2審判決は逆転の『全面無罪』。逮捕・起訴され、傷害致死などの罪に問われていた35歳の男性が、弁護士らとともに記者会見を行っています。男性は、「判決主文は無罪だが、ぼくは無実です。」と述べ、「独房で過ごした5年半、くじけずに戦い続けてよかったと実感しています」と支援者や弁護士らに感謝の言葉を述べました。今西貴大被告(35)は7年前、当時の自宅で養子の希愛ちゃん(当時2)の頭に何らかの暴行を加え、死亡させたなどとして逮捕・起訴されました。

裁判では希愛ちゃんの心肺停止が「外因」か「内因」かという、医学的な論争が展開されました。検察側は、強い外力(暴行)によって、呼吸機能をつかさどる脳幹が損傷し、心肺停止に至ったとする「外因」説を展開しました。一方で弁護側は、まず重い心筋炎によって心肺停止が起き、低酸素状態になった→低酸素状態によって脆くなっていた血管に、搬送先での心拍再開によって再び一気に血液が流れた→血管が破れ出血が生じた(再灌流障害)という「内因」説を主張しました。頭蓋内の出血より、心肺停止のほうが先だったという主張です。今西被告は一貫して無実を訴え、弁護側も、病気によって心肺停止や頭がい骨内部の出血が起きた可能性を主張しましたが、1審の大阪地裁は「心肺停止の原因は頭部の外傷による脳の損傷で、被告が強い外力を加えたとしか考えられない」として、懲役12年の有罪判決を言い渡し、今西被告側が控訴していました。そして11月28日、大阪高裁は、今西被告に全面無罪判決を言い渡しました。大阪高裁判決は、1審での検察側請求の医師の証言の信用性を否定したわけではないものの、「各証言が状況証拠として持つ証明力の範囲・限度について、1審判決は十分な検討を尽くしたとは言えない」と批判しました。具体的には、被害女児の頭部の表面に外傷の痕がない点を重視したほか、検察側が重要な根拠とした「呼吸機能をつかさどる脳幹の損傷」自体が完全に立証されたとはいえないと判断。仮にそうした損傷があったとしても、「被害児の頭部に強度の外力が加わったと推認されるわけではなく、1審判決には論理の飛躍がある」と指摘。傷害致死罪の成立は認めた部分を破棄し、今西被告に全面無罪を言い渡しました。無罪を言い渡された際、ハンカチで目元をおさえ涙ぐんだ今西被告。裁判所の前に集まった支援者からは、逆転無罪の旗が出されると歓声があがり、中には涙する人の姿もありました。会見した弁護人は、「本来、無罪推定の被告人を5年半にわたって拘束するのは望ましくない。人質司法の問題、柔軟に身体拘束からの解放を考えるべき」と述べました。判決を受けて、大阪高検は「判決内容を精査した上で適切に対応したい」とコメントしています。