新年度となり、進学や就職で新しい環境に身を置き1カ月。いつも以上に疲れたり眠れなくなったりして、気付かぬうちにストレスが溜まっているというのはよくあること。
4月のうちは気を張っていていたものの、ゴールデンウィーク(GW)の連休によってその集中力がプツリと途切れ、気分が優れず、やる気も出なくなってしまう――そう、「五月病」だ。
GW明けの時期に症状が出る人がもっとも多いと言われる五月病だが、医学用語にあるような正式な病名ではなく、前述した症状の俗称となっている。
2023年に積水ハウスが発表した「5月病に関する調査」では、2022年の五月病経験者は35.0%にも及び、原因の1位としては「出社のストレス」が42.3%を占めた。さらに新入社員のみならず、30代社員で45.0%、入社3-5年目社員で61.0%が五月病を経験。この調査データからもわかるように、五月病は多くの社会人を苦しめて来た“病”なのだ。
無自覚のうちに発症していることもある五月病。かかってしまうきっかけは、人によってさまざまではあるが、深刻化すると適応障害などになってしまうリスクもあるという。
まずは五月病経験者の一般人2人の体験談を紹介していきたい。
現在、都内でフリーターとして働く26歳女性は、数年前、IT系企業の営業部に新社会人として入社して1カ月後に、五月病に陥ってしまったそうだ。
「当時、GWの連休明けにものすごい虚無感に襲われたんです。営業職だから社内外問わずたくさんの人にあいさつする機会があって、たぶん4月だけで100人以上の人と名刺交換したんですよね。私は人見知りというほどではないんですが、思っていた以上に初対面のシチュエーションに緊張するタイプだったようで、毎日毎日気疲れがすごかったんですよ。それでぐっすり睡眠できていればよかったんでしょうけど、身体は疲労を感じているはずなのに、なかなか寝付けない日が続いて、睡眠時間が3~4時間しかないっていう日が多かったんです」
「それと、私は花粉症がひどくて、3月・4月はもちろんですが、5月に入っても花粉に苦しんでいるタイプで、鼻水がひどくて寝つきが悪かったっていうのもあったと思います。花粉症きっかけで倦怠感もあって体調不良になることもよくあって、今振り返るとメンタルと身体、ダブルでヤバかったですね。それでもなんとか4月を乗り切ってGWに突入して、久しぶりに地元の友達とか大学時代の友達と遊びまくっていたから、それで気が緩みすぎてしまったのかもしれません。
……連休明け、目は覚めてるんですけど、なかなかベッドから起き上がれなくてなっていました。さすがに遅刻はまずいと思って、家を出る10分前になんとかベッドから抜け出して、ノーメイクで髪ボサボサのまま家を出るっていう日が何日も続きました。それでも絶対に遅刻はしたくないって思ってたんですけど、5月後半ごろには次第に遅刻もしちゃうようになっていって……。けっきょく、せっかく就活がんばって入った第一志望の会社だったんですけど、半年ちょっとで退職してしまって、今に至るっていう感じですね(苦笑)」
続いて、通信系企業の経理部に所属しているという25歳男性の体験談。新入社員時代というわけではなく、当時入社3年目だったそうだが、新年度に入ってから違和感を抱いていたという。
「年度末の3月の経理部は、やっぱり繁忙期なので、とにかく精算・精算・精算の忙しい毎日。部内の人間全員で目まぐるしく動いていました。ただ、上司や先輩に恵まれていて、人間関係は良好だったので、チーム一丸となってがんばるぞっていう空気感が心地よくて、その忙しさをちょっと楽しんでいる自分もいましたね。いわゆるワーカーズハイになっていたんだと思います。部内みんなの連携で無事に3月を乗り切って、達成感みたいなものはありました」
「それで新年度が始まると逆に暇で暇で、暇疲れするレベルに。その一方、3月いっぱいで、仲よくしていた先輩の退職と目をかけてくれていた上司の異動があって、さらに4月から新入社員も入って来て。……という感じで、社内で僕がかかわる頻度の高いメンツがガラッと変わった時期でもあったんです。仕事は暇なのに人間関係で気を遣う日々はなかなか慣れなくて、あまり自覚はなかったんですが、たぶんけっこうストレスが溜まっていたんだろうなって。
それでGWの連休明け、何となく身体のダルさと気持ちのモヤモヤがずっと続くようになったんです。一日中、頭痛に悩まされる日もありましたね。それもあって、とにかくモチベーションが沸かず、集中力も欠いていて、異様なぐらい仕事が全然手につかなくなっていきました。そんな僕の異変にさすがに周囲の同僚たちが気づいてくれて、6月からしばらく休職することに。でも、会社に行かずにリフレッシュしていたらわりとすぐに心身ともに快復したので、おかげさまで1ヶ月後には復帰できました。でも、あの5月のときを振り返ると、自分が自分じゃないみたいな感覚なんですよね」
後編記事「月曜日が来ないでほしい…日本人が五月病になってしまう『特殊な事情』とその『危険な前ぶれ』」では、産業医の武神健之氏にそんな五月病の原因と対策について伺っていく。
月曜日が来ないでほしい…日本人が五月病になってしまう「特殊な事情」とその「危険な前ぶれ」