一方で、「誰しもがセックスしたいと思うことはあるが、それ自体は病気ではない」と指摘。「二度とセックスしない、二度と自慰行為をしないという“禁欲”は目標にはならない。健全な満たされた関係で、自分や他者を傷つけるような行為に走らない、ということだ。山田さんの場合は、ご夫婦両方を見ることがすごく重要。壊れた関係性をどう立て直していくのかというのも、重要なテーマになってくる」と述べた。(『ABEMA Prime』より)